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本編
第14話 マヨイと情報爆弾。
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土日ということで連日投稿です。
───────────────
(さて、これからどうしようか)
今の威力の魔力弾をそのまま使い続けるのは危険だ。
何せここはオープンフィールドだ。もし他のプレイヤーに魔力弾が当たってしまった場合、意図的ではなくともPKしてしまう可能性が高い。
「スキルか装備で何か手加減できるようなものがあればいいんだけど……」
このゲームのスキルの習得方法には『特定の条件を満たすことで自動的に習得する方法』と『メニューから確認できるスキルの習得可能リストから選択して習得する方法』の大きく分けて2つの方法がある。
前者はプレイヤーの行動によってリストに表示されるスキルの種類が増えていくので、後者より狙いのスキルを習得しやすいというメリットがある。ただし、この方法で習得したスキルの数には上限がある。獲得している素質と覚醒1種類につき2枠、位階5毎に1枠増えるようなので僕の場合は15枠ある計算だ。
後者は覚醒を獲得した時に習得した"灰の神威"などがそれにあたる。前者と比較すると習得できる条件が達成しにくいのが難点ではあるけれど、その代わり前者のように習得できる数に制限はない。
ちなみに初期スキルは後者になるようだ。
「お、これ良さそう」
習得可能リストから見つけたのは"攻撃威力調整"というスキルだ。攻撃の威力と消費コストを1%~200%の範囲で調整できるというスキルらしい。リストに表示される条件は攻撃対象の最大体力値の2倍以上のダメージを与えることだった。おそらく森猪を倒した時に条件を満たしたんだと思う。
(探索)
さっそく習得して使用感を試すため探索のスキルを使って敵を探すことにしたが近くに敵はいないようだ。先ほどの戦闘の影響で逃げ出してしまったのだろうか。
興が削がれた僕はクエストの達成報告をするために一度アルテラの組合まで戻ることにした。
◆
「人多すぎやしませんかね……」
アルテラの組合にやって来た僕は昨日以上の人だかりに圧倒された。いたるところから喧騒が聴こえてくるのでVRとはいえ人混みに酔ったような感覚を覚える。
そんな僕に後ろから声を掛けてきたプレイヤーがいた。
「もしかして兄さん?」
「はい?」
僕の目がおかしくなったのだろう。
振り返った先にいたプレイヤーが妹に見える。
意味はないけど思わず目を擦って2度見しても目の前のプレイヤーのアバターに変化はない。
「あ、プレイヤー名はアカトキだよ。こっちは友達のクレア、何度か家に来てるし知ってるでしょ?」
「あの、あの、こ、こんにちは!」
紹介された女性プレイヤーのアバターにも見覚えがあった。髪色こそ明るい茶髪になっているものの髪型と容姿(それと体型)は妹の友達である呉朱莉ちゃんそっくりだ。
ここまで付合する部分が多ければ流石に僕も現実逃避するのを諦めざるを得ない。
「え、このゲームやってたの?」
「うん。クラスで買うって子が多かったから」
「わ、わたしはアカちゃんから──────」
クレアちゃんの声が小さくて喧騒に掻き消されてしまったが暁から勧められたということなんだと思う。それにしてもクラスメイトと一緒にゲームというのは羨ましい。
夏休み直前の段階でクラスで孤立していた僕とは大違いだ。なんか考えてて悲しくなってきた。現実なら間違いなく涙が出てるね。
「そ、それと、素質は狩人と加工を選びました。今は自分で作った弓を使ってます。接近戦は苦手だからアカちゃんに助けて貰ってます!」
「私は見ての通りタンク志望だよ。素質は戦士と生産を選んだし、装備も店売りのだけど金属製の防具で揃えたから防御力には少し自信があるよ」
クレアちゃんだけでなく暁もプレイヤー名だけでなく位階や素質まで全て公開設定にしている。なので自己紹介されなくても困らないのだけど、やはり何ができるのか、何をしたいのかを言ってくれるのはありがたい。
もしパーティを組むようなことがあれば参考にしよう。
「僕はマヨイってプレイヤー名でやってる。ここまでパーティを組まずソロで行動してるけど、パーティでなら典型的な後衛アタッカーになると思うよ」
「あれ、兄さん後衛アタッカーなの?」
「別に前衛でアタッカーやっても構わないけど、まだ武器とか手に入れてないからね。大人しく後ろからチマチマ魔力弾を撃つくらいしかできなんだよ」
その魔力弾の威力は1発でエリアボスが消滅するくらいに頭おかしな威力なんだけど、パーティを組むならフレンドリーファイアが怖くて全力では使えない。フレンドリーファイアとはいわゆる同士討ちのことだ。
「え、それ兄さんの趣味と違くない?」
「まぁ……確かにそうだけどさ。まだ武器とか買ってないんだよ」
