VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重

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本編

第74話 マヨイと人工魔石

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⚫︎マヨイ

「まずは抗呪薬と抗毒薬の作成だな」

 昨日ウーバーヒール・ポーションを作っている途中で発生した端材──癒草の鍵と癒草の葉脈──を使った薬の作成から始める。これから取り掛かった理由は単にアイテム欄を圧迫しているからだ。

「あ、でも生活魔法まだ覚えてないや……組合で買えるんだっけ」

 そんなわけで受付に戻って生活魔法[乾燥]と生活魔法[灯火]のスクロールをそれぞれ100Rで購入した。スクロールというのは対応したスキルを習得可能状態にするアイテムだ。受付で質問するまで知らなかったけれど、組合では結構な種類のスクロールが売られていた。値段も習得可能になるスキルによって違う。アクティブスキルよりパッシブスキルの方が高い傾向にあった。その中でも1番高価だったのは錬金術のスクロールで、その額は驚愕の700万Rだ。
 加工施設に戻ってから錬金術指南書を読み返したけれど、スクロールを作る方法は錬金術指南書に書かれていなかった。おそらくNPCなどの特殊な方法でしか作れないんだろう。

「錬金術の性能やっぱおかしいよ……」

 端材をそれぞれ錬金術で加工したものを火であぶってから生活魔法で乾燥させ、それを粉状になるまで粉砕したものを魔力水に溶かした結果がこれだ。


名前:アンチカース・ポーション
分類:錬金術 薬品 ポーション
効果:抗呪作用の性質を持った特殊ポーション。
   [分類:呪詛]を祓い遠ざける。
状態:新品
分量:150
性質:抗呪作用(4500)

名前:アンチポイズン・ポーション
分類:錬金術 薬品 ポーション
効果:抗毒作用の性質を持った特殊ポーション。
   [分類:毒]を祓い遠ざける。
状態:新品
分量:150
性質:抗毒作用(4500)


 そして錬金術を使う工程を省いて作ったものはこうなった。


名前:抗呪薬
分類:薬品 素材
効果:抗呪作用の性質を持った薬。
   [分類:呪詛]を緩和させる。
状態:新品
分量:150
性質:抗呪作用(30)

名前:抗毒薬
分類:薬品 素材
効果:抗毒作用の性質を持った薬。
   [分類:毒]を緩和させる。
状態:新品
分量:150
性質:抗毒作用(30)


 錬金術を使って完成したものとの差は歴然だ。
 指南書の中に調合スキルは使用者の熟練度(?)によって効能が微増するという注意書きもあったが、この差は"微増"程度ではひっくり返らないだろう。ちなみに抗呪薬と抗毒薬の分類に素材と書いてあるのは上級の薬を作る際に素材として必要になるからだ。それを作るには聖水が必要になる。僕は聖水を持っていないし、手に入れるツテもない。ひとまず上級の薬を作るのは諦めた。

「自動作成ほんと楽だな……」

 わざわざ効果の低いものをストックしておく気にはなれないので僕はアンチカース・ポーションとアンチポイズン・ポーションを量産することにした。自動作成に頼ったため性質は4500から4050へと低下してしまったが、こればかりは諦めるしかないだろう。

「次は人工魔石だな」

 残った端材を全て使い切った僕はアイテム欄から水晶を取り出して指南書通りに加工を始めた。加工とは言っても水晶に錬金術を使用して不純物を取り除いたものを加工施設に備え付けられた研磨機で加工し、それにポーション類と同じように魔力を込めるだけの作業だ。
 指南書によれば研磨機で加工する工程は省いても問題ないらしい。しかし、原石のままでは見栄えがよくない気がするので八面体にしてみた。まぁ……正八面体というには少し歪な気がするけれど、素人が作ったにしては上出来な部類だろう。


名前:マヨイの魔石
分類:素材 人工魔石
効果:錬金術士によって魔力が込められた水晶。
   様々な利用方が存在している。
状態:美品
性質:無属性魔力(1152)


「これは他人に見せにくいな……」

 何とか名前だけでも変えられないかと色々と弄っていると、自作したアイテムは名前と効果を編集できるようだ。とりあえずアイテム名を人工魔石に変更、効果から"錬金術士によって"の部分を削除する。


名前:人工魔石
分類:素材 人工魔石
効果:魔力が込められた水晶。
   様々な利用方が存在している。
状態:美品
性質:無属性魔力(1152)


 これなら他人に売っても大丈夫だろう。ちなみに錬金術によって不純物を取り除く工程を挟まなければ魔力を込める段階で水晶は砕けてしまう。希少な宝石を使えば砕けないらしいけれど、それも錬金術で加工した方がより多くの魔力を込められるそうだ。
 ちなみに性質は魔力を込めた本人の持っている属性を付与できるらしいが、僕は属性に関するスキルは持っていないので無属性しか作れない。

「自動作成めっちゃ時間掛かるな、これ……」

 自動作成した人工魔石は綺麗な正八面体をしていた。
 自分で加工したものと比べると差は一目瞭然で少し悔しいけれど、僕は現実で石を削ったのは中学の美術の授業くらいしか経験がないので仕方ないだろう。
 しかし、人工魔石を1個作るのに20分近く掛かるのは釈然としない。手作業でも慣れれば20分より短い時間で作ることができる気がするのだ。

「いっか、同時に別の作業できることを考えたら自動作成の方が効率いいんだし」

 自動作成で設定できるのは1種類だけれど、自動作成をしている傍らで別のアイテムを作成することは出来る……はずだ。僕は人工魔石を自動作成に設定しながら、手作業でも人工魔石を作ることで計36個の人工魔石を作ることが出来た。

[警告:連続接続時間が8時間になりました。ただちにログアウトを実行してください]

「あ」

 視界の端に60のカウントダウンが表示された。おそらく0になった瞬間に強制ログアウトが実行されてしまうのだろう。強制ログアウトが実行された場合、出しっぱなしにしていたアイテムは消滅してしまう気がする。
 僕は出しっぱなしにしていたものを慌てて片付けてログアウトした。

「やらかしたなぁ……」

 僕が現実に戻ってくると時計の短針は11を回っていた。大人しく夕飯を食べて風呂に入って寝よう。

───────────────
お読みいただきありがとうございます。

蒼の使徒戦のラストとログアウトに関する警告文が異なるのは仕様です。
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