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4【就任披露パーティ】
4-16脱出(2)
しおりを挟む見張り役はいたのだが―――
どうしてこうなったのか
『えぇ~ミケ、笑顔下手~かわいい~やばぁ』
『むむむ…かわいい…照れる…俺、顔怖いけど、中身臆病、だから、舐められないように、いつもキリッしてる』
『あ~は~ん、なるほどね~』
「……」
目の前で繰り広げられる、きゃっきゃうふふとした会話。
先程すごい形相で入ってきた大柄の熊みたいな見張りは名前をミケと名乗り、何故か今、ひとまわり以上小柄な美樹彦さんと仲良く手を繋ぎ、ほのぼの楽しそうに話しながら廊下を歩いていた。
そう、僕たちは驚くほどあっさりとあの部屋を抜け出せてしまっているのだった。
『ん~…でも僕ミケのそのギャップいいなって思うよぉ親しみやすい』
『……ミキ、いいやつ、すき』
『あはは~僕もミケ好き~』
誘拐されている身だという自分たちの状況を忘れてしまいそうになるほど、目の前で繰り広げられる流暢な英語の会話はまるで女子高生のような内容で、しまいには二人の周りにポコポコお花が飛んでいるように見えてくる。
そんな二人の一歩後ろから着いて歩きつつ、今のところ人気のない廊下をキョロキョロ伺い僕だけでも警戒を忘れず進んでいた。
あの時、怒声とともに部屋に乱入してきたミケさんの見た目とその威圧感から初めは萎縮してしまった僕たちだったが、瞬時に気を取り直し復活した美樹彦さんは負けじと御手洗に行きたいとごねにごねた――結果、その勢いに圧倒されたミケさんの本来のオロオロとした性格が顔を出したのだった。
そこからは美樹彦さんの本領発揮。
国籍問わず、どんな男でも手懐けるその力が本物であることを裏付け、美樹彦信者が増える決定的な瞬間。
相手に隙があるとわかると物怖じしない態度でぐいぐい話しかけあざといボディタッチ、みるみるうちに開かずの扉が開き、気付けば仲良しこよしの大熊と子猫が手を繋ぎ散歩するかのように薄暗い廊下を闊歩していた。
『……ねぇねぇミキ、つかさ、怒ってる…?ずっと怖い顔してる』
『ん~多分つかさくんは真面目さんだから、この状況に頭が追いついてないんじゃないかな』
『……んぅ?』
『あははっミケ、首こてんってしてかわいい~大丈夫怒ってるわけじゃないと思うよ。ね、つかさくん!』
「!!」
ミケさんが登場して以来、申し訳ないが自分は完全に空気になり美樹彦さんに任せっきりにしていたため、二人が突然後ろを振り返り、話を振られ咄嗟に反応が遅れてしまった。
そんな僕を、きょとんとした表情の凸凹コンビの視線がじーっとこちらを見つめていた。
「えっと……」
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果たして本当に船🚢なのかはったりなのか…
🚢だろうな〜
御門と一柳で何とか救って欲しい
しかし今までの行いのツケだろうね
( ・ㅂ・)و ̑̑
巻き込まれのつかさの為に楓真激おこだろうな〜
誘拐とはね…あらあら💦
はて実は逆の目的誘拐なのでは?と思ってしまったり
船に乗る前に早くぅ
ってもう海の上?
楓真はもう、つかさを専属秘書にでもして常に隣に置いておけよと言いたいw
つかさは暴力を受けまくった人生の割に無防備で抜けているしハラハラします。
感想ありがとうございます🙂
んんんっとなってしまうような展開にもかかわらず、ここまで読んでくださって誠にありがとうございます🥲
なかなか上手く展開の緩急が纏まらず締まらず未熟者ではありますがラストスパートに向けて頑張りますので、お付き合い頂けましたら幸いですが、絶対にご無理だけはなさらず😣💦楽しんで読んでもらいたいのに読者様のストレスになってしまうのはこちらの意図に反してしまうので😭