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第2章

王との会話(3)

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「――と、つい熱く語りすぎたな…お前の雰囲気はどうにも懐かしいものと重なってしまう」
 
 
 はは、と失笑する王からは、普段容易に口には出せない王の胸の内をオリビアにだけは心を許して語っていたのだろう…と想像できる。
 幼い頃、心の底から慕っていた姉。その人との共通点を感じさせてくれる王との会話は、アランにとって気付けば緊張以外の別のものへと変わっていた。
 
 だから、こんな事まで口にしていたのだろう。
 
 
「王――いや、陛下、とお呼びしてもよろしいでしょうか」
「よい。好きにしろ」
 
 
 ぶっきらぼうに、だが、なんだかんだ許可をくれる不器用な印象をアランは王から感じていた。
 そんな人物に姉上は恋をし、愛したのだろう。そして、姉上を愛してくださった――そんな人物。
 
 心から感謝を込め、許しの出た呼称を噛み締めるよう静かに丁寧に言葉に出す。
 
 
「陛下」
 

「ふ、やはりお前はオリビアの弟だな……アラン」
 
 
 
 
 これは先程王の質問に深く考えあぐねた結果、ヒナセが答えたヒナセの思うアランの人物像。
 
 
『アラン様は、優しくて、止まり木みたいな人。
 ……この木にずっと止まってたいって思います』
 

 それを聞いた王とアランは同時に目を瞬かせると共に、ヒナセらしい例え方にストンと意味を理解し納得していた。
 一度失ってしまった心休まる休息の地を再び見つけた喜びを。
 
 
 
 
 
 これらは全てこの国の亡き王妃、オリビアが繋いでくれた縁―――
 
 王とヒナセ、ヒナセとアラン、そしてアランと王
 
 この、年齢も身分も国籍も全く違う三人の不思議な縁がより濃くなる瞬間だった。
 
 
 
 
 
 *****
 
 
 
「アランよ、お前我の息子になるか?」
「……はい?」
 
 
 唐突に投げられた言葉はアランだけでなく、その場にいたルイやカイ、そしてヒナセまでも揃って目を点にする程、理解するのに頭が追いつかないものだった。
 
 
 
 それは城下町での視察を終え王からの呼び出しも終えた午後のこと。
 アラン達に特に決まったスケジュールは無く、各自自由に過ごそうとしていた所に「アフタヌーンティーをしよう!」そう例のごとくアランの部屋へ乱入し騒ぎ出した双子は、せっせと侍女達に協力を仰ぎ王宮の美しい庭園の一角にテーブルセットの準備を進めていく。
 その間、ヒナセを見つけ出し嬉々として誘うと、ルイとカイ、アランとヒナセの四人で開かれるアフタヌーンティーが始まろうとしていた。
 
 ……が、そこに思わぬ参入者が現れた。
 
 
「随分面白そうなことをしているな」
「へい…か?」
「「ひぃっ」」
 
 
 振り返るとそこには複数の従者を伴った王が感情の読めぬ表情で立っていた。
 あまりにも予想外の登場人物に、王への耐性が無い双子は文字通り椅子から飛び上がってしまっている。
 
 そんな双子には一瞥くれるのみの王はすぐに視線をアランやヒナセへと向け、どこからともなく現れた従者が運んできた王用の椅子に腰掛けると円形の卓上はアラン、ヒナセ、ルイ、王、カイという並び順に落ち着いた。……一部を除いて。
 
 
「なんでなんでなんでなの!?」
「何故よりによって 僕たちの間なのでしょう…」
 
 
 小声での必死な抗議。それについてはご愁傷さま、としか言えなかった。
 
 
 
 
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