147 / 228
本編
第133話 掲示板16
しおりを挟むセシリアが遅い朝食を食べている間に、出発の準備もすっかり整っていたので、早速、大国ゼフィランスに向かうコトを告げる。
とにかく、アゼリア王国の権力が届く範囲から、逃げないとね
思い入れも何にもない、あの国の為に、もう、あんな苦しい思いしたくないし
グレンは少しだけ微妙な顔をしたが、何も言わずに頷いて、今までセシリアが使っていた椅子とテーブルを馬車の中にしまい、御者台へと向かう。
お腹が、ポテポテコロコロした感じになったレオと、グリフォンの雛
私の周りを走る姿、なんか可愛くて、癒されるわぁ~……
ほっこりしているセシリアの視線の先で、ルリは、ちょっと首を傾げてから、楽しそうに走り回っていたレオとグリフォンの雛を捕獲する。
「アタシは、こいつら連れて先に入ってるよ…リアもユナも、さっさとはいっといで」
ルリはそう言って、捕まえた2人を左右の腕に抱えて、馬車の中に入っていた。
うふふふ……おチビちゃん達も、馬車に入ったコトだし、私達も入りますか
「それじゃ、私達も馬車に入ろうか、ユナ」
「うん」
ユナと手を繋ぎ、セシリアは楽し気に馬車に乗るのだった。
全員が馬車に乗り、忘れ物が無いコトを確認し、グレンは馬車を出発させた。
「あっ…動き始めた……たぶん、この馬車って、それなりに良いモノなんだろうけど、けっこう振動がきついよねぇ………」
セシリアの言葉に、ルリが首を傾げる。
「こんなモンじゃないのかい?…アタシが檻に入れられて乗せられたモノはもっとガタガタいってたけど?」
「う~ん……ユナは記憶が無いから…わからないなぁ……」
などと話している間に、レオとグリフォンの雛は、セシリアが寄りかかるのに使っていたクッションのひとつに、ひっつい2人で眠っていた。
「あらあら……もう、ねむっちゃったのねぇ~…ふふふふ…可愛いわぁ~…」
異種族だけど、兄弟みたいに育ってくれるかなぁ~…
それにしても、はたから観たアレは、いっちゃなんだけど
かなり、面白かったなぁ……はぁ~……
この世界って、ラノベあるある的に、ろくな娯楽が無いからねぇ……
ずぅ~っと、つらく苦しい生活だったけど、今は自由なんだから
これからの今生は、豊かなスローライフを目指すわよ
勿論、それには豊かな食生活も欠かせないわ
大国…それも帝国と付く強国なら、色々な作物の種とかもあるだろうし
辺境に行く前に、色々と仕入れないとねぇ………
香辛料に、作物の種、出来れば薬草の種も欲しいわねぇ
下手すっと、お金よりも、物々交換が主流のところもあるだろうしね
……っと、今日こそは、グレンに金貨とかの価値を聞かないと
たしか、デュバインが崩したお金も入れたって言ってたけど
何処にいれたのかなぁ?
次の休憩の時にでも、探して聞かないとね
ああ、あと、聞こうと思っていたコト思い出したわ
「あっ…そうだ…ルリ、聞こうと思っていたんだけど、昨日のお肉とか、どうしてんの?」
「うん?どうしてんの?ってはどういう意味だい?」
「いや、だって…魔道具の冷凍庫とか無いでしょ?あのままだったら、腐っちゃうでしょ?」
セシリアの説明に、ルリがなるほどと言う表情で頷く。
「ああ、そういう意味かい……それなら、ほら…あの一角に積み込んで、アタシが《時止め》の魔法をかけておいたよ」
その言葉で、ルリが特殊な魔獣であるコトを、改めて知る。
同時に、させなくて良い魔力の消費をさせたことに罪悪感を感じる。
なんと言っても、今のルリは、極度な栄養失調に魔力だって不安定た妊娠中なのだから。
できるなら、出産した後、身体が癒えるまで、無理をさせたくないと思ったいただけに、自分の失態に頭痛を覚えつつ言う。
「えっとね……その……アイテムボックスあるんだけど」
セシリアの言葉に、バッと振り返ったルリが言う。
「本当に?」
「うん…この腕輪がアイテムボックス…あと、マジックポーチもあるよ」
私の言葉に、ルリは脱力して言う。
「そういうのは、早く言って欲しかったわぁ……アイテムボックスやマジックポーチがあるなら、アタシが無理して《時止め》使わなくてよかったんじゃない………」
クテっとしてみせるルリに、セシリアは腰に着けなおしたばかりのマジックポーチをはずして言う。
「なんなら、マジックポーチ、ルリが持つ?」
セシリアの言葉に、ちょっと悩む素振りをみせてから、ルリは首を振って言う。
「いいや、それだったら、そのマジックポーチはユナに持たせな……アタシは狩りをするから、持っているのにむかないよ」
「ああ…そっか……それじゃ、このマジックポーチはユナが持っててね」
昨日の魔獣も、ルリが獲ったって言ってたっけ
解体されていたから、どんな魔獣だったか知らないけど
たぶん、聞かない方が良いよね……
正体を知って食べられなくなるのはイヤだもん
「はい……ユナが持つね………ルリお姉ちゃん、マジックポーチに入れるから、もう《時止め》をはずして良いよぉ…魔力を食うんでしょ」
「ああ、助かるよ……流石に、ずっと《時止め》を維持すると、魔力が減るからねぇ……こんなに、弱った身体じゃなきゃぁ……たいしたコトないんだけどねぇ……はぁ~…」
ルリが《時止め》を解除したと同時に、ユナが壷などに入ったモノを次々としまう。
そして、今着ないような衣類など、直ぐ使わないモノを次々とマジックポーチに入れて行く。
保存食や水の壷なども、すべてマジックポーチの中に消え、馬車の中が広くなったコトで、セシリアはちょっと落ち込む。
嗚呼…いくらテンパリ状態だからって、気付こうよ私
最初からこうしたら、もっと馬車の中を広く使えたんだよねぇ
「ふふふふ…随分と広くなったねぇ……これなら、アタシも本体の姿なっても良いねぇ…昨日、リアが毛皮を被っても寒そうに寝てたからね……本体で添い寝してやれるよ」
ルリの言葉に、セシリアは内心でちょっとウホッとする。
うわぁ~…モフモフのルリの添い寝……凄く楽しみぃ~……うふふふ
猫型魔獣のルリに、もふりついて寝る夢想にちょっとうっとりするセシリアに、ルリが尋ねる。
「そう言えば、あの『隠蔽結界』とかいうヤツ解いたのかい?」
ルリの言葉に、セシリアは馬車の天井の上を視る。
あははは………張ったまま忘れていたわ………どうしようかなぁ?
このままでも、大丈夫だとは思うけど…ここは、それとなくルリに聞いてみよう
「あっ…張ったままだったわ……でも…このままでも支障ないから良いかな?」
セシリアの言葉に、ルリは頭痛を覚えたようにこめかみに指先をあてていう。
「あるに決まっているだろう……リアは、弱っているんだよ」
と、静かな叱責に、肩を竦め、ペロッと舌を出し、てへぺろをしつつ、隠蔽結界を解除するのだった。
今の私がやっても、可愛くないかもだけど、てへぺろしかないわ
あ~あ…ルリに怒られちゃった
41
お気に入りに追加
2,270
あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?
Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」
私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。
さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。
ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜
FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio
通称、【GKM】
これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。
世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。
その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。
この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。
その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる