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本編
第148話 マヨイは説教する。
しおりを挟む⚫︎マヨイ
[Forest Khimaira armyを討伐した]
[守護獣の魔石を24個入手した]
[守護獣の獣翼を16個入手した]
[守護獣の蛇親を14個入手した]
[守護獣の硬皮を14個入手した]
[守護獣の心臓を1個入手した]
「おわったぁぁぁああ!」
暁やクレアからすれば格下の相手だったので2対5でも余裕をもって倒せたようだ。これで僕が周囲のキマイラを倒してなければどうなっていたのか気になるけど、おそらく少し手こずっても2人なら何とでもなっただろう。
「さて、アカトキ」
「な、なに?」
「正座」
「え」
「正座」
「な、なんで?」
「せ・い・ざ」
「っ」
戦闘そのものには問題はなかったけど、僕は"不忍の杜"に入ってからの暁の行動に対してそれなり以上に怒っていた。空気が悪くなるのは承知の上で僕は暁にこの場で説教することにした。
「僕が怒っているのは分かるよな?」
「う、うん……」
「なんで怒ってるかは分かるか?」
「…………わから、ない」
「まずは森に入ってすぐの戦闘のことだ」
まずはパーティプレイの否定。これは相手の強さを見誤った結果だけど、それは交戦を開始した時点ですぐに分かったことだ。織姫が突っ込んでからしばらくして助けを求めてきたけど、あれは状況判断が遅すぎた。
「そ、それは謝ったじゃん!?」
「あぁ。だから僕もそれに関してはついでだ。肝心なのは織姫に対して『邪魔』だと怒鳴ったことだ」
「っ……」
「織姫の今の位階はいくつだ?」
「え、あ、結構上がってる!69です」
「で、暁とクレアの位階は?」
「……100です」
ちなみに僕は117だ。格下過ぎる相手を倒しても経験値が入らないのか"蜂の巣"のボスを倒しても位階は上がらなかった。
「猿にしてもキマイラにしてもステータス的には織姫と同じくらいだったよな。しかも複数同時に襲ってくるんだから普通に考えて織姫は相当キツかったはずだ」
「……うん」
「で、織姫は足を引っ張りたくない一心で弱音も吐かずに上手く立ち回ってたぞ。そんな織姫にお前は"邪魔"だと怒鳴ったんだ」
「……織姫、ごめん」
「え、あ、いいって!先輩も私が足手まといだったのは──」
「織姫ちゃん。何で弱音を吐かなかったの?」
クレアがククルを撫でながら織姫に問いかけた。
その目は据わっていて明らかに怒っている様子だった。
「先輩に足手まといだって思われたくなかったから……だと思う」
「で、実際は?」
「……足手まといだった」
「それが分かったのはいつ?」
「最初の戦闘のあとすぐ、くらい……」
「途中からお兄さんは織姫ちゃんが1対1で猿さんと戦えるようにしてくれてたもんね。それに何も言わずに甘えてた時点で織姫ちゃんは仲間じゃなくてお客さんだったんだよ?」
「!?」
確かに織姫が"迷い家"に入ったことに浮かれていた様子だったのは事実だし、今回はパワーレベリングというほどではないけど僕は織姫に対して接待的な立ち回りをしていた。
「状況を分かってた私やお兄さんが途中で"撤退しよう"って言わなかったのも悪いし、お客さんして何も言わなかった織姫ちゃんも良くなかったよね」
「私は?」
「アカちゃんは論外」
「論外!?」
「そもそも最初に援護が要らないって言ったのも──」
クレアが怒ってるのは織姫にじゃなくてクレア自身と暁に対してのようだ。しかし、ククルに気を取られて援護が疎かになったのは良くなかったけど、それ以外は特に問題なかった気がする。
その後、しばらくクレアによる暁への説教は10分ほど続いた。
…………………………………
……………………………
………………………
「さて。空気を悪くしちゃった僕が言うのもあれだけど先に進もうか」
「すすもー!」
「は、はい!」
「クレアもそろそろ落ち着こうか。あとはログアウトしてから説教するから」
「えぇっ、まだするの!?」
「……分かりました。アカちゃん、しっかり反省してくださいね?」
「うぅ……わかったよぉ……」
「アカちゃん?」
「反省する、反省するからハイライトが消えた目で見ないで!」
説教中、何かと反論しようとして尽く論破された暁は少し同情するくらい落ち込んでいた。反論も何も今回は全面的に暁が悪いのでこの場にいる誰も庇い立てなんてしないのだけどね。
「先輩、ダンジョンってボスを倒して終わりなんじゃないんですか?」
「テコにあるダンジョンにクレアと入った時にはボス戦の後で素材収集が出来るエリアを見つけたんだよ。この森も更に先があるみたいだし何かあるんじゃないかな?」
「え、クレアと2人でですか!?」
「「そうだよ?」」
「デートじゃないですか!」
「え、デートだったんですか!?……あっ」
顔を真っ赤に染めてモジモジし始めるクレアからククルが逃げ出した。パタパタと飛んで暁の頭の上に着地したククルは暁を慰めるかのように頭をポンポンと叩いている。
「あんな薄暗くて羽虫が大量に出てくるダンジョンだよ?デートならもう少し楽しめるところに行くって……あとククル、これ以上アカトキが馬鹿になると困るから叩くのはやめなさい」
「ママはばかなのー?」
「「「そうだよ」」」
「ちょっ……ひどっ!?」
ククルのおかげでクレアや織姫も落ち着いたようだ。
こういうのもアニマルセラピーって言うんだろうか。
「さて、気を取り直して進もうか」
「はいっ」
───────────────
お読みいただきありがとうございます。
ちょっと雰囲気悪い回ですけど織姫をお客さん状態から仲間として扱うために必要なプロセスということで許してください。
応援ありがとうございます!
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