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番外編
母の日 君たちが飛ぶまで連荘やめない。
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※注意事項
麻雀用語が複数出てきますが用語解説はありません。
また下ネタも含まれています。
───────────────
⚫︎藍香(小学3年生)
あたしのお母さんはプロ雀士です。
おっとりとした口調とプロ雀士としてデビューしてから公式戦で1度もマイナスになったことがないトップ率5割超という圧倒的な強さ、そしてアラサーには見えないモデルと言われても違和感のない容姿で大人気なんだって。
「あいか~ビール出してぇ~」
「お母さん飲みすぎだよ!」
「まら1ダース飲んれないわぁ~」
でも家にいる時のお母さんはメディアの前に出る時とは別人と言っていいほどだらけ切っているの。お父さん曰く「このキャップが可愛いんだよ」だって。
「もうベロンベロンじゃない。明日は対局あるんでしょ?」
「らいじょうぶらって。わらしが負けるわけないれしぉ?」
大丈夫には見えないから心配しているのに……
明日の対局は母の日記念で子持ちの女性雀士が集まって対局するんだって。
◆
「夏間さん、お子さんが配信者始めたんですって?」
「好きな男の子と一緒にいる時間を増やしたいって祐樹さんに相談したみたいなのよ。男の子のご両親も乗り気で、あれよあれよという間にデビューしちゃったわ」
「海外のマイナーなプロゲーマーを呼んで八百長したんですってね」
「なんのことかしら」
「普通に考えて10歳の女の子がプロとして活動してる大人に勝てるわけないじゃない」
「夏間さんも男性と対局する時、手を抜いて貰ってるって話をききましたよ」
「手で抜いてあげてる、の間違いじゃなくて?」
「「ははは」」
「ふぅ……私も全力を尽くすわ。よろしくね」
◆
翌日、あたしはネット中継されている会場の関係者控室でお母さんの対局を観戦しているの。残すはオーラスのみ、お母さんは現在最下位だ。麻雀は実力だけでなく運が大きく介在するゲームだから、いくらお母さんでも役満の親被りを食らってから逆転するのは難しいと思う。
『さて、これでオーラス。最後の局となるのか、それとも奇跡の逆転劇を見せてくれるのか。解説の緒方さんどう思いますか』
『そうですね。東4局での役満の親被りが響いて現在最下位の夏間がラス親で挽回できるか注目ですね』
『夏間と言えば彼女はプロ雀士公式戦になってから1度もマイナスになったことがないことで有名ですね。ついに土が付いてしまうのでしょうか!?』
『では配牌を見ていきましょう。まずは親の夏間ですが配牌で一向聴!しかもこれは──』
『ええ、いい形ですね。これなら断么や平和、上手く五筒を自摸れれば三色もありえますよ!』
『南家の後藤も悪くない配牌ですね』
『はい、対子が4つあります。七対子かな?』
『現在トップの西家の錦戸は少し悪いか?』
『そうですね。余程のことがなければトップは意地できますから慎重に打ちたいところ』
『そして現在2位の佐々井は……これは──』
『対子の白と中、上手く引ければ逆転もありえますよ!』
お母さんはオーラスの親だけど、トップとの点差は36500点もある。2位との点差だって10000点近くある。はっきり言って絶望的、そんな状況での逆転を狙える好配牌が来た。お父さんはよく「お母さんは牌に愛されているんだよ」って言ってるけど、お母さんが愛してるのはお父さんとあたしだけだから浮気じゃありません!
お母さんは立直・自摸・断么・平和・三色・一盃口でトップとの差を一気に詰めると、次の局でトップから立直・断么・七対子・ドラ2をあがって逆転した。
七対子で地獄待ちって普通はしないし、相手のおばさんも凄く驚いてる。
『いやぁ……まさか、まさかの展開でしたね。まさに牌に愛されている、とでもいうんでしょうか』
『いやぁ……強かった!』
普通ならここで止めてお母さんの勝ちという場面だから司会と解説の人たちも、そしてあたしも完全に終わったものだと錯覚していた。
『え、続行?』
『夏間、まさかの続行です。何があったんでしょう?』
まさかの続行。あとで聞いた話だけど「2日酔いで点数計算するのが面倒になったから全員飛ばすことにしたのよ」とのこと。事実、お母さんは鬼気迫る表情で他家を飛ばすまで連荘し続けた。
それから毎年開催されている母の日の記念対局企画にお母さんは呼ばれなくなった。
───────────────
お読みいただきありがとうございます。
過去一短くなってしまいました。
ちなみに藍香母のやったことはマナー違反です。
実際の対局なら強制終了させられるんじゃないかな?
