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3【招待という名の呼び出し】
3-24お姫様の謝罪side楓真(2)
しおりを挟むふと、順調に下っていたエレベーターの速度が僅かに減速していく気配から自分が押した1階にたどり着く手前途中の階で一旦止まるのだと瞬時に察し、つい落胆の呟きが漏れてしまう。
「……マジか」
止まるということは誰かが乗ってくるという事で、普段あまり接する機会のない社員からしたら、密室空間で予期せず社長と同乗するというだけでも気まずいだろうに、今の自分の状態は―――
だいぶよろしくない。
いまだ威圧的なフェロモンが収めきれず、ピリついた空気を放ち続けている。そんな中に他人が乗り込んでくれば、アルファに耐性のない場合下手したら耐えきれず失神してしまう可能性だって十分に有り得る。
「……まずいよな」
世の中すぐネットニュースになる時代。社内で救急や警察を呼ぶという最悪な見出しが流れるような事態を防ぐためにも咄嗟に余所行きの笑みを顔面に貼り付け、無法地帯のように放出されていたフェロモンを無理やり引っ込める。
ついでに会社のトップとして日々の感謝を込めた労いの言葉を準備しながら開く扉を見つめ―――
いざ対面した人物の顔を認識するやいなや一気に肩の力が抜けるのを感じた。
「あ……社長、お疲れ様です」
「――なんだお前か…」
「えぇ……俺で失礼しました」
出会い頭にそんなことを言われ困惑した表情を見せたのは奇しくも湖西だった。
一般社員より全然大歓迎な遭遇に、いや、と首を振りむしろお前でよかったと素直に伝える。
そんな俺の態度に、え、なに、と警戒心を露わにする湖西の腕を思いっきりガシッと掴んだ。
「えぇっ怖い怖い!何ですか!?」
「丁度よかった、湖西、今それは急ぎの仕事?そうじゃなかったら一緒に来て」
「や、どこに……わ!?」
突然のことについてこれず困惑しっぱなしの湖西を力ずくで引っ張りこむと問答無用でボタンを連打し、閉まったエレベーターは再び下降を始めた。
前後左右上下まで閉ざされた空間でなすすべも無く連れていかれる状況に、もちろん湖西は黙ってはいなかった。
「一体どこに行かれるんです!?社内ですか?それとも、もしかして……社外?」
「ん、一柳本邸」
「………は?それって」
「お前も美樹と連絡取りたいんだろ?いつまでも来ない返事をいい子ちゃんで待ってたら埒が明かない。直接会って言いたいこと言いな。――ってことで、今から行くから同行しろ、社長命令です」
「っ、」
突然のことに目を見開き、ぱったり黙りこくってしまう湖西の心の揺れを感じながらも残念ながら決心がつくまで待ってあげれるほど時間に余裕はなかった。
目的階へ到着したアナウンスと共に開く扉。
戸惑いながらも後をついてくる湖西の気配を感じながら足早にエントランスをぬけ駐車場へと向かう。早くつかささんの元へ、そんな逸る気持ちをグッと堪え自分の車へと乗り込んだ。
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