VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重

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本編

第22話 マヨイは視聴する。

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「よかったら付き合ってください!」

「クレア!?」

 まさかゲーム内で告白されるとは思わなかった。
 想定外の事態に僕だけでなく暁も慌てている。

「え、あ、ち、違うの、え、えっと……」

 そして何かを言おうとしたクレアちゃんは消えてしまった。クレアちゃんも何故か混乱していたし、おそらく心拍数の異常が原因で強制的にログアウトさせられたんだろう。

「お兄ちゃん!クレアが消えちゃった!」

「落ち着け。たぶん心拍数の異常で強制的にログアウトさせられただけだ。一旦ログアウトして連絡してこい」

「クレア、大丈夫だよね!?」

「それを確かめるためにもログアウトしてこい。ここで待っててやるから」

 こうして僕は自分が使っているわけでもない作業場に1人で残ることになった。ゲームのシステム的に大丈夫なのだろうか。





 暁がログアウトしてから手持ち無沙汰になった僕は、北の草原で無差別PKした際に手に入れたアイテムや素材などの確認をしている。プレイヤーは他のプレイヤーから殺された場合、所持金の半分とアイテム欄からランダムに1種類をドロップする仕組みだ。

(狼や蛇の素材は要らないけどお金は助かるね)

 僕はモンスターの素材やお金を返すつもりはない。
 ドロップした素材については組合に売却すればいいだろう。犯罪者プレイヤー扱いにはなっていないのにPKは成立しているという相手側からすれば理不尽に思うだろうが、そこは仕様らしいので諦めて貰うしかない。

「ただいまー」

「ご、ご迷惑をお掛けしました……えっと、レベリングをしたいので付き合って貰えませんか!」

 単に言葉が足りなかっただけだったようだ。
 考えがまとまらなかったので助かった。

「なるほど、いいよ。どこに行こうか」

「北の草原は兄さんがやらかしたから西の森でいいんじゃない?兄さんなら森の先にあるフィールドに行っても問題なさそうだし」

「やらかした?」

「聞いてよ、クレア、兄さんっばさ──」

 クレアちゃんが僕の装備を作っている間にあった出来事を暁が説明する。どうせ止めたとしても暁のことだから現実リアルで説明するだろう。それなら目の前で説明させた方が加飾がないか見張れるという意味でまだマシだ。

「そのミライさんって方、配信してたんですよね?」

「たぶんね。生配信だったかは分からないけど、彼女のパーソナルのところにカメラのマークがあったから少なくとも録画はしてたと思うよ」

「兄さん、アーカイブにあったよ。ほら、日刊ランキング1位のやつ」

 その動画は北の草原で出会った彼女らがアルテラ大森林でPK紛いをするところから始まった。てっきり姫のようなチヤホヤされているだけのプレイヤーだと思っていたけど、それなりに立ち回りは悪くない。

「あー、エリアボス狙いだったけど誰かに倒されちゃったのが分かったから北の草原に移動したんだ……」

 そう言って暁は僕の方をチラ見する。
 いや、さすがに僕のせいではないでしょ!?

「あ、お兄さんとアカちゃん!」

「ってことは、やっぱり嘘だったんだ」

 あの狩場を奪われた云々か。動画のコメントを見る限りは昨日同じ場所でレベリングをしていたようなので、奪われたという彼らの発言も全く根拠がないわけではないらしい。
 とはいえ、フィールドは彼らのものではない。それに占有したいのならばメンバーを残しておくべきだ。僕と暁に難癖をつけて狩場を奪う行為に正当性はない。
 動画のコメント欄には僕のことを指して「弱腰陰キャ」だとか「チキン」だとか書き込んでいる人が多かった。確かに少し動画の中の僕は腰が引けていてカッコ悪く見える。

「兄さん、めっちゃ馬鹿にされてんじゃん」

「言わせておけばいいよ」

「ダメだと思います。わたし、この人たち嫌いです」

 暁もクレアちゃんも動画のコメントに怒っているようだ。僕のことで怒ってくれているのが分かるせいで少しこそばゆい。
 そして動画は僕の魔力弾が彼女らを襲った部分に差し掛かる。

『何なのよ、これぇぇぇ!?』

「ははは!ざまぁ!ナイス兄さん!!」

「え、これ、お兄さんの攻撃なんですか?」

「まぁ……そうだね」

「あ、兄さん、ステータス見せてくれるって約束!」

 そんな約束はしていないと思うなぁ……
 少なくとも言質げんちは取られていないはずだ。

「お兄さん」

「ん、何かな?」

「お兄さんのステータス、わたし、興味があります!」

 ちょっと照れたような仕草で僕に迫るクレアちゃん。
 たぶん、千◯田えるのモノマネだろうか、少し身長と髪の長さは足りないが髪色と髪型はそっくりなので似ていると思う。ただ心拍数が反映されているのかは分からないがVRだというのにアバターの顔が真っ赤だ。恥ずかしいならやめとけばいいのに。

「はぁ……仕方ないなぁ……ただ誰にも教えるなよ?」

「はい、お墓まで持ってきます!」

「兄さん、チョロ過ぎない?あとクレア、それは重い」

「僕はインディオと白人の混血児じゃないぞ?」

「アカちゃん!お兄さん、わたし、そんなに生理重くないですから!」

「ツッコミが追いつかない!藍香お姉ちゃん助けて!?」

 もちろん、僕は分かってボケている。クレアちゃんの生理云々は反応に困るから聞かなかったことにしよう。彼女は疲れてるんだ。
 それにしても、こうして暁を揶揄からかうのは久しぶりな気がする。ただ、やりすぎてねられても現実に戻った後で面倒なので、今回はこれくらいでやめておこう。

 ちなみにチョロcholoとは、中南米の中でも主にスペイン語圏の国で使われているインディオと白人との混血児のことだ。厳密には混血児の中でもインディオの特徴が色濃く出ている男性のことを指すらしい。

 かつて幼馴染の藍香と配信活動をしていた頃に知り合った日系ポルトガル人の方が『日本語で外国人から差別発言だと勘違いされやすい言葉100選』の1つとして教えてくれた。

「というわけで、はい、僕のステータス」

 僕は話題を逸らすために仕方なく2人にステータスを見せた。

───────────────
お読みいただきありがとうございます。

次回はステータス回です。
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