セントアール魔法学院~大好きな義兄との学院生活かと思いきや何故だかイケメンがちょっかいかけてきます~

カニ蒲鉾

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第一章【新生活】

1-15 歓迎会(3)

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「えっと……」
 
 
 戸惑ったクリスがチラリとレオンハルトに視線を寄越す。おそらくレオンハルトの情報もリカルドから聞いているだろうと推測しあえて自己紹介は省いてそのまま話す事にした。
 
 
「ラウル、例えばお前はリカルド先輩から何か頼まれたら断れるか?」
「無理です無理です!リカルド様からの指示にNOはありえません!命を差し出せと言われても差し出せます」
 
 
 断る事を想像したのか顔を青ざめさせながら全力で否定するラウルに「や、それはNOと言え」と冷静に突っ込んでしまう。
 
 
「じゃなくて……そういう事だ。この先輩たちもリカルド先輩のお願いを断れない」
「あ……」
 
 
 レオンハルトの言いたいことを理解すると悲しそうな顔でクリス達を見やる。
 
 
「……すみません、クリス先輩達に死よりも辛いことをさせてしまうところでした」
「う、うん?それ程でもないよ?」
「ほぇ?」
 
 
 向かい合った全員の頭の上にてんてんてん、と三点リーダーが浮かび上がるかのような沈黙が生まれていた。
 
 
「と、とにかく、もう一度仕切り直してもいいかな、僕たちはリカルド様からラウルくんの学院生活のサポートを仰せつかっています」
「……はい」
「何か困ったことがあればすぐに頼ってね」
「う…何も無いと思うんですけど、その時はよろしくお願いします」
 
 
 ぺこりと頭を下げるラウルに全員が温かく見守る中、突如なんの前触れもなく部屋の電気がパッと消えた。
 
 
「ひぇっ!?」
「……落ち着け」
 
 
 光が一切無い真っ暗となった空間に、ビクッと飛び跳ね反射的にレオンハルトにひっつくラウルの肩を抱きとめなだめながら暗闇の中、辺りを見回すと何かが始まる雰囲気に静まり返る食堂内その前方中央に人が立つ気配を感じた。そして、
 
 
「―――」
 
 
 人の言語として聞き取れない独特の呪文が聞こえた瞬間、食堂内各所でキラキラ光る光の玉が現れたかと思えばヒュンヒュン飛び回り、光の軌道を残しながら室内を照らしていく。
 その幻想的な美しさに目を奪われ誰もが釘付けとなっているとその玉が中央に集まり前の玉を追いかけるようにクルクルと円を描いて回り出した。
 その度にキラキラ降り注ぐ光の粉。
 落ちてくるその光は暗い室内を充分に照らし、まるで星屑のシャワーを浴びているようだった。
 
 
「きれぇー…」
 
 
 落ちてくるキラキラに手を伸ばし触れた途端フワッと消える現象に驚き目を丸くするラウル。頭にはたくさんのキラキラを纏っていた。
 
 
「頭すごい光ってるぞ」
「そう言うレオくんも、すっごくキラキラしててかっこいいね」
「……」
 
 
 にっと笑うラウルに目を丸くし、じわじわやってくる照れくささに無言で頭を払うレオンハルトの様子を不思議そうに首を傾け見ていると、頭上でクルクル回っていた玉がピタッと止まる。
 
 
「あ、クライマックスかな」
 
 
 視線を再びレオンハルトから食堂中央の上で留まる光の玉に向ける。誰もがその最後はどうなるのか、ドキドキワクワク見つめる中、それは一瞬だった。
 
 等間隔を空けて円形上に並ぶ光の玉。
 
 それらが勢いよく中心に集まると強い光を放ちパンっと弾けて飛び散った。
 眩しさに目を開けてられず、次に目を開けた時、テーブルの上には豪勢な料理がズラリと並ぶ光景が広がっていた。
 
 
「わ、わぁぁっいつの間に!」
「ラウル、前」
 
 
 目の前の料理に目を奪われ、その存在に気付かないラウルにレオンハルトが指を指し視線を誘導した。
 
 
「?――っ!リカ様っ」
 
「新入生の皆さんアール寮へようこそ」
 
 
 暗闇の中、前方で呪文を唱えたのはリカルドだった。
 優しい微笑みを携え挨拶をするリカルドに、全神経を集中させ見つめるラウル。その視線と姿勢にレオンハルトは入学式中ずっと隣で見ていたままの姿だなとデジャブを感じながら苦笑していた。
 
 
「今宵はアール寮の仲が深まるよう、楽しい時をお過ごしください」
 
 
 短くも長くもないリカルドの挨拶も残るは乾杯のみ。名残惜しく感じながらもテーブルにある各グラスを手にリカルドの音頭を待っていると、不意にラウルの横を何かが通り過ぎる。それがアルフレッドだと認識する頃には前に立つリカルドの手からグラスを奪うアルフレッドがいた。
 突然の事に一瞬目を丸くするリカルドだったが、アルフレッドの自由気ままな性格をよくわかっているからこそ、何も言わず黙って一歩下がる。
 
 
「ぇ、えっ、リカ様のご挨拶は!?乾杯は!?」
 
 
 戸惑い不満をあらわにするラウルの態度とは裏腹に食堂内はアルフレッドの登場を黄色い声で歓迎していた。その反応に気を良くしたのか、自分の顔がいい事を自覚している表情でニヤリと笑ったアルフレッドはズシンと腰にくる重低音ボイスを食堂内に響かせる。
 
 
「いいかお前らよく聞け――これから一年、俺が寮長の間は絶対に迷惑かけんじゃねーぞ。面倒事はごめんだ。やらかす時はバレずに上手くやれ頭使え、わかったな」
 
 
 横暴な言い方にも関わらず食堂内は割れんばかりの「はい!!」で揺れていた。ある一角のテーブルを除いて。
 
 
 
 
 
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