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本編
第60話 マヨイは確認する。
しおりを挟む⚫︎マヨイ
「ギルドから確認しようか」
「そうね」
とは言ってもギルドを結成することによる直前的なメリットは今のところない。ギルドの機能の大半がギルド名義の拠点を持っていることが前提となっているからだ。
「やっぱり少しはメンバー増やした方がいいかな」
「…………そうね。ただ配信に理解のあるメンバーがいいわね」
「僕としては誘いたい人が1人いるんだけど、配信については聞いたことないし後で確認とってみるよ」
「誰?」
「クレアちゃん。ほら、これ見てよ」
そう言って昨日作ってもらった装備のステータスを藍香に見せる。すると藍香も事の重要性に気がついたのかフレンドコールに切り替えてくれた。
『強すぎじゃない?』
『こんなの簡単に作れる子、知り合ってて誘わないのは馬鹿だと思うんだよね』
『今はログインしてる?』
そう言われてフレンドリストを確認する。
残念ながらクレアちゃんはログインしていない。
『いや、ログアウト中。誘っていいかな?』
『構わないわよ。なんならオリオンも誘う?』
『オリオンは流星群でギルド結成するだろうし無理でしょ』
『…………そうね』
なんか藍香がまた変なこと考えている気がする。
『あとはクレアちゃんを誘うついでに暁を誘わないとな。たぶん、暁を誘わないとクレアちゃんは来てくれないだろうし』
『なら暁には私から声を掛けておくわ』
実兄としたは少し複雑な心境だ。単に性格の相性的なものなのかは分からないけれど、暁は僕よりも藍香の方に懐いている。
『次はイベントか。モンスターを狩ればいいだけ?』
『モンスターの討伐とエリア内の探索ね。イベント期間中はアルテラ北部草原地帯がインスタンス化して……合計スコアを競うランキングがあるのね。パーティとギルドで別々のランキングみたいよ』
『上位入賞の報酬の目玉アイテムはギルドエリア設置権や特殊なスキルを習得できる技能宝珠みたいだし、狙えるようなら狙ってみようか』
『そうね。特にギルドエリア設置権が貰えるギルドランキングトップ10には入りたいわね』
ギルドエリア設置権はギルドの仲間や許可されたプレイヤー以外は原則として立ち入ることの出来ない場所を作れるアイテムだ。街の外でも問題ないようなので景色の良い場所や秘境みたいな場所に設置してみたい。
『それと低確率でモンスターから限定アイテムがドロップするのね……』
『低確率って書くくらいだし数字的に0.1%とか?』
『物欲センサーは勘弁して欲しいわ……』
この手のイベント限定アイテムというのは比較的需要の高いものであることが多い。なぜならプレイヤーに需要のないものだとプレイヤーのモチベーションが上がらずゲームの寿命を縮める原因になるからだ。
今回のイベントでは武器と防具は各3種、更に素材アイテムが3種類にシークレットが1種類と計10種もイベント限定アイテムがある。武器や防具はともかく素材アイテムは大量に確保しておきたいな。
ちなみに物欲センサーとはMMOで頻繁に発生する欲しいものに限って手に入らないという現象を引き起こす原因と目されているものだ。実際には存在しないはずのオカルトチックな存在なのだけど、その存在を確信しているゲーマーは多い。
『交換とかは出来るだろうし、今のうちにお金や珍しいものを集めとこうか』
『それがいいわね。イベントが明後日からならボス素材を集めるだけでも十分に交換材料になるはずよ』
確かに供給の少ないボス素材なら欲しがるプレイヤーは多いはずだ。特にアルテラ大森林の猪、北部草原地帯の狼のボス素材は僕と藍香とクレアちゃんしか手に入れていない。そろそろアルテラ大森林の猪に関しては倒されてしまいそうだけどね。
『あとは不具合とスキルの修正ね……』
『それについては仕方ないよ』
不具合の修正はどれも心当たりのあるものばかりだった。
まずは僕とチャラ王とのPvPで発生した拷問じみた現象に関して。これは本当なら四肢や急所の切断時には武器の制限とは関係なく出血や部位損壊によるダメージが発生するはずだったらしい。なので本来の仕様に戻すそうだ。
次にフィールドでの対人攻撃についてだ。これはデフォルトの設定をオフに変更するそうだ。僕が何度も利用している流れ弾や余波を利用したPKについては犯罪者の判定が下されるように変更されるようだ。
『魔力弾とシールドバッシュの一部パッシブスキルの補正値修正ね』
『盾以外でも発動できてたのか……』
魔力弾の現在の威力は知力と距離によって増減するのだけど、どうやら距離による威力の減衰が発生していないケースがあったようだ。修正後は最大有効射程距離が精神のステータス値に比例するようになり、その距離を超えると威力が大きく減衰するようになるらしい。
シールドバッシュは今の仕様では籠手などを使って発動出来ていたようだ。それを盾でのみ発動可能に修正するらしい。その代わり威力は微増するようなので下方修正と同時に強化もされる感じだ。
パッシブスキルに関しては◯◯術と名のついたスキルの補正値を上方修正するらしい。理由は取得率の低さと削除率の高さらしい。既に削除したプレイヤーは習得可能スキルのリストに再度表示されるようだ。
『これからどうする?』
『私はボス……というか変異種狩りするつもりだけど、真宵は?』
『そうだね……素材を集めておきたいし、僕も変異種狩りかな』
僕はテコでの散策を諦めてボス狩りをすることにした。
ちょうど組合で変異種リストを貰ったばかりだ。リストの下のモンスターは倒せることが分かっている。藍香と話し合った結果、僕はテコ近郊で遭遇できるモンスターから優先して倒すことになった。藍香は倒し慣れた猪の変異種を周回するらしい。
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