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第一章【新生活】

1-19 ラウルの秘密(2)※

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 ラウルの身体には誰にも言えない秘密がある。
 
 
 ペタンと平らな胸に、うっすらあるかないかくらいの髪色と同じやわい下生えとその下にある控えめな男の象徴、それらはラウルが男の子だということを表している。――が、その奥。
 
 
「身体に変わりはない?」
「ないです、相変わらず月に一回きます」
「そっか……触ってもいい?」
「ひょえぇ…」
 
 
 恥ずかしいのか両手で顔を隠しながらもコクコク頷く従順なラウル。「ありがと」と耳元で囁き、右手で頭を抱き込みながら反対の左手をラウルの両脚の間に伸ばしていく。
 「耳が溶けるうぅ…」とあうあう言っているラウルに苦笑しながら、白濁して見えない所を手探りで進めていくと左太ももに触れる。自然と閉じようとする太ももに左腕を挟まれながらそのまま内側へ潜っていくとへにょんと力なく垂れるラウルのかわいいラウルにちょんと触れた。
 反射的にビクッとなる肩をよしよしと撫でる。
 
 普通だったら性器のすぐ裏には二つの袋があって、少し奥に肛門があるだけの男体。
 
 だが、ラウルのそこはもう一つの穴が存在した。
 
 そっと指を這わせばお湯の中でくちゅっ、と音を立て呑み込んでいく肛門とは別のやわらかな穴。
 
 
「っふぁ、リ、カ様…のぼせそ、です」
「ん、バスタブに腰掛けて」
 
 
 顔を赤く蒸気させたラウルを抱き起こし向かい側のバスタブに座らせば、壁にもたれかかったその身体が全て外に晒される。少しでもお湯に浸かることが嫌だったのか自ら脚を上げバスタブに引っ掛け、そこを惜しげも無く晒していた。
 
 
「ラウ…丸見えだよ」
「ん、リカ様だから…いいです」
「そっか」
 
 
 下生えの下、普通の男だったらあるはずのない女性器がトロリと濡れて外気に晒されていた。
 
 
 
 
 それを見つけたのはラウルがラポワント家にやってきてしばらく経ってからだった。
 最初はなかなか心を開いてもらえず話すのにも一苦労だったリカルドだが、懸命な愛情表現に少しずつ二人は仲良くなっていった。言葉どおり朝昼晩、風呂も寝る時もずっと小さな5歳のラウルがぴっとりリカルドにくっついているくらいに。
 
 それは、リカルドの父、サムエルにとって大誤算だった。
 
 ある日の夜、リカルドは一人でサムエルの書斎へ駆け込んだ。ラウルのある事を聞きたくて。
 
『父上、ラウルの身体、変です病気ですか!?』
 
 まだ7歳のリカルドは、自分にはない穴があるラウルの身体を本気で心配し誰にも言えずサムエルに吐き出すように相談した。その当時からラウルを独り占めしたかったリカルドはラウルの面倒をメイドには任せずリカルドが全てやった。だからラウルの身体にある穴と右腰の痣を知っているのはリカルドのみだ。
 
 サムエルは自分が用意したメイドはどうしたのかと頭を抱え、もう既に知ってしまった息子に絶対に誰にも言うな、と絶対厳重の契約魔法まで交わし、その秘密を打ち明けた。
 
『ラウルは、王家の血筋に数百年に一度現れたら奇跡と言われている両性具有の王族だ』
『ラウルが…王族……』
 
 その当時から既にアルフレッドと交流のあったリカルドは王族の事情をある程度は知っていた為すぐに察することが出来たが、父の気まぐれで連れ帰ってきた孤児だと思っていたラウルが王族だと知った衝撃は大きかった。
 
『5歳まで王宮で過ごした記憶はラウル本人には無い。強い魔法で封印してある。他の王族の子息達以上に誘拐でもされたらこの国の損失ははかりしれない』
『何故、そんなに…』
『ラウルは自ら魔力を持ちながら魔力持ちの男との子を身ごもる事ができる誰もが喉から手が出るほど欲しい存在だ。普通子どもを身ごもる女は魔力は無いからな』
『あ……』
『代々王家では両性具有という尊い身体を持って産まれたその存在は王の子を身ごもるという重大な役目を持ち、その日を迎えるため無事に魔法学院を卒業させるのが我々に与えられた使命だ』
『……っ、つまり、ラウルは、アルフレッド様と』
『そうだな、実の兄弟でありながら将来子を成す番だ』
 
 その事実は7歳のリカルドにとって受け止めきれない衝撃だった。何も言えず表情を固めていると、『絶対に誰にも言うな』と念押しされる。
 
『アルフレッド様は、産まれたばかりの弟――ラウルをとても愛し片時も離れなかった。だが、暗殺の恐れからその存在を隠すため、王はアルフレッド様をも騙す事にした。ラウルはアルフレッド様の中で死んだ事になっている。その死を受け入れられないままアルフレッド様自らも貴族の元へ出されている』
 
 次から次へと打ち明けられるラウルの事情を一人で受け止めるには心の整理が必要だった。だが、一つ確認しておきたい事がある。
 
『父上、僕は将来……ラウル付きの従者になる事は可能でしょうか』
『無理だ。卒業後、ラウルは一生王宮から出ることは無い』

 『話は以上だ、もう行け』と無情にも父の書斎を追い出される形で廊下に出ると、しばらくその場を動くことが出来なかった。
 項垂れるリカルドの手を、小さな手が引くまでは。
 
『リカ様…?ラウ、眠いです…一緒に寝んねして下さい』
『っ、ラウ――』
 
 その日が最初で最後、リカルドがラウルの前で涙を流した日だった。
 
 
 
 
 
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