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本編

第75話 マヨイと組合登録証

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⚫︎マヨイ

 今日は"Continued in Legend"サービス開始5日目だ。
 正午から始まるイベントの影響か早朝だというのにテコの組合のエントランスは昨日や一昨日以上にプレイヤーで溢れ返っていた。
 そんな中、僕は受付のブライトに厄を討伐した報告をし列に並んでいた。プレイヤーが多いせいか珍しくブライトの受付前にも列ができていたのだ。

「こんにちは、厄を討伐したので報奨金を受け取りたいのです」

「君だったのか。半日経っても"厄が消えた"という情報しか入って来なくて困ってたんだよ。何か討伐したと証明できるものはあるか?」

「魔石は落としませんでしたけど、代わりにこれを落としましたよ」

 そう言って手記とローブ、ついでに厄晶をカウンターに置く。
 厄の核となった人物がネクロマンサーだと言っていたし、おそらく名前も分かっているはずだ。

「……ふむ、確かにヨーゼフ氏のもののようだね。それに譲渡履歴もない、これなら君が厄を討伐した証明になるだろう」

「譲渡履歴を確認できるスキルがあるんですか?」

「高位鑑定士に覚醒した時に覚えられる固有技能だよ。色々と見え過ぎるから使い勝手は悪いけどね。そういえば君たちは最初から表示外技能で簡易鑑定が使えるって本当かい?」

「表示外技能ってなんですか?」

「ステータス欄に表示されていない技能のことさ。簡易鑑定の他にも言語読解や自己蘇生とかがそうだね」

「心当たりありますね……」

「簡易鑑定はともかく自己蘇生は大変そうだね。死にたくても死ねないんだろ?」

「死んでも生き返ってしまいますからね」

「初めて聞いた時には神様は残酷だなって思ったよ。色々と大変そうだけど頑張ってな」

「はい、ありがとうございます」

 NPCから同情されるとは思わなかった。
 確かに死にたくても死ねないというのは拷問に近い気がするけど、僕らの場合はゲームから離れてしまえばいいだけなので実感は湧かない。

「それと君が厄を倒したという証明証を今から発行するから、エイトにいる領主か領主代行に渡してくれないか」

「あ、そうだ。厄と遭遇した時、僕以外に4人いました」

「その人たちは君と同じように譲渡履歴のないものを提出出来るかい?」

「できないです」

「なら討伐は君1人の功績になるはずだよ。それというのも──」

 この後、ブライトから長々と説明をされたが、要約するとモンスターを倒すと討伐した時点で生き残っていた者へ世界の意思とやらが功績に応じてドロップ品を分配してくれるらしい。譲渡履歴のないものを提出できない者にはモンスターを倒したという功績は与えられない、ということのようだ。
 ここまでパーティなんてほとんど組んでないし、暁と組んだ時はそこまで意識しなかったから気がつかなかった。

「色々と教えてくださってありがとうございます」

 こうして僕はイベント開幕直前だというのにエイトへと向かうことになった。まだ朝の8時だし、エイトまで片道1時間らしいのでイベント開幕までにはテコに戻ってこれるだろう。


…………………………………


……………………………


………………………


 テコの東門から街道沿を真っ直ぐ進むこと40分弱、僕は組合で聞いたよりも20分近く早く領都エイトの西門前にたどり着いた。早く着くことのできた理由は道中にモンスターが出現しなかったからだろう。
 モンスターが出現しなかった理由は分からないけらど、僕は厄が消えた影響である可能性が高いと思っている。あとはテコに派遣されていたらしい領軍がエイトに戻りながらモンスターを根こそぎ狩ってしまったというもの可能性としてはありそうだ。

「にしても物々しい雰囲気だな……」

 西門の検問を待つ列の中には僕以外のプレイヤーも並んでいる。
 その中の1人、列の先頭にたどり着いたプレイヤーが兵士たちと何やら揉めている。

「なんで俺たちが街に入れねぇんだよ!」

「ですから────だと言ってる───せんか」

 どうやら大声で叫んでいるプレイヤーとそのパーティメンバーが街に入るのを拒否されているようだ。兵士の言葉も上手く聞き取れかいが、列に並んでいるNPCの呟きから事情を察することが出来た。

「これにそんな機能があったとはね……」

 正式なアイテムとしての名称は組合員登録証。組合に登録した際に貰えるこれは身分証明書というだけではなかったらしい。特殊な道具を使うことで組合側からの評価を確認できるようだ。例え犯罪者プレイヤーになっていなくても、組合から信用できないと評価されていれば街に入ることを拒否されることがあるらしい。

「ん?」

 遠目なので人違いかもしれないが、特に大きな声を出しているプレイヤーは一昨日、組合で暁とクレアちゃんに絡んでいた男によく似ている。
 少しすると彼らは厳つい鎧を着た兵士取り押さえられ、簀巻きにされた上で街の中へ運ばれていった。街には入れたのだから汚い悲鳴なんてあげず喜べよ。

「僕も色々とやらかしてるから拒否されたりして……」

 特にチャラ王との決闘に関しては組合に良い印象を持たれていないだろう。あれでも彼はソプラに襲来したワイバーンを撃退した立役者の1人らしい。それを嬲り殺しにした僕の評価はきっと良くないはずだ。ここで何の成果もなくテコに戻るのは嫌だな。

「ようこそ、エイトへ!お話は伺っております。おい、この方を領主館までご案内しろ!」

「はっ!」

 心配は杞憂に終わったようだけど、組合員登録証を見せた直後に有無を言わさずに馬車に乗せられ領主館まで案内されることになりました。強制イベントですか、そうですか……とりあえず心の準備くらいさせてください。

───────────────
お読みいただきありがとうございます。

こうして害悪プレイヤーは淘汰されていくのです()
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