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本編

第88話 マヨイたちは自己紹介する。

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⚫︎マヨイ

 僕がギルドホームに戻った頃には暁は迷子状態から脱却していた。どうやら本人も気がつかない内に玄関に戻ってきていたらしい。

「今後の予定とか話し合いたいし談話室に行こうか」

「うん。あれお姉ちゃんとクレアは?」

「クレアちゃんは加工施設にいるらしいよ。藍香は先に談話室で待ってるってさ」

 談話室に向かう途中、地下に続いているらしい階段からクレアちゃんが登ってきた。

「あ、お兄さん!」

「クレアちゃん、加工施設どうだった?」

「あれなら組合の設備では加工出来なかった素材も加工できそうです!」

 加工施設はウォルター大賢者が使っていたということもあってか非常に設備が充実していたらしい。細々とした道具はウォルターがここを引き払った段階で回収されているはず……だったが「僕のお古をあげるよ。君たちが使ってくれたまえ」という書き置きとともに加工に使う小道具もいくつか置いてあったらしい。
 ウォルターがあしながおじさんにしか見えなくなってきている。

「ただいま」

「おかえり。アカトキも来れたのね。迷子になったって聞いたけど何処にいたのよ?」

「壁に空いた穴に指を入れたら、知らない間にか違う廊下にいたんだよね。なんなのここ?忍者屋敷?」

 ちなみに暁が起動させたのは広大な屋敷内をスムーズに移動するためにウォルターが設置したらしい転移装置だ。ドーズさんから渡された資料にはの転移装置の場所と移動先が書かれている。暁も同じものを受け取っているはずだけど、どうやらまだ読んでいないらしい。

「地下にレクレーションルームがありました。あとで見に行ってもいいですか?」

「あ、私も行きたい!」

「2人とも私と真宵は今から配信するから冒頭だけ出てくれないかしら」

 ギルド立ち上げの挨拶なんてわざわざする必要があるのか疑問に思わなくもないけれど、今後配信する際に視聴者置いてきぼりの内容にするわけにもいかないのでやらざるを得ないのだ。

「冒頭だけでいいの?」

「わ、私もですか?」

「クレアもよ。あと雑談メインの配信だし冒頭で挨拶した後もいていいわよ」

「挨拶だけにさせてくださいお願いします」

「わ、私もアカちゃんと地下行きます!」

「ったく、怯えさせるなよ。あと2人とも、ここがギルドホームなのは言っちゃダメだからね」

「なんでですか?」

「情報は必要なものだけ出しておけばいいさ。ギルドホームを持っていないギルドやギルドに所属していないプレイヤーから変に嫉妬されて色々と言われても面倒だろ?」

 ちなみに僕は無理にでも入ろうとするプレイヤーが少なからず現れると予想している。そのため僕らは身内ギルドであることも配信では言っておきたい。

「そろそろ時間ね」

「あ、ほんとだ」

 昨日の夜に藍香がSNSで今日の配信を予告してくれていた。
 予告の内容は主に3つ。ギルド結成の挨拶とメンバーの紹介、そして僕らと流星群との間の契約についてだ。
 そういえば藍香によると流星群所属の何人かが運営からゲーム内の掲示板の閲覧と書き込みを制限されているそうだ。何を書き込んだらそうなるのか知らないけれど、本当に何やってんだろうね。
 そうしている間に予告した時間になったので配信を開始した。


「こんにちは、アイ&のアイです」

「こんにちは、マヨイです。今日は僕らが"Continued in Legend"で設立したギルドとギルドメンバーの紹介、あとは簡単な雑談をしようと思います」


【名無し:こんちゃ】
【名無し:迷い家?】
【名無し:迷い家だろ】
【名無し:パーティランキング1位おめ】
【名無し:ギルド入れてくれ】


「コメントで指摘されちゃってるけどギルド名は迷い家よ。ギルマスはマヨイ、私がサブマスね。私たちの琴線に触れるようなプレイヤーがいればこちら勧誘するかもしれないけれど、基本的にメンバー募集はしてないわ」

「いわゆる身内ギルドってやつだね」


【名無し:残念】
【名無し:ギルメンは後ろの2人?】
【名無し:クレアじゃん。PiCに入ったと思ってた】
【名無し:もう1人は?】


「それじゃギルメンの紹介ね。アカトキから」

「アカトキです。マヨイの妹だけど、兄さんみたいに人外プレイヤーじゃないから期待はしないでください。役割は「肉壁」で……ってお兄ちゃん!」

「いや、つい。って叩くなよっ」


【名無し:妹ちゃん参戦か】
【名無し:お兄ちゃん呼び可愛い】
【名無し:切り抜き班頼んだ!】


「ほら、じゃれてないで次はクレアね」

「ひゃい!クレアでしゅアカちゃんに誘われてはじめました」

「クレアは加工系のプレイヤーの中では結構有名らしいわね」

「そうなんですか?」


【名無し:加工スレの有名人だぞ】 
【名無し:PiCには入らなかったんだ】
【名無し:そうなんですよ】


 PiCというのは生産系プレイヤーが集まって出来たギルドだ。生産系のプレイヤー以外にも結構な数の加工系プレイヤーも合流しているらしい。現時点での活動内容は情報交換や素材の融通し合いがメインのようだ。

「PiCには誘われましたけど、その時にはもう迷い家に入ってたのでお断りしました。それ……その、少し怖かったです」

「クレアは私たちの子よ。もし今後勧誘してくる人がいたら相応の対応をするわ」

「そうだね」


【名無し:怖がらせた奴特定しなきゃ】
【名無し:娘さんをPiCにください】
【名無し:おい馬鹿やめろ!】
【名無し:処す?処しちゃう?】
【名無し:チャラ王の刑ですか】


「っと、そろそろアカトキとクレアは時間じゃないか?」

「……あ、そうだった!クレア行こ」

「待ってよアカちゃん!」


【名無し:時間?】
【名無し:何か予定でもあったんじゃね?】
【名無し:赤ちゃん?】


「2人は予定があったんだけど自己紹介だけでもと思って少し無理して配信に出てもらってたんだ。さて、ここからは雑談枠になるんだけど、その前に僕らから言っておきたいことがあるんだ」

「前回の配信で流星群のオリオンがゲストとしていた理由、そして流星群のメンバーが流している私たちに関する噂に関してね」


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お読みいただきありがとうございます。
長くなりそうなので分割しました。
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