僕は今までやってきたゲームでは接近戦の出来るスタイルを選んできた。確かに今後ソロでやっていくのなら槍や薙刀のような間合いの長い武器があれば欲しくなることもあるだろうけど、今の僕にそれが必要かと自問すれば「魔力弾でおけ」という回答しか返ってこない。
いくら接近戦が好きな僕でも必要ないと分かっているものにリソースを割くのは装備などに余裕ができてからでいいだろう。
「あ、あの!お兄さん、よかったら、わたしにお兄さんの装備を作らせてください!」
「ク、クレア!?」
そういえばクレアちゃんは弓を自作したと言っていたな。非戦闘系の素質にはノータッチなので分からないが少なくともゲーム開始から2日目で武器を自作しているプレイヤーは希少だろう。
「それは嬉しいけどクレアちゃんにメリットはあるの?」
「えっと、装備を作るだけで経験値が貰えますし、スキルを派生させるには試行錯誤しなきゃいけな「ちょ、ちょっと待って!」い……え?」
「その、スキルの派生って何?」
慌ててメニューからヘルプを開くもスキルの派生に関すは情報はない。さっき見た掲示板にも類似する噂はなかった。
「組合で借りた工房にいるオッドアイの黒いライオンさんから、スキルは試行錯誤することで可能性を発露するって教えて貰ったんです。スキルの可能性が発露することをスキルが派生するって言うんだそうですよ?」
「待ってクレア。それ私も初耳なんだけど」
黒いライオンって何だよとか、そのライオンから教えて貰ったってライオン喋るのかよとか、色々とツッコミどこはある。ただNPCなのは間違いないだろうし、そんな意味ありげなNPCが理由なく嘘をつくとは思えない。つまり、ほぼ間違いなくスキルには派生というものが存在しているというわけだ。
「ちょっと人の少ないところへ移動しようか。アカトキ、何処か心当たりないかな?」
「組合に申請すれば部屋借りれるよ。初回無料で2回目からお金取られるけど」
ちょうど暁がクレアちゃんの話を遮ったので何処か人の少ないところに移動することを提案した。でも、これって傍目から見たら完全に事案寸前だよね。
「え、え、どうしたの?」
「クレア、続きは向こうで聞くから」
「う、うん」
まだセーフだよね?
───────────────
運営「(通報されてないので)まだセーフ」
この辺りから完全にカクヨム版とは違うルートとなりますね。変更点などは割愛しますが、ようやくクレアちゃんが抱えていた情報爆弾(スキルの派生)について出せたのはよかったです。
10/10に累計PTが20万を突破しました。
ここまで読んでいただいた皆さんありがとうございます。
これからもエタらないよう頑張りますので本作をよろしくお願いします。
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(さて、これからどうしようか)
今の威力の魔力弾をそのまま使い続けるのは危険だ。
何せここはオープンフィールドだ。もし他のプレイヤーに魔力弾が当たってしまった場合、意図的ではなくともPKしてしまう可能性が高い。
「スキルか装備で何か手加減できるようなものがあればいいんだけど……」
このゲームのスキルの習得方法には『特定の条件を満たすことで自動的に習得する方法』と『メニューから確認できるスキルの習得可能リストから選択して習得する方法』の大きく分けて2つの方法がある。
前者はプレイヤーの行動によってリストに表示されるスキルの種類が増えていくので、後者より狙いのスキルを習得しやすいというメリットがある。ただし、この方法で習得したスキルの数には上限がある。獲得している素質と覚醒1種類につき2枠、位階5毎に1枠増えるようなので僕の場合は15枠ある計算だ。
後者は覚醒を獲得した時に習得した"灰の神威"などがそれにあたる。前者と比較すると習得できる条件が達成しにくいのが難点ではあるけれど、その代わり前者のように習得できる数に制限はない。
ちなみに初期スキルは後者になるようだ。
「お、これ良さそう」
習得可能リストから見つけたのは"攻撃威力調整"というスキルだ。攻撃の威力と消費コストを1%~200%の範囲で調整できるというスキルらしい。リストに表示される条件は攻撃対象の最大体力値の2倍以上のダメージを与えることだった。おそらく森猪を倒した時に条件を満たしたんだと思う。
(探索)
さっそく習得して使用感を試すため探索のスキルを使って敵を探すことにしたが近くに敵はいないようだ。先ほどの戦闘の影響で逃げ出してしまったのだろうか。
興が削がれた僕はクエストの達成報告をするために一度アルテラの組合まで戻ることにした。
◆
「人多すぎやしませんかね……」
アルテラの組合にやって来た僕は昨日以上の人だかりに圧倒された。いたるところから喧騒が聴こえてくるのでVRとはいえ人混みに酔ったような感覚を覚える。
そんな僕に後ろから声を掛けてきたプレイヤーがいた。
「もしかして兄さん?」
「はい?」
僕の目がおかしくなったのだろう。
振り返った先にいたプレイヤーが妹に見える。
意味はないけど思わず目を擦って2度見しても目の前のプレイヤーのアバターに変化はない。
