上 下
49 / 69
2【子育て日記】

2-20 社交界の花(1)

しおりを挟む

 
 
 
「招待状?」
 
 
 リビングのソファで僕を真ん中に子供たちと仲良く絵本を読んでいた時のこと。
 仕事から帰ってきた楓真くんに手渡された一通の封筒。表面にはシンプルに招待状と書かれていた。
 
 
「はい。父の代からお世話になってる人が主催する忘年会を兼ねたちょっとした内輪のパーティなんですけど、この前仕事で会う機会があって、ぜひ今年はつかささんも連れてくるようにと言われてしまって……大丈夫そうです?」
「子供たちさえ預けれれば僕は……」
 
 
 僕の膝の上に置いた絵本に夢中になっている子供たちを左右それぞれチラッと見ると、自分に意識が向いたことが嬉しいのかすぐさま絵本に興味をなくしキャッキャとじゃれついてくる。
 そんな二人に、正面に立った楓真くんも笑顔を零しながらうりうりと頬や頭を撫でていく。
 
 そんな三人の可愛い光景、まではよかったのに……
 
 
「……楓真くん、なんで僕まで撫でるのさ」
「すみません…つい、なんとなく……」
「ままもよちよち~」
「ままもうりうり~」
 
 
 流れのまま楓真くんの手が僕の頭も撫で、それを見た双子はすぐさま真似するよう僕の肩を支えに立ち上がり、左右から頬っぺを撫でていく。
 
 
「ふふ、こぉら!楓真くん、ふぅくん、つぅくんやめて~」
 
 
 顔面もみくちゃにされながら、リビングに響く四人分の笑い声が止まらなかった。

 
 
 
 
 *****
 
 

「その日は父さんも招待されているので、子供たちをトヨさんに預けつつ実家から三人で向かいましょう」
「わかったよ。社交用のスーツしばらく出してなかったけど大丈夫かな…」
 
 
 ぐっすり眠る子供たちをふたり用のベビーベッドに寝かしつけ、先に楓真くんが横になり温めてくれていたベッドに潜り込む。
 すぐさま伸びてきた腕に腰をひかれ抱き寄せられながらその腕の中に落ち着くと、頭は先程の忘年会の話の続きでスーツの事へ意識がむく。
 
 
 楓珠さんの秘書時代は何度かそのようなパーティに同席していたが、楓真くんと番になり、子供たちを身ごもって出産したこの数年間は一度も無い。
 おそらくスーツも楓珠さんのご自宅に置かせてもらいっぱなしだった。
 
 
「折角なのでこの際、二人分新しいの新調しましょ。丁度俺も新しいの欲しいと思ってたので」
「でも、高いし…」
 
 
 あまり乗り気では無い僕を動かす手段を楓真くんはもうすっかり心得てしまっている。「つかささんのスーツ俺に選ばせてください」と、楽しそうな笑顔で言われてしまえば頷く以外の答えが僕には存在しなかった。
 
 
「つかささんの社交用スーツ見るの、俺初めてだ…
 絶対誰よりも綺麗ですね」
「……そんな事ないよ、僕なんか楓真くんの隣に立つのが気後れしちゃう」
 
 
 楓真くんの腕の中、視界がぼやけるほど至近距離で見つめ合いながらボソボソと交わす会話。
 
 むっとする楓真くんの表情が可愛かった。
 
 
「なんでぇ~…むしろ変な虫がつかないようにつかささんは俺の大切な人ですって威嚇して回らないと」
「ふふ、楓真くんのモノですってアピールするね」
「~~っ、つかささぁぁん」
 
 
 
 既に部屋の明かりを落とした寝室のベッドの中。
 
 
 自然な流れで落ちてくる優しい唇を受け止めながら、心地いい力加減でベッドシーツに押し付けられる。
 
 
 おでこ、目尻、頬、顎下、首筋、そして―――唇。
 
 
 余すとこなく落とされるキスの雨を全身で受けながら、次第に上がっていく感度をありのまま素直に受け入れる。
 
 
 
「ぁ……」
 
 
 
 ふと洩れてしまう小さな声。
 
 じわりと溢れ濡れるのは前なのか、後ろなのか――
 
 
 
 伸びた手が、ベッドサイドランプの明かりを絞るのを視界の端で捉えながら、楓真くんを受け入れるよう自ら進んで身体を開いていった。

 
 
 
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

アダルトショップでオナホになった俺

ミヒロ
BL
初めて同士の長年の交際をしていた彼氏と喧嘩別れした弘樹。 覚えてしまった快楽に負け、彼女へのプレゼントというていで、と自分を慰める為にアダルトショップに行ったものの。 バイブやローションの品定めしていた弘樹自身が客や後には店員にオナホになる話し。 ※表紙イラスト as-AIart- 様(素敵なイラストありがとうございます!)

上司と俺のSM関係

雫@更新不定期です
BL
タイトルの通りです。

嘘つきαと偽りの番契約

ずー子
BL
オメガバース。年下攻。 「20歳までに番を見つけないと不幸になる」と言う占いを信じている母親を安心させるために、全く違いを作るつもりのないオメガの主人公セイア君は、とりあえず偽の番を作ることにします。アルファは怖いし嫌いだし、本気になられたら面倒だし。そんな中、可愛がってたけどいっとき疎遠になった後輩ルカ君が協力を申し出てくれます。でもそこには、ある企みがありました。そんな感じのほのぼのラブコメです。 折角の三連休なのに、寒いし体調崩してるしでベッドの中で書きました。楽しんでくださいませ♡ 10/26攻君視点書きました!

冷酷組長の狂愛

さてぃー
BL
関東最大勢力神城組組長と無気力美男子の甘くて焦ったい物語 ※はエロありです

溺愛前提のちょっといじわるなタイプの短編集

あかさたな!
BL
全話独立したお話です。 溺愛前提のラブラブ感と ちょっぴりいじわるをしちゃうスパイスを加えた短編集になっております。 いきなりオトナな内容に入るので、ご注意を! 【片思いしていた相手の数年越しに知った裏の顔】【モテ男に徐々に心を開いていく恋愛初心者】【久しぶりの夜は燃える】【伝説の狼男と恋に落ちる】【ヤンキーを喰う生徒会長】【犬の躾に抜かりがないご主人様】【取引先の年下に屈服するリーマン】【優秀な弟子に可愛がられる師匠】【ケンカの後の夜は甘い】【好きな子を守りたい故に】【マンネリを打ち明けると進み出す】【キスだけじゃあ我慢できない】【マッサージという名目だけど】【尿道攻めというやつ】【ミニスカといえば】【ステージで新人に喰われる】 ------------------ 【2021/10/29を持って、こちらの短編集を完結致します。 同シリーズの[完結済み・年上が溺愛される短編集] 等もあるので、詳しくはプロフィールをご覧いただけると幸いです。 ありがとうございました。 引き続き応援いただけると幸いです。】

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

こじらせΩのふつうの婚活

深山恐竜
BL
宮間裕貴はΩとして生まれたが、Ωとしての生き方を受け入れられずにいた。 彼はヒートがないのをいいことに、ふつうのβと同じように大学へ行き、就職もした。 しかし、ある日ヒートがやってきてしまい、ふつうの生活がままならなくなってしまう。 裕貴は平穏な生活を取り戻すために婚活を始めるのだが、こじらせてる彼はなかなかうまくいかなくて…。

処理中です...