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本編

第145話 夏間藍香は電話する。

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⚫︎夏間藍香

 私がログアウトして真っ先に連絡を取ったのは現在暁たちの担任をしている生徒指導の館岡先生だ。独特な一人称が印象的な色々と融通が効く便だ。

『もしもし』

「館岡先生、ご無沙汰してます。夏間藍香です。お忙しいところすいません。先生にどうしても伝えておきたいことがあってご連絡させていただきました」

『何かな。君の言うとおり小生はとても忙しいのだが』

「殺人未遂よりはマシですけど、先生が受け持っている生徒数名がクラスメイトを脅迫している証拠を手に入れたんですよ」

『……ま、また小生を脅すのかね?』

「いいえ。先生の受け持ったクラスで立て続けに警察沙汰なんてことになれば色々と面倒ですよね。だから面倒事を片付ける手伝いをさせて貰えませんか?」

『……………何をさせるつもりだ』

「佐原拓哉と天城司、それと中澤沙耶香に鏑木かぶらぎ悠太ゆうたのご家庭に先生の方から鳥野クリスが起こした事件について大まかに説明してください。そして明日の登校日に登校しないよう伝えて貰うだけで大丈夫です』

「はぁ………彼らの家には小生から明日は登校しないよう連絡を入れるだけでいいんだな?」

 本当に物分かりのいい先生で助かるわ。電話先の館岡先生の諦念の声を聞きながら私は余計な労力を割かずに済んだことに安堵した。

『はい』

「分かった」

 そう短い了承の言葉を最後に館岡先生は電話を切った。これ以上は私と話し続けたくないという気持ちがよく分かる切り方だ。仕方ないこととはいえ少し申し訳ない気持ちになる。

「次は……はぁ……仕方ないわよね……」

 次に電話する相手は今の深森中の生徒会長、渡辺久美子くみこだ。なるべく頼りたくない相手ではあるのだけど、今回は時間も人手も足りていないので頼らざるを得ないのよね。

『会長、お久しぶりです。どうしました?』

「宵が傷つけられたわ。報復するから手を貸しなさい」

『会のメンバーはいつでも動かせます』

 この場合の"会"とは"真崎宵を愛でる会"という4年ほど前から当時の深森中関係者を中心にメンバーを増やし続けている宵のファンクラブのことだ。ちなみに宵はこの会の存在を知らない。今は私が会長をしているのだけど、そもそもの発端は電話先にいる宵の自称信奉者狂信者だ。宵と同じ高校に通いたいがために成績を学年の下の下から全国模試3桁学年1位まで伸ばしたとんでもない子である。

「なら深森中2-Aに在籍している佐原拓哉、天城司、中澤沙耶香、鏑木悠太の身辺調査をお願い。それと彼らを誘導して価値観を歪めた人物が近くにいると思うわ。そちらも余裕があれば調べてちょうだい」

『わかりました。……中澤沙耶香の姉は会のメンバーですね。身辺調査とは別に中澤沙耶香に関しては姉の方から教育させます』

 手元にメンバーのリストでもあるのかしらね。まさかメンバーの氏名と家族構成を暗記してるとはじゃないと思いたいけど……

「任せるわ」

『それと何があったのかだけ教えて貰えませんか?』

「宵を女扱いした上、男だと分かったら変態扱いしたのよ」

『殺しても?』

「今は身辺調査だけにしてちょうだい」

『……分かりました。しかし、男で可愛いから宵様は至高なんです。それが分からない蛆虫に生きる価値などありません』

「今回の一件は彼らを精神的に屈服させて暁や朱莉たちの便利な財布にする程度で済ませいと考えているわ。そのための身辺調査なのだから頼んだわよ」

 確かに宵のことを罵倒する蛆虫に生きる価値はないのだけど、彼女たちは毎度のようにやりすぎるのだ。そもそもメンバーが何人いるのかすら私は把握していない。彼女たちにとって宵は恋愛対象ではないのが私にとって唯一の救いね。

