79 / 228
本編
第64話 マヨイは腕を掴む。
しおりを挟む⚫︎マヨイ
岩石地帯から北に10分ほど全力で進んだ。
周囲を見渡すとプレイヤーの姿はない。
「ふぅ……ここまで来れば大丈夫かな」
念のため探索スキルを使用すると僕から5mほど離れた場所に赤いマーカーがあった。それ以外にも無数の赤いマーカーが表示されている。しかし、マーカーが表示された場所にあるのは腰ほどの高さのある岩だけだ。
「また擬態かな。魔力弾」
試しに少し大きめの球体に形状変化させた魔力弾を赤いマーカーが表示された場所にある岩へと放つ。岩は魔力弾によって粉砕されたが、その直後に粉砕された岩は忽然と姿を消した。アイテム欄を確認すると"ゴーレムの核"と"ゴーレムの外殻"というアイテムが増えていた。粉砕された岩が消えたのは岩がモンスターの擬態だったからだろう。
名前:ゴーレムの核
分類:素材
効果:自然発生したゴーレムの核
状態:破損(小破)
名前:ゴーレムの外殻
分類:素材
効果:自然発生したゴーレムの外殻
状態:破損(大破)
自前のゴーレム軍団とか作れたら面白いかもしれないと思ったが、テイムで仲間に出来るモンスターの数には簡単に増やせないのを思い出した。掲示板に書いてあった内容にはテイムしたモンスターとの親密度が影響しているらしい。
「金策するにしても数は欲しいし徹底的に狩るか」
こうして僕が近隣に点在しているゴーレムを全滅させる勢いでゴーレムを狩り始めてから体感で3時間近く経った頃、アイテム欄の容量が上限に届いてしまったためテコに戻ることにした。
ちなみにアイテム欄は全部で50枠ある。それぞれのアイテム毎に上限は決まっているが、1つの枠内にまとめることができるので不便さは今のところない。問題があるとすればポーションは同じ名前であっても回復量が違うと別枠に保管しなければならないことだ。このことからも多少の品質劣化があるとはいえ、自動作成で作られたポーションは大量に持ち運ぶことが出来る点において手動作成したポーションよりも使いやすいと言える。
僕はアイテムを組合で売却する前にクレアちゃんにいくつか素材を渡そうと考えてメニューからギルドチャットを開いた。
『テコに戻ってきたよ。クレアちゃんいるかな?』
『はい、います』
『ゴーレムとか宝石類とか色々と手に入れたから渡したいんだけど、いまどこにいる?』
『ちょうどテコの組合にいます。アカちゃんも一緒です』
『分かった。今から向かうね』
…………………………………
……………………………
………………………
僕が組合のエントランスに入ると暁とクレアちゃんが2人の男性プレイヤーと話していた。
「だーかーらー、人を待ってるっていってるじゃない!」
「いやいや、そんなこと言っても誤魔化されないから」
「そうそう、それに俺たちは親切で言ってやってんだぜ?」
どうやらナンパ、というかパーティの勧誘のようだ。
MMOでは珍しくない光景だけど、原則として性別を偽れないVRMMOは旧来のMMOより出会い厨や直結厨は湧きやすい。そのためハラスメントに関しては随分と判定がシビアらしい。
「お待たせ」
「兄さん、おっそい!!おかげで変なのに絡まれちゃったじゃん」
「いや、変なのって……パーティの勧誘じゃないの?」
「おい、てめぇ、俺らが話してんだろ!割り込むなよ」
「あー、確かに変なのだね」
「でしょ?」
「んだと、てめぇ!」
この手のプレイヤーはコミュケーション能力に難がある場合が多い。そもそもコミュニケーション能力に秀でていれば、わざわざゲームでナンパするのではなく現実でナンパするだけで足りるのだ。
コミュケーション能力が欠落している猿未満の相手はするだけなので無視することにした。
「加工施設は借りてある?」
「待てよ、おい!」
「俺らが先に話してただろうが!」
「え、えっと…………まだです」
「なら借りてこようか。一緒に行く?」
「はい!」
「え、兄さんガン無視すんの?」
「時間の無駄。お前が録画してくれてるみたいだし、あとで通報に動画添付するだけでいいでしよ」
「あ、なら今やっちゃう」
録画や通報という単語に敏感に反応した出会い厨(もしくは直結厨)の2人組が更に怒鳴り散らし始めた。この手のナンパに絡まれるのに慣れている暁はどうでもいいが、クレアちゃんは少し怖がっている様子だ。
「てめっ、離せ!」
「常時痛覚オフにしてるのか」
ただ出会い厨の1人がメニューを開いて通報しようとした暁の腕を掴もうと伸ばした時、思わずその腕を掴んでしまった。それなりに力を入れているけれど痛覚設定をオフにしているらしく、なんの痛痒も感じていないようだ。
僕や藍香の持論だけど、常に痛覚設定をオフにしているプレイヤーは危機感が欠落しやすい傾向にある。そういったプレイヤーは戦闘で優勢のうちは問題ないけれど、想定外の事態や劣勢になると途端にパニックを起こして使えなくなるのだ。ちなみに暁とクレアちゃんは痛覚設定をオンにしてプレイしているし、僕と藍香は言わずもがなだ。
「受理されたみたい」
「消えちゃいました」
「あれ、警告文が出るだけじゃなかったの?」
藍香から聞いた話だけどハラスメント行為を受けて通報すると相手に警告文が届くらしい。しかし、彼らはプレイヤーがログアウトした時のように光の粒子となって消えてしまった。
「もう警告文が届いてたんじゃない?」
「警告文無視してナンパしてたのか……」
───────────────
お読みいただきありがとうございます。
話がなかなか進みませんね。
テンプレのナンパ回を書いてみたい衝動に負けた私のせいですが次話でゲーム3日目の終わりまで進むといいなぁ……
31
お気に入りに追加
2,269
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?
Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」
私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。
さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。
ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます
海夏世もみじ
ファンタジー
月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。
だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。
彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~
m-kawa
ファンタジー
第5回集英社Web小説大賞、奨励賞受賞。書籍化します。
書籍化に伴い、この作品はアルファポリスから削除予定となりますので、あしからずご承知おきください。
【第七部開始】
召喚魔法陣から逃げようとした主人公は、逃げ遅れたせいで召喚に遅刻してしまう。だが他のクラスメイトと違って任意のスキルを選べるようになっていた。しかし選んだ成長率マシマシスキルは自分の得意なものが現れないスキルだったのか、召喚先の国で無職判定をされて追い出されてしまう。
一方で微妙な職業が出てしまい、肩身の狭い思いをしていたヒロインも追い出される主人公の後を追って飛び出してしまった。
だがしかし、追い出された先は平民が住まう街などではなく、危険な魔物が住まう森の中だった!
突如始まったサバイバルに、成長率マシマシスキルは果たして役に立つのか!
魔物に襲われた主人公の運命やいかに!
※小説家になろう様とカクヨム様にも投稿しています。
※カクヨムにて先行公開中

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる