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本編

第55話 マヨイは量産する。

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⚫︎マヨイ

名前:ウーバーヒール・ポーション
分類:薬品 錬金術 ポーション
効果:錬金術によって体力回復の性質を強化されたポーション。
   体力を最大値を超えて回復する。
   服用時[免疫:ポーション]の状態異常を受ける。
状態:新品
分量:139
性質:体力回復(7800)


「ん?んんん?んんんん????」

 ツッコミどころが多すぎる代物になってしまった。
 とりあえず体力を最大値を超えて回復は強い。体力の回復量が7800は今のプレイヤーの平均帯からすれば過剰な数値だ。それが無駄にならないとなれば欲しがるプレイヤーは多いだろう。
 回復量はおそらく[原液の回復量×魔力水の回復量]だ。なんで足し算ではなく掛け算なのかは分からないけれど、そもそも錬金術というものからしてファンタジーなので今更だ。そういうものだと納得するしかないだろう。

「免疫の状態異常の検証とかしてみたいけど状態異常効かないんだよなぁ……」

 これの治験(?)を掲示板で依頼することを考えた。間違いなく騒ぎになるだろうけど、そもそも錬金術さえ使えれば誰にでも作れるものだ。錬金術の習得方法と一緒に公開してしまえば問題ないだろう。

「でも同じ品質で比べないと意味ないし……あ」

 そのため(?)の自動作成か。手間を省略できる以外にも同じ品質のものを作り出せるというのは物を売る際の大きなメリットだ。品質がバラバラでは買い手が混乱するだろうし、品質の悪いものが売れ残れば損してしまう。いや、その場合は売値を変えればいいのか。

「とりあえず原液の量産だな」

 そうして自動作成した原液に錬金術を使用する。
 回復阻害を体力回復に変質させ、体力回復の効果も強化する。
 そうして出来たヒール・ポーションの原液はこれだ。


名前:ヒール・ポーション(原液)
分類:薬品 ポーション
効果:ヒール・ポーションの原液
   希釈することでハイヒール・ポーションになる。
   限界まで魔力が込められている。
状態:原液
分量:50
性質:体力回復(500)


 試しに全て手作業で作った原液に錬金術を使って同様の処理をすると体力回復の最大値を550にすることができた。やはり手作業の方が性質は高くなるようだ。これに前回と同じ品質の魔力水を注ぐと予想通りのウーバーヒール・ポーションを作ることが出来た。


名前:ウーバーヒール・ポーション
分類:薬品 錬金術 ポーション
効果:錬金術によって体力回復の性質を強化されたポーション。
   体力を最大値を超えて回復する。
   服用時[免疫:ポーション]の状態異常を受ける。
状態:新品
分量:150
性質:体力回復(100000)


「希釈ってなんだっけ……?」

 性質を分量で割ったものを濃度とするなら、間違いなく濃度は上がっている。それでも性能が高いのは悪いことじゃないだろう。
 何にしても量産化の目処は立ったのだし、後で癒草と瓶を買い足して量産しよう。

「っと、忘れないうちに魔力を体外に出す方法だけは拡散しないと」

 これでゴミスキルだと言われている調薬スキルにも多少は陽が当たるようになるだろう。調薬スキルを持て余していたプレイヤーは想像以上にいたようで掲示板はお祭り騒ぎになってしまった。
 この状態でウーバーヒール・ポーションの治験や錬金術に関する情報について書き込もうとしていた僕の手は"流星群"に所属しているプレイヤーが掲示板に書き込んでいるのを見て止まった。
 これに関しては、先に藍香に連絡して"流星群"に対する僕らのスタンスをはっきりさせてからの方がいいかもしれない。そう考えた僕は、藍香にフレンドコールで連絡を取ることにした。

『藍香、ちょっと確認したいことがあるんだけど時間は大丈夫かな?』

『そろそろログアウトしようと思ってたところだから大丈夫よ。どうしたの?』

 調理スキルを習得した時に錬金術スキルを自動習得したこと、その錬金術スキルを使って作ったポーションの性能がバランス崩壊レベルの性能だったこと。そのポーションを飲むと状態異常になるけれど、自分は状態異常にために検証ができないことを伝えた。

『それなら私がモルモットになるわよ』

『助かるよ。そういえば"流星群"と加工系プレイヤーの揉め事ってどうなった?』

『なんか木材を買い占めた理由に私との取引を引き合いに出してるみたいなのよね。順番が前後している時点で語るに落ちてるんだけど、ここまでコケにされて黙ってるのは私たちの柄じゃないでしょ?』

『はぁ……何を考えてるんだろうね。錬金術やポーションの情報を流して悪用されるのも嫌だし、このまま1週間くらい様子見した方がよさそうだね』

『もし"流星群"がポーションで稼ごうとしたら──』

『こっちのポーションを同じ値段で販売して邪魔してやればいいってことでしょ。……あ、それならアイにも渡しておきたいんだけどテコの組合に来れる?』

『今は草原にいるから1時間くらいで着くわ』

『分かった。組合で素材を買って量産しておくよ』

 フレンドコールを切って組合のエントランスに向かう。
 それにしても"流星群"の人たちは僕らとの取引を買い占めの理由にしたのは残念としか言えない。僕としては買い占めなどの強引な手段を使ってまで早く資金を集めようとする気持ちも理解できるけど、そうして稼いだ100万Rを僕らが素直に受け取ると思ってるんだろうか。もし用意できても僕らが受け取らなければ契約は達成されないというのに……


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お読みいただきありがとうございます。
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