『お任せください』

「またね」

『はい、またのご連絡お待ちしております』

 彼女たちなら2~3日で調べ尽くしてくれるでしょう。
 その後も私は味方として有力な人物へと電話をかけ続けた。


…………………………………


……………………………


………………………


 夜10時を過ぎた頃。今日はもう寝ようと思っていたところに久美子から電話が掛かってきた。身辺調査が終わるには早すぎるし、何か問題でもあったのかしら。

「もしもし」

『夜分にすいません。会長から頼まれた身辺調査がひと段落したので明日の朝にでもご自宅に伺ってもよろしいでしょうか』

 身辺調査って普通もっと時間を掛けてするものだ。
 私の2~3日という見積もりだって相当に短かったはずなのに久美子は私が依頼してから7時間あまりで彼らの身辺調査をひと段落させたという。ここまで優秀だと頼もしさよりも怖さが先に来るわね。

「それは大丈夫よ。それより随分と早いじゃない」

『ええ、思った以上に彼らの情報管理が杜撰でして私もビックリしました』

「彼らへの報復については宵が自分でやりたがってるからしばらくは手出ししちゃダメよ?」

『え』

「まさかと思うけど宵のやりたいことを邪魔するつもりじゃないわよね?」

『す、すいません!良かれと思って佐原拓哉の父親が会社の資金を横領している証拠をネットにばら撒いてしまいました!』

 すぐにネットニュースを確認すると深森市の銀行員が7000万円を横領、その資金を元手にインサイダー取引で儲けていたというニュースを見つけることが出来た。横領したのは銀行員としか書かれていない。それでも間違いなくこれのことだろう。やってくれたわね……

「あのね、宵のことを思ってやってくれているのは分かるけど彼の意思を蔑ろにするようなら私も怒るわよ?」

『な、何をなさるつもりですか……?まさか……』

「ええ、貴方たちの存在を宵に教えてあげる」

『や、やめてください!何でもするので宵様には言わないでください!』

 以前、それとなく私から「宵のことを神様同然に信奉する集団とかあったらどう思う?」と聞いた際、宵は「想像するだけで鳥肌が立つからやめてよ」と苦笑いした。それからというもの久美子たちは宵にファンクラブの存在──というか今までやってきたこと──が露見することを過剰なまでに嫌がるようになった。

「はぁ……分かったわ。今回も私が泥を被るわよ」

『すいません……ではまた明日』

 私は宵に明日の午前中はログインできそうにないことを伝えてから就寝した。



⚫︎中澤沙耶香

 ゲームで自分が他の人に迷惑をかけていたことに関して現実での報復を予告された私は恐怖からしばらく立ち直れずにいた。
 私は夏間先輩が秘密組織みたいな集団のリーダーで、彼女を怒らせた人は先生だろうが生徒だろうが関係なく消されてしまうという噂を聞いたことがある。さすがに嘘だと思っていたけど、ゲームで出会った夏間先輩は噂が本当だと思えるくらい恐ろしい人だった。

「沙耶香、ちょっと私の部屋でお茶しない?」

「え、いいけど部屋に入ってもいいの?」

 気分転換のためにリビングでテレビでも見ようかと思って部屋から出たら姉さんに呼び止められた。誰であっても頑として部屋に入れようとしない姉さんの部屋に誘われたことへの違和感はあったけど、姉さんの作るお菓子に釣られて私は姉さんの部屋に入ってしまった。

──ガチャ

「姉さん、なんで鍵を閉めるの?」

「そんなの決まっているじゃない」






























 貴女を教育するためよ



───────────────
お読みいただきありがとうございます。
最近暑いのでホラーっぽくしてみました。

次回は再びマヨイサイドに戻ります。


※ジャスティの容姿に関して
感想をいただいた結果以下のようになりました。また性格については今後の話の展開次第になるので参考に留めることにしました。ご意見くださった読者様ありがとうございます。

身長は長身意見多かったので1d20+160

髪の長さはショートボブから足元までの超ロング
どうせ出ないエフェクトはアバター全体に掛かります
01~33 ショートボブ
34~66 ロング(腰の辺りまで)
67~99 超ロング(足元近くまで)
00 謎のキラキラエフェクト&振り直し

胸のサイズはスレンダーと巨乳で実質2択
01~50 A
51~75 F
76~00 G
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