セントアール魔法学院~大好きな義兄との学院生活かと思いきや何故だかイケメンがちょっかいかけてきます~

カニ蒲鉾

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第二章【記憶】

2-15 それぞれの思い(1)

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 アルフレッド、ラウル、リカルドが出ていき一時騒然となった教室はシリルの懸命な軌道修正によりなんとか集中力を取り戻し、いま最後の一人まで魔力測定を終えようとしているところだった。
 
 無事最後も水晶は光り、安堵の表情を見せる生徒にお疲れ様でしたと声をかけ全員の終了を確認したシリルがザワつく生徒たちに声をかけようとした、そんな時、教室の前後にある扉の後ろがそっと開き、目にも止まらぬ早さで何かが移動するのを偶然視界にとらえていた。
 
 
「……」
「シリル先生?どうかされましたか?」

 
 前を向く生徒たちが一切気づかないくらい完璧に気配を消し、元から小さな身体をさらに小さく縮め、シュババババッとレオンハルトの隣に飛び込むのは――先程アルフレッドを追って出ていったラウルだった。
 どうやらひとりで戻ってきたらしい。
 まるで餌に飛びつく一心不乱のポメラニアンみたいな様子を最初から最後まで見届けたシリルは内心苦笑しながらも特に声をかけることなく通常通り授業を続ける事にした。
 
 
「……いや、なんでもないよ。さてみなさんお疲れ様でした無事各々の魔力を測ることができましたね―――」
 
 
 なにやら訳アリのラウル・ラポワントという生徒を今後陰ながら見守り必要とあらばサポートを、と心にそっと刻みながら。
 

 

 
 
「レオくんつめてくださいぃ!」
「は?……うわっ!?」
 
 
 元々ラウルと並んで座っていた窓際の三人がけの長机で一人ぼぉっと授業を受けていたレオンハルトは、突然聞こえた左からの小声の声掛けと共に無理やり無い隙間に尻を割り込ませて座ってくる小動物の襲来に咄嗟に身動きが取れなかった。
 そんなレオンハルトにはお構い無しのラウルは、既にバレているとは知らず必死に壇上のシリルにバレないようコソコソしながらなかなかズレてくれないレオンハルトに痺れを切らし、ならばその奥の隣に座ろうと、レオンハルトを乗り越えるため膝の上に乗り上げてくる。
 
 
「や、おいっばかばかばかっ」
「ちょっとレオくん静かにしてください!シリル先生にバレてしまいます!」
「……もうバレてんぞ」
「へ……?」
 
 
 呆れた顔で指さすその先につられて顔を向ければ、ついレオンハルトの膝の間にすっぽり収まった状態で止まってしまい、頭上からすかさず「おいそこで止まるな」と苦情が飛んでくるがなんのその、都合の悪い事は耳に入ってこないラウルはレオンハルトの言葉をスルーし、そっと壇上を盗み見る。すると、ニッコリ微笑むシリルとバッチリ目が合い、はわわわっと身体を縮めるのだった。
 
 
「早く隣行けっ」
「っ、は、はいぃっ」

 
 こくこく勢いよく頷くと、もう必要も無いというのに未だ机にへばりつきながら低姿勢で隣へと移動していくラウルを見届けながら、ラウル自体に変わったところはないかその姿にサッと目を走らせる。

 アルフレッドを追いかけるラウルを見送るリカルドの表情を目撃してしまった身としては、この待ってる間、気が気ではなかった。
 レオンハルトは、ラウルとリカルドの関係性を一から百まで理解しているわけでは無い。なんならラウルの一方的な崇拝なのかと思っていた。が、それは違うのだと、一日共にすごしラウルを見るリカルドの表情を見ているうちにお互いを想う気持ちは依存に近いのでは無いのか、むしろリカルドの方が重いんじゃないか、と薄々察することができた。
 そんな人が、自分以外を追いかけていく姿を見てなんとも思わないはずがない。
 
 空白の時間で何があったのか、一見いつもと変わらない雰囲気の裏にほんのり赤く染ったラウルの目……
 
 
「?レオくん?どうかしました?」
「……いや、なんも」
 
 
 ラウル自ら何か言ってくるまでは下手に聞かずそっとしておこう――その代わりそばにはいるから、なんて、自分らしくないくさくて絶対口には出せないことを一瞬でも思い一人恥ずかしくなるレオンハルトだった。
 
 
 
 
 
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