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2【子育て日記】
2-20 社交界の花(1)
しおりを挟む「招待状?」
リビングのソファで僕を真ん中に子供たちと仲良く絵本を読んでいた時のこと。
仕事から帰ってきた楓真くんに手渡された一通の封筒。表面にはシンプルに招待状と書かれていた。
「はい。父の代からお世話になってる人が主催する忘年会を兼ねたちょっとした内輪のパーティなんですけど、この前仕事で会う機会があって、ぜひ今年はつかささんも連れてくるようにと言われてしまって……大丈夫そうです?」
「子供たちさえ預けれれば僕は……」
僕の膝の上に置いた絵本に夢中になっている子供たちを左右それぞれチラッと見ると、自分に意識が向いたことが嬉しいのかすぐさま絵本に興味をなくしキャッキャとじゃれついてくる。
そんな二人に、正面に立った楓真くんも笑顔を零しながらうりうりと頬や頭を撫でていく。
そんな三人の可愛い光景、まではよかったのに……
「……楓真くん、なんで僕まで撫でるのさ」
「すみません…つい、なんとなく……」
「ままもよちよち~」
「ままもうりうり~」
流れのまま楓真くんの手が僕の頭も撫で、それを見た双子はすぐさま真似するよう僕の肩を支えに立ち上がり、左右から頬っぺを撫でていく。
「ふふ、こぉら!楓真くん、ふぅくん、つぅくんやめて~」
顔面もみくちゃにされながら、リビングに響く四人分の笑い声が止まらなかった。
*****
「その日は父さんも招待されているので、子供たちをトヨさんに預けつつ実家から三人で向かいましょう」
「わかったよ。社交用のスーツしばらく出してなかったけど大丈夫かな…」
ぐっすり眠る子供たちをふたり用のベビーベッドに寝かしつけ、先に楓真くんが横になり温めてくれていたベッドに潜り込む。
すぐさま伸びてきた腕に腰をひかれ抱き寄せられながらその腕の中に落ち着くと、頭は先程の忘年会の話の続きでスーツの事へ意識がむく。
楓珠さんの秘書時代は何度かそのようなパーティに同席していたが、楓真くんと番になり、子供たちを身ごもって出産したこの数年間は一度も無い。
おそらくスーツも楓珠さんのご自宅に置かせてもらいっぱなしだった。
「折角なのでこの際、二人分新しいの新調しましょ。丁度俺も新しいの欲しいと思ってたので」
「でも、高いし…」
あまり乗り気では無い僕を動かす手段を楓真くんはもうすっかり心得てしまっている。「つかささんのスーツ俺に選ばせてください」と、楽しそうな笑顔で言われてしまえば頷く以外の答えが僕には存在しなかった。
「つかささんの社交用スーツ見るの、俺初めてだ…
絶対誰よりも綺麗ですね」
「……そんな事ないよ、僕なんか楓真くんの隣に立つのが気後れしちゃう」
楓真くんの腕の中、視界がぼやけるほど至近距離で見つめ合いながらボソボソと交わす会話。
むっとする楓真くんの表情が可愛かった。
「なんでぇ~…むしろ変な虫がつかないようにつかささんは俺の大切な人ですって威嚇して回らないと」
「ふふ、楓真くんのモノですってアピールするね」
「~~っ、つかささぁぁん」
既に部屋の明かりを落とした寝室のベッドの中。
自然な流れで落ちてくる優しい唇を受け止めながら、心地いい力加減でベッドシーツに押し付けられる。
おでこ、目尻、頬、顎下、首筋、そして―――唇。
余すとこなく落とされるキスの雨を全身で受けながら、次第に上がっていく感度をありのまま素直に受け入れる。
「ぁ……」
ふと洩れてしまう小さな声。
じわりと溢れ濡れるのは前なのか、後ろなのか――
伸びた手が、ベッドサイドランプの明かりを絞るのを視界の端で捉えながら、楓真くんを受け入れるよう自ら進んで身体を開いていった。
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