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第一章【新生活】
1-14 歓迎会(2)
しおりを挟む案内されたテーブルには十二人中九人が座っていた。左側は既に六人埋まり、反対壁側の席には三人が両端に別れて座り、その真ん中に座れそうだった。
端っこに座りたかったラウルだが、変わってくださいとも言えず黙って空いている真ん中へレオンハルトにピッタリくっついてちょこんと座った。そしてこのまま黙って過ごしていたかったが、やはり歓迎会という名の交流会。二人の丁度目の前に座っていた美人な男性とカッコイイ男性がニッコリ笑い、美人の方が声をかけてきた。
「こんにちは」
「こんにちは」
「……」
先にレオンハルトが挨拶し、次を待つが下を向いたまま黙りこくるラウルをみかね肘で打つと「はぁっ!」と声を出しさらに注目を集め顔を真っ赤に染めていた。手で口を抑え、涙目で訴えてくるラウルに苦笑しながらとりあえず挨拶、と目配せする。
こくこく頷き、チラリと目の前の先輩方を見ると、落ち着かせるためかスーハーと深呼吸をする。そんなラウルを全員が見守っていた。
「……ここここんにちははじめましてラウルです」
「落ち着け」
勢いよく頭を下げるものだからそのままテーブルにぶつける手前でレオンハルトが手を差し込みなんとか強打は避けることができた。けれど、周りはシーンと静まり返る。
「レオくん……帰りたいです」
「もう少し頑張れ」
「うぅ……」
頭を支える手を離そうにも、ラウルに両手で掴まれ顔を隠すのに使われる。全然隠れてないから視線集めてるから、というレオンハルトのツッコミは心の中だけで留めておいた。
すると、前方からくすりと控えめな笑い声が聞こえてくる。視線をあげると美人な先輩がくすくす笑っていた。
「二人は仲良しなんだね」
「……そうですね、こいつほっとけないので」
「だね、何となく見ててわかるよ。あぁ、自己紹介がまだだったよね、僕は4年生のクリス・ハリードです。リカルド様の親衛隊の存在は知ってるかな?その隊のトップが僕です」
リカルドの親衛隊。その言葉にラウルが過剰に反応した。
「!!!リカ様を支える素晴らしい集まりのトップの方ですか!?わぁお会いしたかったです!どうすればその会に入れますか?俺もリカ様を陰ながら支えたいです!」
今までの人見知りはどこにいったのか、目を輝かせ身を乗り出し積極的にペラペラ話していく姿に一行は若干引いていた。
「ラ、ラウルくんはリカルド様の弟ぎみだと伺っているんだけど…?」
「はい!確かに俺はリカ様の義弟ですが、リカ様を尊敬し崇拝しているので一歩離れたところからリカ様の役に立てるのが嬉しいです!あ、でも頭を撫でて貰えた方がもっと嬉しいです」
「そ、そうなんだね…」
事前にラウルの情報は得ていたのかもしれないが、その様子からおそらくリカルドに対する熱量は想定外だったらしい。全員が何か違う…と目配せをし合っていた。
「えっと…リカルド様への想いはすごくよくわかったよ。だけど、親衛隊への加入はちょっと保留にしてもいいかな、リカルド様に確認取ってみるね」
「はい!よろしくお伝えください」
にっ、と笑うその笑顔に誰もが心ほっこりし、癒しの空間となっていた。
「そもそも僕たちは全員その親衛隊のメンバーなんだけどね」
その言葉に、「やはり」と思うレオンハルトと、「わっ皆さんリカ様を慕う方達ですか!?」と一気に嬉しそうに心を許すラウル。
「事前にリカルド様から、ラウルくんをよろしくねと言われていたんだ。だからお近付きになりつつラウルくんの学院生活もサポートできたらなと思っているので――」
「いえ!俺の事はお気になさらず、今まで通りリカ様に全力を注いでください!」
むふん、と鼻息荒く言い放ったラウルにまたしてもその場がシーンと静まり返るのだった。
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