麻雀用語が複数出てきますが用語解説はありません。
また下ネタも含まれています。
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⚫︎藍香(小学3年生)
あたしのお母さんはプロ雀士です。
おっとりとした口調とプロ雀士としてデビューしてから公式戦で1度もマイナスになったことがないトップ率5割超という圧倒的な強さ、そしてアラサーには見えないモデルと言われても違和感のない容姿で大人気なんだって。
「あいか~ビール出してぇ~」
「お母さん飲みすぎだよ!」
「まら1ダース飲んれないわぁ~」
でも家にいる時のお母さんはメディアの前に出る時とは別人と言っていいほどだらけ切っているの。お父さん曰く「このキャップが可愛いんだよ」だって。
「もうベロンベロンじゃない。明日は対局あるんでしょ?」
「らいじょうぶらって。わらしが負けるわけないれしぉ?」
大丈夫には見えないから心配しているのに……
明日の対局は母の日記念で子持ちの女性雀士が集まって対局するんだって。
◆
「夏間さん、お子さんが配信者始めたんですって?」
「好きな男の子と一緒にいる時間を増やしたいって祐樹さんに相談したみたいなのよ。男の子のご両親も乗り気で、あれよあれよという間にデビューしちゃったわ」
「海外のマイナーなプロゲーマーを呼んで八百長したんですってね」
「なんのことかしら」
「普通に考えて10歳の女の子がプロとして活動してる大人に勝てるわけないじゃない」
「夏間さんも男性と対局する時、手を抜いて貰ってるって話をききましたよ」
「手で抜いてあげてる、の間違いじゃなくて?」
「「ははは」」
「ふぅ……私も全力を尽くすわ。よろしくね」
◆
翌日、あたしはネット中継されている会場の関係者控室でお母さんの対局を観戦しているの。残すはオーラスのみ、お母さんは現在最下位だ。麻雀は実力だけでなく運が大きく介在するゲームだから、いくらお母さんでも役満の親被りを食らってから逆転するのは難しいと思う。
『さて、これでオーラス。最後の局となるのか、それとも奇跡の逆転劇を見せてくれるのか。解説の緒方さんどう思いますか』
『そうですね。東4局での役満の親被りが響いて現在最下位の夏間がラス親で挽回できるか注目ですね』
『夏間と言えば彼女はプロ雀士公式戦になってから1度もマイナスになったことがないことで有名ですね。ついに土が付いてしまうのでしょうか!?』
『では配牌を見ていきましょう。まずは親の夏間ですが配牌で一向聴!しかもこれは──』
『ええ、いい形ですね。これなら断么や平和、上手く五筒を自摸れれば三色もありえますよ!』
『南家の後藤も悪くない配牌ですね』
『はい、対子が4つあります。七対子かな?』
『現在トップの西家の錦戸は少し悪いか?』
『そうですね。余程のことがなければトップは意地できますから慎重に打ちたいところ』
『そして現在2位の佐々井は……これは──』
『対子の白と中、上手く引ければ逆転もありえますよ!』
お母さんはオーラスの親だけど、トップとの点差は36500点もある。2位との点差だって10000点近くある。はっきり言って絶望的、そんな状況での逆転を狙える好配牌が来た。お父さんはよく「お母さんは牌に愛されているんだよ」って言ってるけど、お母さんが愛してるのはお父さんとあたしだけだから浮気じゃありません!
お母さんは立直・自摸・断么・平和・三色・一盃口でトップとの差を一気に詰めると、次の局でトップから立直・断么・七対子・ドラ2をあがって逆転した。
七対子で地獄待ちって普通はしないし、相手のおばさんも凄く驚いてる。
『いやぁ……まさか、まさかの展開でしたね。まさに牌に愛されている、とでもいうんでしょうか』
『いやぁ……強かった!』
普通ならここで止めてお母さんの勝ちという場面だから司会と解説の人たちも、そしてあたしも完全に終わったものだと錯覚していた。
『え、続行?』
『夏間、まさかの続行です。何があったんでしょう?』
まさかの続行。あとで聞いた話だけど「2日酔いで点数計算するのが面倒になったから全員飛ばすことにしたのよ」とのこと。事実、お母さんは鬼気迫る表情で他家を飛ばすまで連荘し続けた。
それから毎年開催されている母の日の記念対局企画にお母さんは呼ばれなくなった。
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お読みいただきありがとうございます。
過去一短くなってしまいました。
ちなみに藍香母のやったことはマナー違反です。
実際の対局なら強制終了させられるんじゃないかな?
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