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子ども

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「子どもはどうやって生まれるの?」

 年が明けて、だんだん温かくなったきた頃、仕事がひと段落したオルガとウェンディ、ユリウスでおやつを賭けてポーカーをしていた時、ユリウスが落とした爆弾のあまりの衝撃でオルガはひらりとカードを落とした。

「赤ちゃんは世界樹の木に住む鳥が愛する夫婦が住むおうちに運んでくれるんですよ」

 顔色をかえることもなく、ウェンディはいたって普通に答えた。世界樹に住む鳥が運んでくるというのは、この国の昔話にある話で、この国に住む人は子どもの頃によくこの話をされる。
 ウェンディもわかってそれを言っているのだろうな、と思うも、ウェンディの様子があまりにおかしかった。まるで、それを信じている子どものように世界樹に住む鳥について語っている。

「ウェンディ、もしかしてその話を本当に信じているんじゃないだろうな」

 オルガは、まさかなと自問自答しながら、訝しげな視線を向けた。

「当り前じゃないですか!昔からある常識ですよ」

 本日二回目の衝撃に、オルガは項垂れた。


「あいつ、一体どんな暮らしをしていたら、そこまで常識知らずでいられるんだ」
 ジャケットを脱いでいるオルガの隣には、新しい着替えを持つフィリスがいた。

「奥様のことですか?ずっと王宮で暮らしていたみたいですけど」
「しかし、子どもの作り方も知らないってそんなことあるか?」

 オルガの呆れ顔に、フィリスはにやりと不敵な笑みを浮かべた。長年の付き合いゆえに、その顔が良からぬことを考えている顔であるとすぐに分かった。

「じゃあ、旦那様からいっちゃえばいいんですよ。もう結婚して一年が経つんですし、カロラインが子どもの顔が見たいって泣いていましたよ」

 オルガは固まった。確かに、夫婦であるし、その行為自体はおかしいことではない。しかし、オルガとウェンディの間は、それほど親しい関係になれないでいた。
 オルガとウェンディはともに、夫である自覚、妻である自覚はあるし、ユリウスの親である自覚はある。しかし、夫婦の間で愛情表現は全くないし、キスなんてものはしたことがない。順序が違うだろう。

「夫婦円満の秘訣は、愛情を確かめ合うことですよ」

 オルガが女性のことで悩むことは一度もなかったことを知るフィリスは、現実の季節より少し早く春が来たことに喜んだ。
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