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第3章
負の根源(6)
しおりを挟む王の寝室にたどり着くまでに何人の衛兵を相手にしたか、もはや数えていない。あきらかに敵とみなされ敷かれた陣営。彼らは王が不在のいま、誰の命で立ち向かってくるのだろうか――それはもう、すぐ、この扉の奥に行けばわかること。
多少の息切れを感じつつ、剣を片手に握ったままゴクリとその扉に手をかける。
外から様子を伺うも、異様に静まり返った前室。
一歩中へ踏み入れようとした、そんな時、廊下の端からルイとカイが走ってくるのを視界に捉えた。
任せたはずの王が二人のそばにはいない。
こんなにもすぐ合流するとは思わず何事かとアランの元まで来るのを廊下で待ち構えた。
「どうした二人とも、王は」
「――は、地下を抜けるところまではお連れしたのですが、そこからは先に行けと」
「あの状態の王をひとりにさせたのか!?」
「……団長がバッタバッタ衛兵達を倒していくものだから廊下に倒れる死屍累々をみて王様嘆いてましたよ~王宮内の兵が全員使い物にならなくなる前に団長に合流しろ、って。ひぃー…全速疾走疲れたぁ…はぁ…」
「死屍累々って…全員トドメはさしてないが…」
兵達の真剣にかかってくる勢いにアランもつい加減なく本気で叩き込んでしまったが、既のところで峰打ちに切り替えている。
「団長の本気を目の前に気絶してる人もいたっすねぇ…」
「かわいそうに…」
チーンと両手を合わす二人の頭をべシッと叩き「さっさと行くぞ」と先を促す。
とにかく、目的地はもう目の前。
気を取り直し、先程開けたままの扉の中へ体を滑り込ませた。
以前ここへ来た時同様に静まり返った前室は誰の気配も感じない。あの時も、毒に倒れたヒナセを心配して追いかけての事だった。
もう随分前の事に感じるが、たった数日しか経っていない。
その時見た光景は、毒の対処だったと後々にわかったものの、睦み合う王とヒナセの淫靡な行為にさすがのアランも戸惑いを隠せなかった。
もし、今回もまたヒナセに同じ症状が現れていたのなら―――相手をする王は近くにいない。
大きく深呼吸をすることで覚悟を決め、一歩足を踏み出した。
「この先に―――」
そう言葉を発したと同時に、奥から何やら争いあうような音が僅かに聞こえ、咄嗟にアラン、ルイ、カイで目配せをし合うと、誰ともなくこの場を走り出していた。
目指すは曲がった先にある、王のベッド。
現れた天蓋に映る影は、二人分―――
その一方が崩れ落ちる瞬間をこの目で目撃していた。
「ヒナセ―――!!!」
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