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4【就任披露パーティ】
4-6誘拐(1)
しおりを挟む壇上で話すキミはいつにも増してキラキラ輝いていた。
そんなキミを傍で支え、
一番近くで見ていたい―――
これが僕の願い。
*****
「―――っ、ちょっと、ねぇっ」
「……ん」
「ねぇっ起きてってば!」
「……み、きひこ…さん?」
重たい瞼を震わせながらゆっくり開くも、ぼやける視界はすぐに状況を理解することが出来なかった。
なぜ自分は今、冷たい床に寝そべっているのか。
そしてなぜ、そんな僕を心配そうに見下ろす人物がかろうじて美樹彦さんだとわかるくらいの薄暗い空間にいるのか。
脳内は無数のはてなが飛び交っている。
つい先程まで参加していた煌びやかなパーティから一転、なぜそんな事態になっているのか、全然理解が追いつかなかった。
「良かったぁ…目覚ました……起きれる?」
「ん…すみません、ありがとうございます」
一人で不安だったのか僕が目を覚ました途端ほっと安堵する美樹彦さんに手を借りながらなんとか上体を起こし、自分達の現状をサッと確認しながら周囲にも視線を巡らせる。
お互い手足も口も特に封じられた形跡は無く、窓もない薄暗く狭い部屋に二人で入れられている、という事だけはわかった。
「……えっと…ここは――?」
「僕も場所はわかんない……ちなみにあの扉は鍵がかかってて開かなかった」
「そうですか……おそらくあの時、ですよね…誰かが後ろから…」
「多分……僕もそう思う、けど、なんか、あんたと会ってからの記憶が曖昧で」
「……同じくです」
遡って思い起こすのは、意識を飛ばす間際のこと。
無事乾杯まで終わり役目を果たした楓真くんを袖下で迎えようと待っていたところに湖西くんに声をかけられ、そこでまさかの美樹彦さんが会場にいらっしゃっている事を知ると慌ててロビーへと向かった。
元々用意されていた美樹彦さんへの招待状は破棄されてしまっている。
そんな正式な招待ではない身でここまで乗り込んで来るなんて、おそらくお父様である一柳代表には黙っての単独行動なのだろうとすぐに予想がついた。
見つかって騒ぎになるのはマズイ。
その一心で、まだほとんどのゲストが会場内で盛り上がっている内に美樹彦さんを見つけ控え室へ連れて行こうと辺りを見回すも、その姿は見当たらなかった。
湖西くんと二手に分かれ、探すこと数分―――。
ロビー廊下を奥へ奥へと進むうちにたどり着いた人の気配も無く、人目につかないだろう、そんな場所で、ぽつんと佇む美樹彦さんを見付けた時はつい、安堵の息を吐き出した。
「美樹彦さん!よかった、居た……」
「っ!……突然、来てごめん…なさい……」
初っ端から大人しく、しおらしい態度におや、と思うところはあれどさすがに緊張しているのだろうと、理解した風に何も言わず、場所を移動しようと彼に向けた視線が、突如真っ暗に染まった―――
「!?」
「えっ、何!?なんで!?」
どこから現れたのか、後ろから人らしき物体に目を覆われ、身動きを制限される。突然のことにパニックになりかけるが、そういう時こそ冷静に状況判断をするべきである、と自分を律し、なんとか取り乱さず息を潜めていた。
しかし、これから何をされるのか恐怖である事は間違いなく、必死に神経を研ぎ澄ませるのに集中する。
聞こえてくる感じ美樹彦さんも同じ状況だと分かった。
「例のオメガ確保。思ったよりチョロすぎ……だけど、なんか二人居る、どうする?」
『連れてこい』
「了解」
「んんんんぅっんんんっ!!」
「んんん―――っ」
短いやり取りを最後に問答無用で嗅がされたタオルによって、僕たちの意識は遠のいていった。
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