セントアール魔法学院~大好きな義兄との学院生活かと思いきや何故だかイケメンがちょっかいかけてきます~

カニ蒲鉾

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第一章【新生活】

1-16 歓迎会(4)

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「うわぁ…アルフレッド様、またリカルド様にめんどくさい事は押し付けるだけ押し付けて美味しいところは全て持っていってる…」
「見てあそこのアルフレッド様親衛隊達の顔。すっごいドヤってきてる…」
「うわ~~~…いつも尻拭いしてるのはリカルド様なのに」
 
 
 いままで口を開かなかった同じテーブルの先輩たちがぐちぐちと不満を漏らすのが聞こえてきたラウルは、やはりリカルドはあの人にたくさん迷惑をかけられているのだとショックと怒りでふるふる震えている。が、その様子はポメラニアンが小さな体を懸命に震わせ威嚇しているくらいのなんの迫力もない姿だった。
 
 そんなリカルド様親衛隊のメンバーとラウルを見かねたクリスはこらこら、と穏やかに口を開き宥めに徹する。
 
 
「君たち、リカルド様が納得していることに部外者が口出しをしてはいけないよ。我々が無駄に騒いでリカルド様の評判を落とすことが一番愚かだ、わかったね?」
「はい…すみませんクリス様」
 
 
 クリスに注意されしゅんとする先輩達とは反対に、ラウルはクリスを尊敬の眼差しで見つめていた。そんなラウルの視線に気づいたクリスはにこりと笑顔を送り、今も尚続くアルフレッドに集中するよう視線のみで伝えてくる。コクコクと全力で頷くととりあえずアルフレッドに視線を送るが、内心「クリス先輩かっこいぃ…」で満たされるラウルだった。
 
 
 いつの間にか始まった生徒からの全力のアルフレッドコールにレオンハルトは改めて従兄弟の人気さを思い知り、どこに行っても目立つカリスマ性を発揮するアルフレッドをはるか遠く先にいる人のように眺めていた。
 実際、アルフレッドは生まれた瞬間から親族の期待を一身に背負っていた。
 
 レオンハルトの家は分家、アルフレッドの家が本家――この国の正統な『王家』だった。
 
 この国の王族は子が生まれると必ず、誘拐暗殺を防ぐべく生まれた子を隠し育て、一定の歳までに己の存在意義を叩き込むとその後は信頼のおける貴族へ預け、魔法学校入学の歳まで育てさせるとそのままその貴族の子として入学させるという王家にだけ伝わる暗黙の掟が存在した。
 その為、アルフレッドとレオンハルトが現在名乗っているプルーストという姓は預けられた貴族の姓であり偽りで、学院長と一部の上層部を除いたほとんどの教師とこの学院に通う全校生徒は二人が王族であるということを知らない。
 卒業し王族として表に出て初めてその事実が顕になるが、それはまだ先のことで在学中はただのアルフレッド、レオンハルトとして静かに過ごしていくのが二人の役目だった。
 
 例外としてリカルドはラポワントの家柄、王族に仕える筆頭貴族の長男として、将来自分が仕える事になるだろう王族と幼少期から共に過ごしてきた為、二人の事情を知っている。一方で同じラポワント家のラウルは何も知らない様子から、このまま卒業まで一切家の事を伝えるつもりはなかった。
 なぜなら、レオンハルトにとってもラウルが初めてできたオトモダチだったから。
 
 
 そんなことをぼんやり考えながら隣で百面相を繰り広げるラウルを眺めてから静かに食堂内を見渡す。ここにいる全員、まさか将来の国王からの乾杯を聞くことになるとは微塵も思ってないだろう、なんて一歩離れた感覚で。
 
 
 
「今宵は無礼講だ存分に楽しめ乾杯――」
 
 
 
 乾杯!と至る所からグラスがぶつかる音が聞こえる中、ラウルのいるテーブルでもグラスをぶつけあう。初めての体験にわっわっと中身をこぼさないようにするのに必死なラウルにくっくっと笑いながら、乾杯、と優しくグラスをぶつけるレオンハルトだった。
 
 
 
 乾杯を合図に本格的に歓迎会が始まった。
 目の前に広がる色とりどりの料理に何から食べようか目を輝かせていると、「何食いたい?」とレオンハルトが聞いてくる。すかさずラウルは
 
 
「チキン!あとポテトとピザが食べたいです!」
「ふはっめっちゃジャンキー」
 
 
 顔に似合わずガッツリ油物が好きらしいラウルに笑いながら率先してナイフとフォークで綺麗にチキンを取り分け皿に盛ってくれるレオンハルトに、おぉ…と更に目を輝かせる。
 
 
「ありがとうレオくん」
「ん、いっぱい食べて大きくなれよ」
「俺の成長期はこれからです!」
「ははっトイプードルくらいにはなるかもな」
 
 
 謎の例えに、ほぁ?とフォークを片手に首を傾げるラウルだったが、いいから食べろ食べろと促され気を取り直していただきますと手を合わせてからチキンにフォークを伸ばした瞬間、ターゲットのチキンが横から伸びてきた手によって忽然と姿を消したのだった。
 
 
「へぁ!?俺のチキン!!誰ですか!!」
「犬のものは俺のものだろ?食って何が悪い」
「くぁぁぁぁっ!またあなたですかぁぁぁっ!!」
「……アルフレッド兄さん」
 
 
 空いていたはずのラウルの隣にいつの間にか腰掛けチキンを奪っていったのはつい先程まで中央で乾杯の音頭をとっていたアルフレッドだった。
 
 
 
 
 
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