正体不明のお兄さんに気に入られて淫紋まで付けられて所有物にされる話

辻河

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「良い子にはご褒美をあげないと」
「ぁ、や……っ♡いらな、い♡♡も、やら♡や、……ッお゛♡♡んぉ゛……ッ!♡♡♡」

 ぐるりと身体を回転させられてうつ伏せの姿勢を取らされたかと思うと、背後から一気に奥まで貫かれた。腰だけを高く上げた姿勢で覆い被さられ容赦なく腰を打ち付けられているのに、内襞は肉棒を喜んで迎え入れるように収縮している。

「こんなに快楽に負けて蕩けた声を出しておいて、嫌なんて嘘はいけませんよ」
「ひ♡ぉ゛……ッ♡♡ん♡ぅ゛、~~~~ッ♡♡」

 ぐぽ、と耳を塞ぎたくなるような音を立てながら最奥の壁が容易くこじ開けられる。こちらの都合など全く考えていないような激しい責めにすら爪先をぴんと伸ばして感じ入ってしまう。

「ん♡ゃ♡……ぁ゛♡も、ゆるして♡♡……~~ッ♡♡おねが、い♡おねがい、しま……ッ♡♡」
「許すも何も、君は悪いことなんてしていないでしょう?ほら、気持ちの良いことだけ考えて」
「や……ッひ♡らめ♡♡いッ♡♡……く♡……ッあ゛♡♡~~~~!♡♡」

 優しく言い聞かせるような口調とは反対に、中を掻き回す動きは的確に弱い部分を責め立ててくる。絶頂を迎えたというのに律動は止まる様子も無く、ひたすらに快楽を叩き込まれる。

「ひぅ♡ぁ♡……も、おわって♡♡たすけ……ッ♡♡むり♡むりら、から……ッ♡♡」
「……そうですか」

 呂律の回らない口で必死に訴えかけると、ようやく男が動きを止めた。奥深くまで犯していた陰茎はそのままに、ゆるゆると腰を動かされる。

「もうやめてほしいですか?」
「ぅ、あ……ッ♡ん……っ♡やめ、て……」

 ゆっくりと腰を引いていく感覚に、安堵にも似た感情を覚える。こくこくと必死で首を縦に振ると、男は甘やかな声で囁いた。

「では、君の名前を教えてくれますか」
「は♡……~~ッ♡ぁ゛♡なま、え……♡」
「君の口から、君を形作るものを聞かせてください」

 完全に抜け切る寸前で屹立は動きを止め、決してそれ以上動くことはない。浅い所を亀頭で押し上げるようなもどかしい刺激に焦れて腰が勝手に揺れるが、その度に咎められるように腰を掴まれる。

「ん……♡ぅ♡……ち、かげ♡……智景、です」
「智景、素敵な名前ですね」

 男の手が褒めるように頬を撫ぜる。ひやりとした手のひらの感触は心地良く、縋りつくように頰を擦り寄せるとと幾分か息がしやすくなるような気がした。

「智景、私とずっと一緒にいてくれますか?」
「っ、え……♡ぁ♡いっ、しょ……?♡」
「そう、一生私の側に」

 何か取り返しのつかない選択を迫られている気がする。回らない頭で必死に考えているうちにも、男は言葉を重ねる。

「君が頷いてくれるなら、苦しいこともすぐに止んで幸せで一杯になりますよ」
「ッあ♡ぁ゛♡……ッ♡い、っしょ♡……~~ッ!♡♡」

 先端を嵌め込むだけだった抽挿が、再びゆっくりと奥まで埋め尽くす動きに変わる。もうどうすれば逃げられるのか分からない。彼の言う通りに従っていればこの責め苦から解放されるのかもしれない。蕩け切った頭は思考を放棄して、反射的に頷くことしかできなかった。

「……いっしょ、に♡いる、……ッ♡♡いま、す♡ぁ♡……ぅ゛♡~~~~ッ♡」
「……ありがとうございます」

 思わず口を突いて出た言葉に、男が静かに息を潜めた。次の瞬間には勢いよく最奥の壁を押し開き、襞の一枚一枚にまで刷り込むようにしてどろりとしたものを流し込まれた。

「ん゛ッ♡♡ぁ♡~~~~ッ!♡♡♡は、ぁ♡……ッ♡♡」

 直接注ぎ込まれる熱に、焼けるような快感が全身を駆け巡る。目の前に火花が散り上手く呼吸ができない。やがて力が抜けた身体がシーツの上に崩れ落ちても腰の動きが止まることは無かった。一突きごとに腹の奥が満たされ、ふわふわとした幸福感が脳内を支配する。

「智景、智景……私の名前は累と言います」
「ん、ゃ♡ぁ♡かさ、ね……?♡かさね♡……ぁ、う゛♡♡」
「ふふ、私だけの可愛い智景、もっと呼んで、声を聞かせてください」
「か、さね♡かさねっ……♡♡ぅ゛♡ん、ぁ゛♡……~~~~ッ!♡♡」

 促されるままに名前を呼べば、応えるように律動が激しくなる。最奥を暴かれる度に身体の中で何かが作り替えられていく。それが何なのかを考える余裕は最早残っていなかった。恐怖も嫌悪も幸福感に押し流され、ただ与えられる暴力的なまでの快楽に溺れていくことしか許されない。

「ひぅ♡ッん゛♡♡かさ、ね……♡ぁ゛♡ッく♡♡……ふ♡♡ぅ゛♡……ッ♡♡」
「私を感じて、私だけを覚えて。他は全て忘れてしまいましょうね」

 まるで刷り込みでもするかのように繰り返し言葉が紡がれ、呪いのように耳朶から脳に染み込む。奥深くに屹立を感じる度に頭の中で何かが弾け、大事だったはずのものは意味の無い喘ぎとともに四散していった。

「ん、ッ♡♡ぅ♡……っふ♡♡ぅ゛♡……っは♡♡ぁ、んッ♡ん゛♡♡~~~~ッ!!♡♡」

 一際きつく抱き寄せられ、注ぎ込まれた大量の白濁液に押し出されるようにぷしゃりと透明な液体が噴き出した。濡れて冷たくなったシーツの感触すら、熱を宿した身体を冷ますには物足りない。絶え間なく押し寄せる甘やかな波に絡め取られるように自分の輪郭が曖昧になり、混濁した意識は微睡みと区別がつかなくなっていく。

「もう手放してあげられない、私の愛しい子」

 歌うように囁かれた言葉もすぐに波に飲まれて消える。耳元に触れる唇の感触も、首筋を包むように撫でる冷たい手の温度も全てが遠かった。この嵐のように荒れ狂う熱から解放される時など訪れないと、深く暗い海の底へ沈む意識の片隅で漠然と理解してしまっていた。耳元に触れる唇の感触も滑らかな手の温度も遠ざかり、やがてふつりと全てが途絶えた。
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