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4【就任披露パーティ】

4-4番ファーストside.楓真(1)

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 忙しい中、会社一丸となって準備してきたパーティの最も要となる代表挨拶も無事、乾杯まで終えることが出来た。
 壇上から見渡す名だたるゲストや、会場の隅に控える社員たち、この全ての人々に支えられ、御門ホールディングスはいままでも、そしてこれから先もさらに大きく発展していくだろう―――いや、させていく。
 
 
「頼んだよ、楓真社長」
「―――はい」
 
 
 抱いた決意を胸に、父さん――会長と交わした熱い視線と固い握手は深く記憶に刻まれた。
 
 
 
 
 
 *****
 
 
 
 いつまでも鳴り止まない拍手を背にゲストから死角になった袖へと捌けた途端、思考は瞬時に切り替わる。御門の従業員全ての将来を背負った会社のトップから、『お疲れ様』と微笑みを携え出迎えてくれる番を求めるただのアルファへと。
 
 
 だが―――……
 
 
「あれ……花ちゃん、つかささんは?」
 
 
 てっきり袖下で見守ってくれているものだと思っていた最愛の姿を探すも、見当たらない。
 つかささんの代わりにその場にいた花ちゃんをチラッと視界に入れるだけで視線は忙しなく辺りを見渡せば、開口一番それですか、と呆れた笑いを受けるが気にせずもう一度「つかささんは?」と繰り返す。
 
 
「はいはい相変わらずどんな場面でも番想いの先輩ファーストでなによりです」
「当然」
 
 
 多少普段と着飾る衣装は違えど、胸を張る俺と、肩をすくめる花ちゃんという対比はあまりにも見なれた光景。
 つかささんとの出会いと同じくらい長い時間俺たちを見守り、よく知ってくれている花ちゃんだからこそお互い慣れた様子で接することが出来ていた。
 
 
「んで?」
「んー…先輩ならさっき僕たちと入れ替わるように出てったよ?慌ててたから、御手洗かも…?」
「……ふぅん」
 
 
 生理現象に口を出す権利もなく、そう言われてしまえば、そうか、と受け止めるしかない。
 自然と視線を出入口へと向けその姿を探すが、やはりそこでもつかささんの姿をとらえることは出来なかった。
 
 
「先輩が戻ってくるまでは僕で我慢してくださいな」
「え~…つかささん補給しなきゃもう無理そ~」
「くっそこの番馬鹿めぇ……さっきまで壇上で喋ってた人と同一人物とは思えないよ…」
「愛妻家と言ってくださいな」
 
 
 かわいい顔をとことん歪め、じとーっとした視線をいただくも、今度もまたしれっと受け流す。
 すれば、数秒の沈黙の末どちらともなく、ぷっと吹き出すのも時間の問題だった。
 
 
「冗談はさておき……先輩より先に言うのはどうかとも思ったけど、言っちゃうね。楓真社長、改めて社長就任おめでとうございます」
「ありがとう花ちゃん。これからも頼りにしてます、よろしくね。――松野さんも、見回りありがとうございます」
「わぁ、松野さんお疲れ様~」
「お疲れ様です。特に今のところ会場内異常なしです。社長、就任おめでとうございます」
「ありがとうございます」
 

 ちょうどやって来た松野さんが自然と俺と花ちゃんの間に割り込む姿に、相変わらずやってんなぁ…と内心苦笑しながら何も言わず目を瞑るに徹し、穏やかに会話を繰り広げる。
 そのまましばらく会場内から死角となった袖下で挨拶回りに繰り出す前の小休憩という名目で雑談しながらつかささんの戻りを待った。
 
 
 
 そう、その時は、御手洗ならすぐに戻ってくるだろうという軽い気持ちだった。
 
 しかし、予想に反し無情にも時計の針が5分10分と進むにつれ次第に、本当にただの御手洗なのか……?と疑い始めた不安と心配を裏付けるかのように、血相を変えて飛び込んできた湖西の表情が最悪の事態を物語っていた―――。
 
 
 
 
 
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