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本編

第85話 マヨイたちは作戦を立てる。

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⚫︎マヨイ

 暁と合流した僕らは先ほど見つけたドームのバリアが張られていた場所の近くまでやってきた。試しに魔力弾を放つもバリアが破れた様子はない。クレアちゃんの弓矢も弾かれてしまった。

「何かフラグ管理されてるのかしらね」

「パーティだと無理とか?」

「あ、残り20分になりましたよ」

「ありがとう。ドロップも確認したけど特に鍵のようなものはないね」

 気がつけば制限時間は残り3分の1になっていた。
 このまま手をこまねいて時間を無為にするのは嫌だな。

「放置するか。レベリング優先しよう」

「そうね。全員の位階が80を超えたら難易度9に挑みましょう」

「うぇっ、いつのまにか位階が50超えてるんだけど!?」

 その後、イベントエリアに滞在できる限界まで僕らはレベリングに勤しんだ。途中、僕の魔力弾を受けてもギリギリ耐える魔物もいたけれど、そういった敵は藍香とクレアちゃんがトドメを刺してくれた。
 暁は攻撃手段に乏しいらしいが、透明獅子からの不意打ちを防ぐなど要所で壁役としての役割を果たせていたように思う。
 ただ暁が何やら不満げな様子だったのは少し気になった。たぶん僕らに隠しているだけで何か強力な攻撃手段があるんだと思う。それを使わないのは使うのに何らかの条件か無視できないデメリットがあるんだろう。何処かでストレス発散させてやらないとな。


…………………………………


……………………………


………………………


 イベントエリアから出た僕らは藍香とクレアちゃんのリクエストで難易度8を周回することになった。難易度8に出現するモンスターは位階76~85のモンスターが800匹ほどいるらしく、だいたい数十体倒すだけで位階が上がってくれるおかげで1周するだけでパーティ全員の位階が結構な速度で上がっていく。
 イベントエリアを出るたびに確認している掲示板にも経験値効率の良さに言及しているプレイヤーは多い。ただ難易度3から登場するらしい透明獅子による不意打ちで死んでしまうプレイヤーが多いらしい。おかげでイベント掲示板は透明獅子に対する罵詈雑言の嵐だ。

「そろそろアカトキの集中力が限界っぽいから休憩しようか」

「そうね。休憩挟めばすぐお夕飯の時間になるし……8時くらいに再集合でいいかしら?」

「いいんじゃないかな。クレアちゃんは大丈夫?」

「は、はい!大丈夫でひゅ」

「それじゃ一旦解散ってことで」

「私はログアウトするね。つかれたー」

「アカちゃんまたね」

「またねー」

 こうして一足早く暁はログアウトした。
 いや、正しくはログアウトと言うべきか。

「さて、どうすればアカトキの負担を減らせるか考えようか」

「そうね……というか真宵は知ってたの?」

「何のことですか?」

「ほら、アカトキが透明獅子からの不意打ちを何度も防いでたでしょ?」

「はい」

「あれさ、

「え、そうなんですか!?」

「探索スキルに引っ掛からないモンスターが文字通り透明になって襲ってくるのを事前に察知して味方を守るなんて真似は普通のプレイヤーには無理よ」

 藍香にだって無理だ。だからこそ囲まれて1度死んでいるのだし、透明獅子は今回のイベントで現状確認されている唯一の覚醒2つ持ちモンスターだ。覚醒の補正値が低いのかステータス的には大したことないけど、それでも不意打ちに特化したスキル構成は脅威と言える。

「そういえば……アカちゃん先回りして不意打ちを防いでました」

「先回りってことは反射じゃないわよね」

「たぶんストレスが掛かるほど集中力が増しているんだと思うよ」

「それ私たちが知らないだけでスキルを隠している可能性は?」

「何か隠してるのは間違いないだろうけど、たぶん攻撃スキルだね。それも緩い使用条件で高威力、けどデメリットが大きいタイプのやつ」

「カウンター系かしら。あと聴覚も鋭くなってるんじゃないかしら」

「たしかに。そうでないと先回りは難しいね」

「やっぱりアカちゃんはすごいんですね!」

「そうね、やっぱり真宵の妹なだけあるわ」

 いや、この2人も人のこと言えないよね。
 クレアちゃんの弓の精度はアニメキャラクター顔負けだし、藍香は僕と同水準で並列思考を使いこなす数少ないゲーマーだ。たぶん今の僕と藍香が戦えば僕の方が少し分が悪いんじゃないかな。

「………それで今後はアカトキに適度にストレスを与えて行こうと思う。ただ同時にストレスの解消手段を用意したいんだよね。何がいいかな?」

「攻撃手段を隠してるとなると敵を倒す爽快感は味わえないでしょうし……」

「ストレスを与えるんですか?」

「ストレスと同時に適当な刺激を与えてストレス以外の条件でもあの異常な集中力を発揮できるように誘導したいんだよ」

「味方が強くなるのは喜ばしいことだし、結果的にとはいえあの子も強くなれるのだからWIN-WINよね」

「あ、もちろんストレスを掛けることを教えちゃダメだよ?こういうのは自覚しちゃうと意識しておかしくなっちゃうことがあるから」

「アカちゃんがもっとすごくなるのに必要なんですよね?」

「うん」

「分かりました、秘密にします!」

 こうして暁不在の中、実兄と従姉妹と親友による暁虐待調教作戦(藍香命名)が始動することになった。それにしても作戦名の字面が父さんの持ってるアダルトゲームのタイトルみたいになっている。
 もう少しマシな作戦名にはならなかったのだろうか。

「私もそろそろ休憩するわね」

「おつかれさまでした!」

「おつかれ、僕もログアウトするけどクレアちゃんはどうするの?」

「私もログアウトします」

「おつかれさま」

「おつかれさまでした。夜もよろしくお願いします」

 その後、夜8時に再集合した僕らは日付が変わる直前までイベントエリアでレベリングを続けた。そのおかげで全員が位階90を超えたものの例のドームを壊すことは叶わなかった。
 手に入れたモンスターの素材はクレアちゃんの発案で全てギルドの共有資産になった。テコで預けた素材を別の街の組合で受け取ると手数料が発生するらしいが、さすがに9000体以上のモンスターの素材は自分たちのアイテム欄では持ち切れない。明日以降も素材の入手には困らないのが分かっているので今回は全て組合に売却することにした。

 それと藍香が明日の生配信はアーカイブに残したいと言っていた。藍香のことだから何か企んでるんだと思う。たぶん流星群との約束を反故にされないよう保険を掛けたいんじゃなかろうか。


───────────────
お読みいただきありがとうございます。
ストーリーがグダるのを回避するため夕飯後のレベリングシーンは省略しました。だいたいマヨイがぶっ放して耐えたのをアイとクレアが処理してます。

次回は掲示板回です。
チャラ王vsユウジPTの結末やいかに!
が書きたいだけの回となります。
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