セントアール魔法学院~大好きな義兄との学院生活かと思いきや何故だかイケメンがちょっかいかけてきます~

カニ蒲鉾

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第二章【記憶】

2-9 未知数の魔力(1)

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 早速測定へ入るかと思われた面々にここで思いがけないサプライズが待っていた。
 
 
「実は本日、助っ人として魔力量、純度それぞれ優秀なお手本となる先輩を二名呼んであります」
 
 
 シリルのその言葉に教室内がザワっとざわつき、突然の助っ人は一体誰なのかと期待を胸に扉の向こうへ熱い視線を送る生徒でいっぱいだった。
 入りなさい、そうシリルが声を掛けると同時に扉が開き二人分の足音が聞こえてくる。
 そして、その姿が完全に見て取れた途端、教室内は爆発的な歓声に包まれるのだった。入ってきたのは笑顔で手を振るリカルドと、めんどくさそうにポケットに手を突っ込み欠伸を隠そうともしないアルフレッドの3年首席次席コンビだった。
 
 
「リ、リカ様ぁぁぁぁっ」
「うるせ…」
 
 
 レオンハルトの隣で縮こまって座っていたラウルもまた突然のリカルドの登場に飛び上がり、スタンディングオベーション並の拍手と歓声をかき鳴らす姿はどのクラスメイトよりも目立ち、近くの生徒からポカンと呆気に取られた視線を向けられていた。
 
 
「みなさん元気ですねぇ、はい、アール寮から代表してアルフレッドくんとリカルドくんを呼びました」
 
 
 シリルを挟んで両脇に立つ二人は、シリルがそう高くない身長という事もあってか、よりすらっと伸びた身長が際立ち、ここにいる全員と2歳しか変わらない年齢にもかかわらず同じ制服を身につけていても何故かとても大人びて見えた。
 

「おはようございます。魔力測定頑張ってね」
 
 
 人当たりよく挨拶するリカルドとは違い、アルフレッドは特に何も言う様子が無く、かえってそれが1年生達の期待を煽った。何か言わないと先に進まない雰囲気にため息を漏らしたアルフレッドはやっと一言、
 
 
「……適当にやれ」
 
 
 それだけでも十分アルフレッドのファンには嬉しい挨拶だったらしい。ぎゃぁぁっと声を上げている斜め前のクラスメイトへ「嘘でしょ…」とドン引きの視線を向けるラウルを、人のこと言えんだろと心の中で突っ込むレオンハルトだった。
 
 
 
「では、早速ですが魔力測定の方法を説明しますね。……と言っても簡単です。この水晶玉に手をかざすだけです」
 
 
 そう言ってシリルは教卓の下から両手で持ってギリ収まるサイズの綺麗に透き通った水晶玉を取り出した。
 
 
「これは魔力に反応し色を変える水晶玉です。実はみなさんは既に一度、この水晶玉に触れているんですよ」
 
 
 覚えている人居ますか?そんなシリルの問いかけに全員が揃って首を傾げる反応を返す。そんな一同に満足そうに頷くとそうでしょう、と笑って続きを説明した。
 
 
「それもそのはず、みなさんが初めて触れているのは生まれてすぐの魔力検査での事です。なので記憶に無いのも仕方がありません」
 
 
 なんだぁ、と野次を飛ばクラスメイトをよそにラウルは一人ポツンと取り残された気分を感じていた。生まれてすぐはおろか、リカルドと初めて会った5歳以前の記憶が全く無かったから───
 
 
「ラウル?どうした?」
「え、……ぁ、いえ!なんでもないです!」
 
 
 レオンハルトに声をかけられるまでしばらくの間ぼーっとしていたらしく、慌てて頭を振って現実に戻った時にはいつの間にか室内はカーテンが引かれ薄暗くなっていた。
 そして丁度、教壇の上でアルフレッドが手本を見せようと水晶玉へ手をかざし、その隣でシリルが説明を続ける、そんな場面が展開されていた。
 
 
「はい、みなさん注目してくださいね。このように水晶玉へ手をかざし、数秒待ちます――すると」
 
 
 透明に透き通っていた水晶玉はアルフレッドが手をかざした途端、とても強い光を放って輝き出した。
 その輝きは単純に単色での光ではなく、あまりに強い光に目を凝らしてなんとか五色くらいの複数色の光がそれぞれの色を主張するように発光している事がわかるという不思議な光景が目の前で広がり、その光はとても強く激しかった。
 
 
「みなさんよく見えますか?この光の強さが魔力量、色の鮮度が魔力の純度を表します。アルフレッドくんの場合とても強い光で、その魔力量は文句なしの学院一位です。その半面、何色も混ざり合う色味はとても珍しいのですが残念ながら一色一色の鮮度は低い事から…純度はそう高くないですね」
「けっ」
 
 
 常に自信家のアルフレッドが唯一劣る点がそこだった。
 
 
「続いてリカルドくんに試してもらいます。とてもわかりやすい比較となりますのでアルフレッドくんの輝き方をよく覚えておいてくださいね」
 
 
 アルフレッドが手を離すと今まで強く光り輝いていた水晶玉は再びただの透明の玉に戻り、入れ替わるようにリカルドがその前に立つ。つられてラウルも前のめりの体勢でわくわくとその様子を見守った。


「それではリカルドくん、よろしくお願いします」

「はい」


 微笑みを浮かべ答えたリカルドは、先程のアルフレッド同様に水晶玉へ手をかざすこと数秒後───今度はとても綺麗で鮮やかな黄色一色に光り輝いたのだった。
 



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