VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重

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本編

第175話 マヨイは足を踏み入れる。

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⚫︎マヨイ

「で、できた……」

 作業を開始してから約5時間。僕はようやくククルのための揺り籠を作ることに成功したした。錬金術指南書に書かれた説明は分かりやすく纏められてはいたものの、魔力を注ぎ込み過ぎて人工魔石が砕けるなどのトラブルもあって時間が掛かってしまった。揺り籠はデフォルトだと直径3~10㎝の球体なのだけど、持ち運びを考慮してブレスレットにしてみた。錬金術指南書に書かれていた成形と圧縮の技法を使ったため削り滓はない。

「ククル、起きて。ククルの揺り籠が出来たよ」

ゆりかおみゃぁ?」

「これにククルが触れて中に入ろうと思えば入れるんだってさ。ククルのお部屋みたいなものかな?」

おへやにゃ!」

 元気よく返事をしたククルが揺り籠に触れると吸い込まれるように消えてしまった。揺り籠のページに書かれた説明通りなら、揺り籠の中はククルが過ごしやすい空間になっているはずだ。

「どうかな?」

ひろーいみゃぁ!』

「……それは良かった」

 僕の呟きに対してククルから返事が返ってきた。
 どうやら揺り籠の中と外でフレンドコールのように会話をすることも出来るようだ。

「それじゃエントランスの爺さんのところに……ってもうこんな時間か。ククル、また後でね」

あとでねーにゃぁ

 こうして僕は夕食の支度を手伝うために一度ログアウトした。


…………………………………


……………………………


………………………


 夕食を済ませた僕は再びログインしてアルテラの組合の片隅でカードを弄っているお爺さんの元へ向かった。

「こんばんは」

「その日の内に来るとはのぅ。揺り籠は……その腕輪じゃな?」

「そうだよ」

 そう言いながら首肯しゅこうするとお爺さんは懐から折り畳まれた1枚の紙を取り出した。

「克己の間に挑戦するための推薦状じゃ。これを其処そこの受付に見せれば案内して貰えるじゃろ」

「ありがとう」

「老人の道楽のようなものじゃから気にするではないわ」

 ここのところ簡単な相手ばかりでマンネリ気味だったからね。自分のコピーと戦える機会なんて早々あるものじゃない。NPCとなった自分がどんな風に戦うか今から楽しみだ。

「それじゃあ行ってくるね」

 そう言って僕は受付へと向かった。受付で克己の間について尋ねると、組合から認められた推薦人からの推薦状がなければ利用できない施設だと教えてくれた。

「その推薦人なのかは分からないんですけど、僕に克己の間について教えてくれたお爺さんから推薦状を渡されました」

「拝見させていただきます…………!?」

 僕がお爺さんから渡された推薦状を預けると、受付の人は未だにエントランスの片隅にいるお爺さんの方を見てから再び推薦状に目を落とした。

「しょ、少々お待ちください」

 そう言うなり受付の人は何やら慌てた様子で他の職員に話し掛けに行った。その様子はまるで想像もしていなかった事が起こってパニックを起こしているようにも見える。もしかしなくてもお爺さんって偉い人なのだろうか。

「お待たせしました。推薦状に瑕疵かしは見受けられませんでしたので克己の間までご案内いたします」

 そうして戻って来た受付の人に案内されて僕は受付の奥へと案内された。そうして案内されるのは地下のようだ。受付やエントランスのある場所からは伺うことの出来ない所にある地下へ続く階段を降りて行く。

「地下があったんですね」

「ええ、このアルテラの組合は克己の間と名付けられたワンフロアしかないダンジョンの上に建てられているんですよ」

「ダンジョンなんですか?」

「そうです。攻略難易度は特殊ランクに設定されています」

「特殊ランク?」

「難易度が挑戦者によって変動するタイプのダンジョンに設定されることが多いランクです。挑戦できる条件はそれぞれ異なりますね」

「克己の間の場合は推薦状だけなんですか?」

「推薦状以外にも実績などで許可が降りる場合もあります。同一ダンジョンを10回攻略することで推薦人になることが可能です」

 つまり、お爺さんは克己の間を10回以上クリアしているということだ。もしかしたらNPCの中では有名な人なのかもしれない。
 そうこうしている内に僕の目の前に鏡のように磨かれた青銅色ブロンズの扉が現れた。この先が克己の間だろうか。

「ここです。ご健闘をお祈りしております」

「ありがとうございます」

 僕は躊躇うことなく克己の間への扉を開けて足を踏み入れた──────その直後だった。

「攻撃威力調整+100%・形状変化・基本属性付与・魔力弾×60000」

 僕の視界は七色の光で埋め尽くされた。


───────────────
お読みいただきありがとうございます。

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