142 / 228
本編
第128話 マヨイは破壊する。
しおりを挟む⚫︎マヨイ
「よし、入っていいぞ」
僕らは許可証を見せることで特に手間取ることもなく関所を通過することができた。関所にいた兵士NPCは少しだけ世間話をしそうな雰囲気を醸し出していたけれど、兵士としてそれでいいのか?
「蜂の巣と聞いたので蜂の巣のような建物を想像してましたけど……」
「まー、資料にあった通り洞窟だね」
"蜂の巣"というダンジョンの名前の由来はダンジョンの奥に存在する巨大な蜂型モンスターの巣のようだ。1匹の女王蜂型のモンスターに使役された複数種の蜂型モンスターは位階が高いだけでなく連携もしてくるらしい。
その蜂の巣の手前にあるアンダラシルという植物の葉か実がダンジョンの踏破を証明するアイテムらしいので無理に蜂の巣を破壊する必要はなさそうだ。
「アンダラシルってどんな植物なんでしょう?」
「聞き覚えのない名前だしゲーム固有のものじゃないかな」
「資料には魔法を使う植物型モンスターって書いてありますけど……」
「森にいるらしいマンイーターの仲間かもね」
複数の状態異常を同時に与えてくるらしい魔法攻撃だけでも十分に危険だけど、蔦を使った拘束攻撃と体力と魔力を吸収する攻撃も警戒する必要がある。それに資料にはアンダラシルに攻撃を加えれば周囲の蜂型モンスターが襲ってくるとも書いてあった。
「宝石蜂は女王蜂型のモンスターと次世代の女王蜂候補のことらしいから普通なら遭遇することはないモンスターみたいだね」
「なら女王蜂さんも倒しましょう!」
「……そうだね、頑張ろうか」
こうして洞窟に入ったまでは問題なかったのだけど、洞窟内は蜂の羽音が反響していて四方八方を蜂に囲まれているような感覚を覚えた。
羽虫、というか羽音が苦手な僕にとっては本当に不快な音だ。
少しは我慢できるかとも思ったけど、これは生理的に無理だね。
「クレア、ちょっと無茶するよ」
「お兄さん?」
まずは探索技能でダンジョンの構造を丸裸にする。
立体的なマップは複雑な迷路のようだ。資料には大まかな最奥までの通路案内も書かれていたけれど、おそらく普通に戦闘しながら進めば1時間掛けてもたどり着けないだろう。
「アンダラシル、アンダラシル……これか」
次にマップに表示されたモンスター全てに高位鑑定を使用してアンダラシルという名前を探す。これは資料通りに最奥に密集していた。どうやら単体のモンスターではなく森のように群生している樹木型のモンスターらしい。
「ふぅ………クレア、少し下がって耳を塞いでいてね」
「は、はい……」
「威力調整+100%・形状変化・魔力弾×1500000」
現状の最大火力によるダンジョンの内壁破壊。もし洞窟が崩落したとしても出入り口近くにいる僕らが生き埋めになる可能性は低い。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッ
洞窟という音が反響しやすい環境だったせいか手で耳を塞いでいても耳鳴りがするほどの大音量が鳴り響く。ただ眼前に表示されているマップには僕らのいるダンジョンの入り口からアンダラシルが群生している奥地までを貫通する路が表示されている。
また出来たばかりの通路を通って僕らの方に向かってくる蜂型モンスターの姿も確認できた。
「なんのおとー?」
「ごめんよ、ククル。起こしちゃったね」
「パパ、おはよー」
頭の上に乗ったまま器用に寝ていたククルを起こしてしまった。
「うぅ……頭がぐわんぐわんします」
「クレアちゃんもごめんね。大丈夫?」
「はい、大丈夫です。……それよりダンジョンの壁って壊せたんですね」
「あー、確かに。壊せない可能性かあったの忘れてたよ。それよりクレアちゃん、ちょっと掴まっててね」
「はい……きゃっ」
僕はクレアちゃんをやさしく両腕で横向きに抱える──お姫様抱っこというやつだ──と飛行技能を使って新しく出来た(作った?)通路に飛び込んだ。
「お、おに、お兄さん!?」
「かなり揺れるだろうから舌を噛まないように気をつけてね」
「ねー!」
「あ、ククルちゃん!」
ククルが僕の帽子の中から抜け出して僕に抱えられているクレアちゃんの懐に飛び込んだ。クレアちゃんがしっかり抱きとめてくれているし、これなら少し荒っぽい動きをしても大丈夫だろう。
僕は下層から迫り来る蜂型のモンスターを躱しながらダンジョンの終着地であるアンダラシルの群生地まで降りて行った。
───────────────
お読みいただきありがとうございます。
久しぶりの環境破壊回でした。
生理的に無理な羽虫の羽音が反響してる洞窟なんてマヨイがまともに攻略するわけないんですよ……
41
お気に入りに追加
2,258
あなたにおすすめの小説
現実逃避のために逃げ込んだVRMMOの世界で、私はかわいいテイムモンスターたちに囲まれてゲームの世界を堪能する
にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
この作品は 旧題:金運に恵まれたが人運に恵まれなかった俺は、現実逃避するためにフルダイブVRゲームの世界に逃げ込んだ
の内容を一部変更し修正加筆したものになります。
宝くじにより大金を手に入れた主人公だったが、それを皮切りに周囲の人間関係が悪化し、色々あった結果、現実の生活に見切りを付け、溜まっていた鬱憤をVRゲームの世界で好き勝手やって晴らすことを決めた。
そして、課金したりかわいいテイムモンスターといちゃいちゃしたり、なんて事をしている内にダンジョンを手に入れたりする主人公の物語。
※ 異世界転移や転生、ログアウト不可物の話ではありません ※
※修正前から主人公の性別が変わっているので注意。
※男主人公バージョンはカクヨムにあります
Select Life Online~最後にゲームをはじめた出遅れ組
