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1【妊娠】
1-12 妊娠生活(7)
しおりを挟むこのままエレベーターが来るのを待ち続けていても良かったが、せっかく身体がスッキリしている今、少しでも運動しようとすぐ近くにある階段を使って3階から1階まで降りる事を提案した。楓真くんは嫌な顔ひとつせず僕の気まぐれに付き合ってくれる。
階段へ向かう際、自然な流れで肩を抱かれる体勢から楓真くんの右腕に手首を絡める体勢へと変え、微笑み合う。お互い、この数年で隙あらば磁石のようにどこかしらの箇所で接触をはかり安らぎを得ていた。
「今日も特に異常なしでした?」
「この子達は特に問題なし。だけど……」
「え…何かありましたか…」
不意に言葉を区切る僕に一気に不安そうな顔で立ち止まり腕に絡めた手を握られる。
「血糖値が上がってるって言われちゃった。しばらくドライフルーツは控えます…」
「マジですか…せっかくつかささんが食べれるもの見つけれたのに…」
「うん…このままだと自分もこの子達にも悪影響だから、それは避けたい。楓真くん協力してね…たぶん僕無意識のうちに手を伸ばしてそう…その時は心を鬼にして止めてください」
「なんて難易度の高い試練を俺に与えるんですかぁ…」
とことん僕に甘い楓真くんの苦難の表情は綺麗に無視し、任せたよ!と念押しした。
そんな会話をしている間にも階段へとたどり着く。自然と手すり側へ導かれ、右手に手すり、左手に楓真くんの腕、と安定感抜群の環境。それにプラスして足元気をつけてくださいね、と細心の注意を払ってエスコートしてくれる。まだお腹は全然出ていないのに、これでは最早臨月みたいだ。
大袈裟だなぁと楓真くんの顔を見て笑った時、ふと楓真くんの目元に抜けたまつ毛が付いている事に気が付きそれがとても気になってしまった。
「楓真くん、まつ毛付いてる」
「え?まぁ、後で取ります」
「取ってあげるからちょっと止まって?」
まだ降り始めた階段のど真ん中。
目線を合わせるよう、一段上から楓真くんと向かい合った。
綺麗な顔が無防備に僕に向けられるのを存分に堪能しながらそっと取り除く。
この時後ろから、子供たちの元気で騒々しい歓声と足音が近づいている事に、まだお互い気づいていなかった。
「ん、取れたよ。長いまつ毛だから抜けて肌に付いてると目立つねぇ」
「つかささんも長くて綺麗ですよ」
「……どうもありがとう」
真正面から目を見つめられながらすかさず褒めてくる楓真くんに見ないで、と目元を隠し、身体を無理やり方向転換させたそんな時、不意に、背中の腰より下辺りにドンッと強い衝撃がぶつかってくる。
え、と思った時には無防備だった身体は一気にバランスを崩し前に傾いていた。
全てがスローモーションのように感じた。
楓真くんの真横を身体が傾いて落ちていく。
目を見開き手を伸ばす楓真くんの姿を捉えた直後、時間が通常通り再生されるようにそこからは一瞬だった。
「つかささんっっっ!!!!」
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