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本編
第57話 マヨイは検証する。
しおりを挟む⚫︎マヨイ
「うん、これを提出して貰えれば功績は十分だよ」
僕は森大猪と草原白蛇と草原狼王の魔石を各1個、藍香は森大猪の魔石を4個と草原狼王の魔石を1個を受付の男性に提出すると、この場でギルド設立に必要な条件の1つを満たすことが出来た。
「それと提出してくれればマヨイさんには11000R、アイさんには2500Rで買い取るけど、今すぐ提出するかい?」
「森大猪や草原狼王の魔石の買取が500Rで草原大蛇の魔石が10000Rと20倍もしているのは何故ですか?」
「ん?……あぁ!これは草原大蛇じゃなくて草原白蛇の魔石だよ。草原大蛇の魔石なら買取は500Rさ。草原白蛇はアルテラ北部草原地帯に出現する魔物の中でも特にやっかいなモンスターなんだ。基本的に単独行動している者しか襲わないし、いざ戦闘ともなると麻痺と石化と回復阻害を与えてくる邪眼、石化と猛毒を与えてくる牙、そして魔術まで使ってくるんだから堪ったもんじゃない。極め付けに瀕死になる一歩手前くらいで逃げるんだよ!?」
ボスだからといって体躯が大きいとは限らない、ということでいいのだろうか。僕には麻痺や石化などの状態異常は効かないので相性は悪くない、ということ以前に適当にばら撒いた魔力弾で倒してしまったので強さ的には森大猪や草原狼王と同列か少し上くらいなんだと思う。貰ったリストに再度目を通すと上から6番目に草原白蛇の名前が載っていた。その更に上は名前からして強そうなものが並んでいる。
「これで功績は足りたとして……あと何をすれば信用して貰えるのかしら」
「組合の依頼達成数……と言いたいところなんだが、それに加えて組合への寄付でも信用点は稼ぐことができる。ただし寄付は金ではなく物品しか受け取らないし、需要の低いものでは逆に信用点を失う諸刃の剣だ。大抵のギルドは設立メンバーで依頼を手分けしてこなしているね」
物納しか認めないというのは賄賂とかの対策だろうか。
いや、生産系や加工系のプレイヤーがギルドを作れるようにするバランス調整かもしれない。彼らなら自作したものを納めれば問題なく信用点を稼げるだろう。
「木材の納品はどうかしら?」
「木材なら大歓迎だ。アルテラ大森林の木は普通に伐採しようと思っても無理だからな。森が近いにも関わらず木材不足に悩まされているんだよ」
「普通は無理?」
「アルテラ大森林に群生しているゼパースっていう木は水分を含むと硬くなる特性がある優れた木材なんだけど、そのせいで生木は物理的な方法で傷付けるのが難しいんだ。それでアルテラ大森林にはゼパース以外にも、スタンという伐採が簡単で加工のしやすい木があるんだけど、それを買い占めている集団がいるようでね。ほとほと困っているんだ」
シブンギさんたちが買い占めていたと組合に特定されたら犯罪者認定されるんじゃなかろうか。NPCから同じプレイヤーということで彼らと一緒くたにされる可能性もある。それを避けるためにも木材を供給するべきだろう。
「ありがとうございます。とりあえず木材を探してきますね」
こうして僕らは再びアルテラ大森林に向かうことにした。
既にギルドの入り口付近で口論していた"流星群"のメンバーと木材を必要とするプレイヤーたちの姿はなく、スムーズに組合から出ることが出来た。たぶん、藍香が木材を売り出したことで一時の需要が満たされたからだろう。
「そういえば僕が切り倒した木って全部ゼパースだったよね?」
「そういえばそうね。スタンって木材は見てないわ」
「"流星群"が買い占めてたのはスタンって木材らしいし、そっちを供給した方が信用度あがるかな」
「……かもしれないわね。伐採した木は0時になると復活するみたいだし、森を禿げさせてもいいんじゃないかしら?」
「そこら辺はゲームなんだよね」
いずれ僕と同じことが出来る人が増えれば木材は供給過多になると思う。たぶん値崩れも起こるだろうし、木材を物納して組合からの信用度を稼げるのは今だけだろう。
「3日目ってこともあってかプレイヤーも増えたわね」
「だね。位階は……13~15ってとこか。ならチャラ王は割と強い部類だったんだなぁ……」
「強いどころか一応は最前線プレイヤーよ?」
「へぇ……」
僕らはテコの南門からアルテラ北部草原に出てすぐにアルテラ大森林へと向かった。組合を出てから何度かプレイヤーとすれ違ったけれど、その中の1パーティが僕らの跡を尾けてきている。テコを目前に引き返して僕らと同じ進路を取っていることから何らかの目的があるんだろう。
「後ろのパーティ、尾けてきてるわよね?」
「そうだね。で、どうする?」
「PKなら襲ってくるのを待てばいいけど、木材を横取りされでもしたら癪ね」
僕らの取れる手段は多くない。彼らを無視してもいいし、また事故に見せ掛けてPKしてもいい。こちらから話し掛けて相手から手を出させる……のは少し面倒か。そのくらいだ。
「無視すれば木材を横取りされる可能性がある以上、彼らには退場して貰うか」
「PKするの?」
「あくまで事故死して貰うだけさ」
僕らを中心にして周囲に魔力弾を放つ。今回は木材を手に入れるという目的に沿って形状を薄刃にした。
念のために探索スキルを使う。周囲に僕ら以外のプレイヤーはいないようだ。これで僕が犯罪者プレイヤーにならない理由もはっきりした。予想通り事故死なら犯罪者扱いにならないようだ。
───────────────
お読みいただきありがとうございます。
マヨイが犯罪者プレイヤーにならなかったのはプレイヤーを狙った攻撃ではなかったからです。この時点での仕様ではプレイヤー個人を的にした攻撃以外は犯罪者プレイヤーになりません。
草原での大量無差別PKは個人ではなく、そのプレイヤーのいるエリアをまとめて攻撃したため犯罪者になりませんでした。
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