瑞多美音
SF
福引の景品が発売分最後のパッケージであると運営が認め話題になっているVRMMOゲームをたまたま手に入れた少女は……
「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」※ STRにポイントを振れば解決することを思いつきません、根性で頑張ります。
「なんか、はじまりの街なのに外のモンスター強すぎだよね?めっちゃ、死に戻るんだけど……わたし弱すぎ?」※ここははじまりの街ではありません。
「裁縫かぁ。布……あ、畑で綿を育てて布を作ろう!」※布を売っていることを知りません。布から用意するものと思い込んでいます。
リアルラックが高いのに自分はついてないと思っている高山由莉奈(たかやまゆりな)。ついていないなーと言いつつ、ゲームのことを知らないままのんびり楽しくマイペースに過ごしていきます。
そのうち、STRにポイントを振れば解決することや布のこと、自身がどの街にいるか知り大変驚きますが、それでもマイペースは変わらず……どこかで話題になるかも?しれないそんな少女の物語です。
出遅れ組と言っていますが主人公はまったく気にしていません。
○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○
※VRMMO物ですが、作者はゲーム物執筆初心者です。つたない文章ではありますが広いお心で読んで頂けたら幸いです。
※1話約2000〜3000字程度です。時々長かったり短い話もあるかもしれません。
後方支援なら任せてください〜幼馴染にS級クランを追放された【薬師】の私は、拾ってくれたクラマスを影から支えて成り上がらせることにしました〜
黄舞
SF
「お前もういらないから」
大人気VRMMORPGゲーム【マルメリア・オンライン】に誘った本人である幼馴染から受けた言葉に、私は気を失いそうになった。
彼、S級クランのクランマスターであるユースケは、それだけ伝えるといきなりクラマス権限であるキック、つまりクラン追放をした。
「なんで!? 私、ユースケのために一生懸命言われた通りに薬作ったよ? なんでいきなりキックされるの!?」
「薬なんて買えばいいだろ。次の攻城戦こそランキング一位狙ってるから。薬作るしか能のないお前、はっきり言って邪魔なんだよね」
個別チャットで送ったメッセージに返ってきた言葉に、私の中の何かが壊れた。
「そう……なら、私が今までどれだけこのクランに役に立っていたか思い知らせてあげる……後から泣きついたって知らないんだから!!」
現実でも優秀でイケメンでモテる幼馴染に、少しでも気に入られようと尽くしたことで得たこのスキルや装備。
私ほど薬作製に秀でたプレイヤーは居ないと自負がある。
その力、思う存分見せつけてあげるわ!!
VRMMORPGとは仮想現実、大規模、多人数参加型、オンライン、ロールプレイングゲームのことです。
つまり現実世界があって、その人たちが仮想現実空間でオンラインでゲームをしているお話です。
嬉しいことにあまりこういったものに馴染みがない人も楽しんで貰っているようなので記載しておきます。
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
ーOnly Life Onlineーで生産職中心に遊んでたらトッププレイヤーの仲間入り
星月 ライド
ファンタジー
親友の勧めで遊び、マイペースに進めていたら何故かトッププレイヤーになっていた!?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
注意事項
※主人公リアルチート
暴力・流血表現
VRMMO
一応ファンタジー
もふもふにご注意ください。
日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。
スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。
地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!?
異世界国家サバイバル、ここに爆誕!
【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい
斑目 ごたく
ファンタジー
「この騎士団に、事務員はいらない。ユーリ、お前はクビだ」リグリア王国最強の騎士団と呼ばれた黒葬騎士団。そこで自らのスキル「書記」を生かして事務仕事に勤しんでいたユーリは、そう言われ騎士団を追放される。
さらに彼は「四大貴族」と呼ばれるほどの名門貴族であった実家からも勘当されたのだった。
失意のまま乗合馬車に飛び乗ったユーリが辿り着いたのは、最果ての街キッパゲルラ。
彼はそこで自らのスキル「書記」を生かすことで、無自覚なまま成功を手にする。
そして彼のスキル「書記」には、新たな能力「命名」が目覚めていた。
彼はその能力「命名」で二人の獣耳美少女、「ネロ」と「プティ」を生み出す。
そして彼女達が見つけ出した伝説の聖剣「エクスカリバー」を「命名」したユーリはその三人の家族と共に賑やかに暮らしていく。
やがて事務員としての仕事欲しさから領主に雇われた彼は、大好きな事務仕事に全力に勤しんでいた。それがとんでもない騒動を巻き起こすとは知らずに。
これは事務仕事が大好きな余りそのチートスキルで無自覚に無双するユーリと、彼が生み出した最強の家族が世界を「書き換えて」いく物語。
火・木・土曜日20:10、定期更新中。
この作品は「小説家になろう」様にも投稿されています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる