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3【招待という名の呼び出し】

3-27お姫様の謝罪side楓真(5)

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 途中、美樹に声をかけられようが俺の歩みは一切止まらない。
 ノンストップでつかささんのもとまで突き進む。
 視線も目的地もつかささんに釘付けだった。
 
 
 残すところその距離があと数歩という所にきてやっと速度を落とすと、手を伸ばせば届く距離で止まる。
 
 
 あぁ、つかささんだ―――
 
 
 視界いっぱいにつかささんしか写らない。
 
 離れていたのは僅か数時間。
 それでも、大企業の代表という腹の内がわからない相手のもとへ自分無しで送り込んでしまった心配は凄まじく、ざっと確認したところ傷一つない無事な姿にほっと安堵が漏れる。
 
 けれどまだ足りない。
 
 さらに安心したいがために、同じ男の手とは思えない細くて綺麗なつかささんの手をそっとすくい取り、コワレモノを扱うかのように丁寧に指同士を絡ませ合うと、感触でもつかささんを感じそこに居るのだと実感する。
 指の腹で親指と人差し指の間の水かき部分を優しく擦れば、ピクリ、と小さく反応し恥ずかしそうに俯く仕草が可愛くてたまらない。
 
 
 でもちゃんと顔が見たいな。それに―――
 
 
「ねぇつかささん」
「ん?」
「もう一度言ってください」
「……何を?」
 
 
 きょとんと見上げてくる小動物みたいな愛らしさに内心、んんっと悶えながらも表面上は必死に取り繕う。
 つかささんの前ではできるだけ『かっこいい楓真くん』でいたかった。
 
 
 気を取り直してつかささんを見やれば、いまだ何を求められているのかピンと来ていない様子についかわいいと笑みがもれる。
 ここでもったいぶっても意味は無い。すぐに正解を教えよう。
 
  
「俺は誰のものなのか、もう一度つかささんの口から聞きたい、聞かせて?」
「っ――!」
 
 
 ギョッと目を見開くつかささんにたたみかけるようにおねだり攻撃を炸裂させる。
 
 彼がこれに弱いと知っていて。
 
 絡む指を持ち上げ、自分の頬へと導く。スリ、と頬ずりと共に上目遣いで「ねぇつかささん」と囁くように呼びかける。
 
 
「俺は、誰のもの?」
「……っ、」
 
 
 ビクッと大きく肩をふるわせたつかささんの目が、みるみるうちにとろんと蕩けていく。

 あぁ、今つかささんの視界には俺しか映っていない。俺しか見えていない。

 
「ふ…ま、くんは…」
「うん」
「……ぼ、く…の」
 
 
 聞きたかった言葉を直接聞けた、その瞬間、ゾクッとした高揚感が一気に背筋を這い上がった。
 


「正解―――」




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