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3【招待という名の呼び出し】
3-7予期せぬアポイント(3)
しおりを挟むどうか繋がらないで……という願いも虚しく、多忙を極めるはずの一柳代表本人と電話が繋がってしまい後戻りできない状況に、ただ楓真くんを見つめるしかできない僕は一体これからどんな会話が繰り広げられるのかハラハラドキドキと手に汗握りながら隣で見守っていた。
そして、最初に口を開いたのは楓真くんだった。
「昨日ぶりです、宗介さん」
『――楓真か。お前が電話なんて珍しいな』
「はぁ…白々しいですよ。俺を介さず直接つかささんに連絡を取るようなまねはしないでください」
『ふ、お前の番に連絡したところで、一人で握らずすぐにお前に報告に行くようならこうしてお前から直接文句の電話が入るだろうと思ってな。報告すらしないのなら、お前たちの関係はそれまでだって私は判断した』
「……勝手に試さないでください」
電話越しに聞こえてくる一柳代表の言葉に唖然と目を見開いてしまう。
御門のトップに立つ人間の番としてか、それともその秘書としてか――とにかく知らないところで自分の対応を試されていた事実にゾッとし、反芻する。果たして自分の行動は正しかったのだろうか……
『もうかかって来たって事はあれからすぐお前に報告したか……想像以上によく躾できてるじゃないか』
「そういう風に言うのはやめてください!」
オメガ軽視な一柳代表の発言に瞬発的にカッとなる楓真くんを咄嗟に宥める。
目線と僅かな首振りだけで自分は大丈夫だと伝えれば、数秒僕を見つめたのち、はぁ…と息を吐き出し気持ちを落ち着かせる様子でギュッと手を握られた。
「……すみませんでした」
『ふん、まぁいい。ところで、確かお前は今日14時からウチのものと商談が入ってるという認識だが、間違いないか?』
「……そうです、弊社で商談の予定です」
突然楓真くんの今日の予定を聞かれ、渋々答える姿を尻目にスマホで確認できるスケジュールをサッと開く。確かに今日14時からここ御門ホールディングスで昨日に引き続き一柳ホールディングスの幹部陣がやって来て報告会が開催され、今日は社長である楓真くんも出席となっていた。
嫌な予感しかしない……。
『丁度その時間私も時間が空いていてな』
「宗介さん、まさか……」
『お前は出席する義務があるだろうが、私は優秀な部下に任せておけば問題ない。――その時間に迎えに行くとお姫様に伝えておいてくれ』
「は!?ちょ、宗介さん!?」
『お前は会社の代表として商談に穴を開けるわけにはいかないよな、大人しくそっちに集中していろ。その間に私はお前のお姫様と話がある。心配するなとって食うわけじゃないし終わる頃には無事送り届けてやる。話は以上だ私は忙しい、切るぞ』
「宗介さん待っ――」
叫ぶ楓真くんの制止も空しく、握られたスマホからは通話が途切れた無機質な音だけが聞こえていた。
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