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本編
第141話 織姫は戦慄する。
しおりを挟む⚫︎マヨイ
「なんでお前が入れて俺らが入れねぇんだよ!おかしいだろ!」
エイトの門を通ろうとした僕らは見た感じ弱そうなプレイヤーに絡まれた。理由は彼らが言ったとおりなんだけど、少し情報収集すればエイトに入るためには条件があることくらい分かる。つまり彼らは自分で「僕らは攻略情報とか集める気はないけど進んでるプレイヤーに文句は言うぜ!」と主張しているようなものだ。恥ずかしくないのかな?
「エイトに入るためには条件があるんだ。テコの組合で自分たちがエイトに入るために足りてないものを確認するといいよ」
実力行使をして僕ら──正確には初めてエイトを訪れる織姫──がエイトに入れなくなるのは避けたいので穏便に済まそうと僕にしては珍しく親切心から助言することにした。それなのに……
「んなの知ったこっちゃねぇんだよ!」
「今からテコに戻れってか。ふざけんな!」
逆ギレされてしまった。解せぬ。
「おいおい、女性相手に喧嘩腰で怒鳴るなんて品がないぞ」
「あ゛ぁ!?」
「聞こえなかったのかい?女性相手に喧嘩腰で怒鳴るなんて品がないって言ったんだよ。そんなんだからモテないのさ」
ただでさえ面倒くさい状況を更に混乱させる発言が外野から発せられた。プレイヤー名はジャスティというらしい。素質は魔術士と使徒、覚醒に青の巫女とある。性別は非公開になっているけど覚醒の名称からして女性なんだろう。非公開にするなら覚醒も非公開にすべきじゃないかな……
「さぁ!ここは任せたまえ!」
「あ、はい」
なんか副音声で「困った女性を助けた私カッコいい!」的な言葉が聞こえるのだけど、織姫を早いところギルドホームに案内したかった僕はこの場を彼女に任せてエイトの街へと入って行った。
「兄さん、いいの?」
「何が?」
「兄さんって見知らぬ人に借りを作るの嫌いじゃなかった?」
「嫌いだよ。でも借りだと思わなければ借りじゃないんだよ」
「あー、なるほど?」
相手が「私に借りがあるだろう」とか恩義せがましく言ってきても「証文はありますか?」と返せばいい。そもそも今回の場合、彼女が横槍を入れる必要はなかったのだ。だから僕は彼女に借りを作ったとは思っていない。
「プレイヤーの人が多いですね」
「ですね!」
「イベントを早めに切り上げたプレイヤーが行動範囲を広げたからだろうね。エイトから先の街に着いたプレイヤーもいるみたいだよ」
街の近くに出現するモンスターの位階は何処も20に届かない程度らしい。おかげでどんどん先に進めるのだとか。僕としては先の街よりもエイト近郊にあるというダンジョンに興味がある。
⚫︎織姫
「なんていうか……すごい……」
「ひろいー!」
「あ、ククルちゃん!?待って!」
ちょっと一悶着はあったけど無事にエイトの街に入ることの出来た私は先輩たちに"迷い家"のギルドホームまで案内してもらった。先輩がテイムしているらしい子猫のククルはギルドホームに着くなり朱莉の腕から抜け出して走り出してしまった。かわいい。
「さて、中の案内はアカトキたちに任せていいかな?」
「兄さんは?」
「ちょっと組合に用事があるんだよ」
「ふーん」
「分かりました!」
そう言って先輩と別れた私は暁にギルドホームの中を案内してもらうことになった。朱莉は何やら先輩から頼まれ事をされているらしく加工施設にしばらく籠るのだとか。先輩って気を許した相手にしか頼み事をしないイメージがあるからちょっと羨ましい。
「織姫、そこの壁に穴があるの分かる?」
「うん」
「指を入れてみて」
「?」
言われるがまま壁の穴に指を差し込むと周囲の景色が一片した。
気がついたら見知らぬ部屋にいたのだ。
「え、なにこれ、ここどこ!?暁!?」
「ここは書庫だよ」
「きゃぁ!?……暁?」
さっきまで誰もいなかった背後から声を掛けられて思わず変な声が出てしまった。
「アカトキだよ。ここは地下の書庫。さっき穴はギルドホーム名物のワープ装置!まだどの穴がどの部屋に繋がってるのか分からないけど危険はたぶんないよ」
「たぶんなんだ……」
そんなものをいきなり使わせないでよ……
その後、私は地下から順に各部屋を回って一通りギルドホームを案内してもらった。
「え、まだ先輩もギルドホームになにがあるか分かってないの?」
「たぶんね。だから個室とかまだ決めてないんだ」
「そうなんだ。これからギルドメンバーって増やしてくの?」
「アイお姉ちゃんって兄さん以外の男が苦手だからギルメンは増えないんじゃないかなぁ……」
「え、そうなの?」
アイさんって男の人が苦手なんだ……
秘密結社みたいな集団のリーダーをしてるとか、宗教団体の教祖をしているとか、会長を怒らせた人は気がついたら学校からいなくなってるとか色々と噂されてる人だし見た目もクールビューティーって感じだから意外だ。
「男性恐怖症とは違うけどね……なんかモデルみたいに容姿の整った男性を見ると無性に殺意が湧くんだってさ。で、このゲームの男ってブサイクいないじゃん?」
「え、先輩に比べれば皆んなブサイクじゃない?」
「…………まー、それでいいよ。あと知らないと思うけどお姉ちゃんの前で"八百長"って単語だけは使わないでね」
「なんで?」
「使うと機嫌が急降下するよ?」
「中澤さんに質問してた時みたいな感じになるの?」
中澤さんがログアウトして逃げるのも仕方ないと思えるほど怖かった。単語1つでそんな状態になるって本当に何があったんだろう。
「あれよりも冷たくて重くて鋭利な感じになるよ」
「…………あれより?」
「あれより」
この時、私は何があってもアイさんだけは怒らせないと固く誓ったのでした。
───────────────
お読みいただきありがとうございます。
拓哉の運命ダイスロール
01~30 更生
31~60 転校
61~90 暴走
91~00 村八分
村八分ざまぁwwって展開も私は嫌いじゃないですけど更生して欲しいですね。更生することになっても筆者の都合で不幸な目には遭うんですけどね。
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