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第2章
城下町(1)
しおりを挟む城下町へと向かう道中、アランをひとり先頭に、ルイとカイに両手を引かれながらあたりを物珍しそうにキョロキョロ眺め歩く雛鳥。
まだ何も無いただの道だというのに熱心な雛鳥を微笑ましく見つめながら、またもやルイのイタズラ心が発揮した。
「雛ちゃん、団長とも手繋ぐ?」
「へっ」
「確かに、団長ひとりで寂しそうですねぇ」
繋いだ両の手がアピールするよう持ち上がり左右から畳み掛けるようにそう言われ、咄嗟に前を行くアランへ目を向けると、話は聞こえていたのか顔だけで後ろを振り返りニッと笑うと後ろ手に手を伸ばしてくる。そして、
「俺とも繋いでくれる?」
珍しく冗談に乗るアランもまた、気持ちが少し浮かれていた。おや珍しいと驚く双子に苦笑で返し、「冗談。はぐれないように気を付けてね」と言葉を残して再び向き直ると、まっすぐ前を見据え進んでいく。
既に背中を向けてしまっていた為、さすがのアランも背中に目があるわけではない。あ…と物言いたげな表情をこぼす雛鳥には気付かなかった。
「雛ちゃん?どうかした?」
「っ、……なにも、大丈夫、です」
「そ?疲れたらすぐ言ってね、おんぶするから」
「団長が」
「俺かよ!」
ルイとカイを中心に終始笑いが絶えず楽しく進む道中。
結局、城下町の入口に着くまでの道のりで、アランと雛鳥が二人で会話する事はなかった。
*****
町はマーケットで賑わい、活気に満ち溢れていた。
人混みに入る一歩手前の道端でどのようなルートで視察するかアランと双子が軽く打ち合わせをしている最中、ひとりマントをしっかり羽織った雛鳥は道中以上にキョロキョロ忙しなく道行く人を眺めていた。カイと繋いだ手が無かったら、今頃フラフラ行ってしまいそうな程に。
「雛ちゃん、お待たせ~」
「まず全員でざっとマーケットを見て回る事にしたからこのまま僕たちと手繋いで行きましょうね」
「俺とも繋ご~」
言われるがまま伸びてくるルイの手も自ら自然と繋ぎ、ルイとカイと手を繋ぐ事になんの抵抗も無くなっている雛鳥の順応力の高さにやはり感心してしまうアランだった。
「じゃあ出発するけど、絶対二人の手を離さないように。人混みに酔いそうになったらすぐに知らせて」
アランの言葉にしっかり頷く雛鳥は若干緊張の面持ちだが滲み出るわくわくについ苦笑するとそれじゃあ行こうか、と出発した。
マーケット見物を始めものの数分で、アランが見守る対象は雛鳥ひとりだけでなく双子を含めた同い年三人組なのだと判明するくらい、全員が全員自由に動き回り「お前らあまりはしゃぐな引っ張り回すな!」と叫ぶアランの声がマーケットのそこら中から上がっていた。
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