「あ、プレイヤー名はアカトキだよ。こっちは友達のクレア、何度か家に来てるし知ってるでしょ?」
「あの、あの、こ、こんにちは!」
紹介された女性プレイヤーのアバターにも見覚えがあった。髪色こそ明るい茶髪になっているものの髪型と容姿(それと体型)は妹の友達である呉朱莉ちゃんそっくりだ。
ここまで付合する部分が多ければ流石に僕も現実逃避するのを諦めざるを得ない。
「え、このゲームやってたの?」
「うん。クラスで買うって子が多かったから」
「わ、わたしはアカちゃんから──────」
クレアちゃんの声が小さくて喧騒に掻き消されてしまったが暁から勧められたということなんだと思う。それにしてもクラスメイトと一緒にゲームというのは羨ましい。
夏休み直前の段階でクラスで孤立していた僕とは大違いだ。なんか考えてて悲しくなってきた。現実なら間違いなく涙が出てるね。
「そ、それと、素質は狩人と加工を選びました。今は自分で作った弓を使ってます。接近戦は苦手だからアカちゃんに助けて貰ってます!」
「私は見ての通りタンク志望だよ。素質は戦士と生産を選んだし、装備も店売りのだけど金属製の防具で揃えたから防御力には少し自信があるよ」
クレアちゃんだけでなく暁もプレイヤー名だけでなく位階や素質まで全て公開設定にしている。なので自己紹介されなくても困らないのだけど、やはり何ができるのか、何をしたいのかを言ってくれるのはありがたい。
もしパーティを組むようなことがあれば参考にしよう。
「僕はマヨイってプレイヤー名でやってる。ここまでパーティを組まずソロで行動してるけど、パーティでなら典型的な後衛アタッカーになると思うよ」
「あれ、兄さん後衛アタッカーなの?」
「別に前衛でアタッカーやっても構わないけど、まだ武器とか手に入れてないからね。大人しく後ろからチマチマ魔力弾を撃つくらいしかできなんだよ」
その魔力弾の威力は1発でエリアボスが消滅するくらいに頭おかしな威力なんだけど、パーティを組むならフレンドリーファイアが怖くて全力では使えない。フレンドリーファイアとはいわゆる同士討ちのことだ。
「え、それ兄さんの趣味と違くない?」
「まぁ……確かにそうだけどさ。まだ武器とか買ってないんだよ」
僕は今までやってきたゲームでは接近戦の出来るスタイルを選んできた。確かに今後ソロでやっていくのなら槍や薙刀のような間合いの長い武器があれば欲しくなることもあるだろうけど、今の僕にそれが必要かと自問すれば「魔力弾でおけ」という回答しか返ってこない。
いくら接近戦が好きな僕でも必要ないと分かっているものにリソースを割くのは装備などに余裕ができてからでいいだろう。
「あ、あの!お兄さん、よかったら、わたしにお兄さんの装備を作らせてください!」
「ク、クレア!?」
そういえばクレアちゃんは弓を自作したと言っていたな。非戦闘系の素質にはノータッチなので分からないが少なくともゲーム開始から2日目で武器を自作しているプレイヤーは希少だろう。
「それは嬉しいけどクレアちゃんにメリットはあるの?」
「えっと、装備を作るだけで経験値が貰えますし、スキルを派生させるには試行錯誤しなきゃいけな「ちょ、ちょっと待って!」い……え?」
「その、スキルの派生って何?」
慌ててメニューからヘルプを開くもスキルの派生に関すは情報はない。さっき見た掲示板にも類似する噂はなかった。
「組合で借りた工房にいるオッドアイの黒いライオンさんから、スキルは試行錯誤することで可能性を発露するって教えて貰ったんです。スキルの可能性が発露することをスキルが派生するって言うんだそうですよ?」
「待ってクレア。それ私も初耳なんだけど」
黒いライオンって何だよとか、そのライオンから教えて貰ったってライオン喋るのかよとか、色々とツッコミどこはある。ただNPCなのは間違いないだろうし、そんな意味ありげなNPCが理由なく嘘をつくとは思えない。つまり、ほぼ間違いなくスキルには派生というものが存在しているというわけだ。
「ちょっと人の少ないところへ移動しようか。アカトキ、何処か心当たりないかな?」
「組合に申請すれば部屋借りれるよ。初回無料で2回目からお金取られるけど」
ちょうど暁がクレアちゃんの話を遮ったので何処か人の少ないところに移動することを提案した。でも、これって傍目から見たら完全に事案寸前だよね。
「え、え、どうしたの?」
「クレア、続きは向こうで聞くから」
「う、うん」
まだセーフだよね?
───────────────
運営「(通報されてないので)まだセーフ」
この辺りから完全にカクヨム版とは違うルートとなりますね。変更点などは割愛しますが、ようやくクレアちゃんが抱えていた情報爆弾(スキルの派生)について出せたのはよかったです。
10/10に累計PTが20万を突破しました。
ここまで読んでいただいた皆さんありがとうございます。
これからもエタらないよう頑張りますので本作をよろしくお願いします。
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