VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重

文字の大きさ
上 下
103 / 228
本編

第88話 マヨイたちは自己紹介する。

しおりを挟む

⚫︎マヨイ

 僕がギルドホームに戻った頃には暁は迷子状態から脱却していた。どうやら本人も気がつかない内に玄関に戻ってきていたらしい。

「今後の予定とか話し合いたいし談話室に行こうか」

「うん。あれお姉ちゃんとクレアは?」

「クレアちゃんは加工施設にいるらしいよ。藍香は先に談話室で待ってるってさ」

 談話室に向かう途中、地下に続いているらしい階段からクレアちゃんが登ってきた。

「あ、お兄さん!」

「クレアちゃん、加工施設どうだった?」

「あれなら組合の設備では加工出来なかった素材も加工できそうです!」

 加工施設はウォルター大賢者が使っていたということもあってか非常に設備が充実していたらしい。細々とした道具はウォルターがここを引き払った段階で回収されているはず……だったが「僕のお古をあげるよ。君たちが使ってくれたまえ」という書き置きとともに加工に使う小道具もいくつか置いてあったらしい。
 ウォルターがあしながおじさんにしか見えなくなってきている。

「ただいま」

「おかえり。アカトキも来れたのね。迷子になったって聞いたけど何処にいたのよ?」

「壁に空いた穴に指を入れたら、知らない間にか違う廊下にいたんだよね。なんなのここ?忍者屋敷?」

 ちなみに暁が起動させたのは広大な屋敷内をスムーズに移動するためにウォルターが設置したらしい転移装置だ。ドーズさんから渡された資料にはの転移装置の場所と移動先が書かれている。暁も同じものを受け取っているはずだけど、どうやらまだ読んでいないらしい。

「地下にレクレーションルームがありました。あとで見に行ってもいいですか?」

「あ、私も行きたい!」

「2人とも私と真宵は今から配信するから冒頭だけ出てくれないかしら」

 ギルド立ち上げの挨拶なんてわざわざする必要があるのか疑問に思わなくもないけれど、今後配信する際に視聴者置いてきぼりの内容にするわけにもいかないのでやらざるを得ないのだ。

「冒頭だけでいいの?」

「わ、私もですか?」

「クレアもよ。あと雑談メインの配信だし冒頭で挨拶した後もいていいわよ」

「挨拶だけにさせてくださいお願いします」

「わ、私もアカちゃんと地下行きます!」

「ったく、怯えさせるなよ。あと2人とも、ここがギルドホームなのは言っちゃダメだからね」

「なんでですか?」

「情報は必要なものだけ出しておけばいいさ。ギルドホームを持っていないギルドやギルドに所属していないプレイヤーから変に嫉妬されて色々と言われても面倒だろ?」

 ちなみに僕は無理にでも入ろうとするプレイヤーが少なからず現れると予想している。そのため僕らは身内ギルドであることも配信では言っておきたい。

「そろそろ時間ね」

「あ、ほんとだ」

 昨日の夜に藍香がSNSで今日の配信を予告してくれていた。
 予告の内容は主に3つ。ギルド結成の挨拶とメンバーの紹介、そして僕らと流星群との間の契約についてだ。
 そういえば藍香によると流星群所属の何人かが運営からゲーム内の掲示板の閲覧と書き込みを制限されているそうだ。何を書き込んだらそうなるのか知らないけれど、本当に何やってんだろうね。
 そうしている間に予告した時間になったので配信を開始した。


「こんにちは、アイ&のアイです」

「こんにちは、マヨイです。今日は僕らが"Continued in Legend"で設立したギルドとギルドメンバーの紹介、あとは簡単な雑談をしようと思います」


【名無し:こんちゃ】
【名無し:迷い家?】
【名無し:迷い家だろ】
【名無し:パーティランキング1位おめ】
【名無し:ギルド入れてくれ】


「コメントで指摘されちゃってるけどギルド名は迷い家よ。ギルマスはマヨイ、私がサブマスね。私たちの琴線に触れるようなプレイヤーがいればこちら勧誘するかもしれないけれど、基本的にメンバー募集はしてないわ」

「いわゆる身内ギルドってやつだね」


【名無し:残念】
【名無し:ギルメンは後ろの2人?】
【名無し:クレアじゃん。PiCに入ったと思ってた】
【名無し:もう1人は?】


「それじゃギルメンの紹介ね。アカトキから」

「アカトキです。マヨイの妹だけど、兄さんみたいに人外プレイヤーじゃないから期待はしないでください。役割は「肉壁」で……ってお兄ちゃん!」

「いや、つい。って叩くなよっ」


【名無し:妹ちゃん参戦か】
【名無し:お兄ちゃん呼び可愛い】
【名無し:切り抜き班頼んだ!】


「ほら、じゃれてないで次はクレアね」

「ひゃい!クレアでしゅアカちゃんに誘われてはじめました」

「クレアは加工系のプレイヤーの中では結構有名らしいわね」

「そうなんですか?」


【名無し:加工スレの有名人だぞ】 
【名無し:PiCには入らなかったんだ】
【名無し:そうなんですよ】


 PiCというのは生産系プレイヤーが集まって出来たギルドだ。生産系のプレイヤー以外にも結構な数の加工系プレイヤーも合流しているらしい。現時点での活動内容は情報交換や素材の融通し合いがメインのようだ。

「PiCには誘われましたけど、その時にはもう迷い家に入ってたのでお断りしました。それ……その、少し怖かったです」

「クレアは私たちの子よ。もし今後勧誘してくる人がいたら相応の対応をするわ」

「そうだね」


【名無し:怖がらせた奴特定しなきゃ】
【名無し:娘さんをPiCにください】
【名無し:おい馬鹿やめろ!】
【名無し:処す?処しちゃう?】
【名無し:チャラ王の刑ですか】


「っと、そろそろアカトキとクレアは時間じゃないか?」

「……あ、そうだった!クレア行こ」

「待ってよアカちゃん!」


【名無し:時間?】
【名無し:何か予定でもあったんじゃね?】
【名無し:赤ちゃん?】


「2人は予定があったんだけど自己紹介だけでもと思って少し無理して配信に出てもらってたんだ。さて、ここからは雑談枠になるんだけど、その前に僕らから言っておきたいことがあるんだ」

「前回の配信で流星群のオリオンがゲストとしていた理由、そして流星群のメンバーが流している私たちに関する噂に関してね」


───────────────
お読みいただきありがとうございます。
長くなりそうなので分割しました。
しおりを挟む
感想 576

あなたにおすすめの小説

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」  テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。  この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。  誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。  しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。  その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。  だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。 「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」 「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」  これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語 2月28日HOTランキング9位! 3月1日HOTランキング6位! 本当にありがとうございます!

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

処理中です...