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2【動き出す思惑】
2-22襲来(6)side楓真
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「―――話は以上だよ。すぐに知らせなくてごめんね、私の判断ミスだ」
「つかささん…っ」
父さんが持ってきた話を聞き終わるやいなや、至る所に足をぶつけながら立ち上がり、体はまっすぐ秘書課へと向かっていた。
まさに俺が調べようとしていた美樹の息のかかった人物。その情報を父さんと、秘書課のボスである知弦さんは既に知っていた。
どうして判明した時に教えてくれなかったんだ、など二人には色々文句はあるが、そんな事より今でもそいつが何食わぬ顔でつかささんのそばにいる事を考えると鳥肌が立つ。すぐさまつかささんへ共有し、用心してもらう必要があると伝えたかった。
足早に秘書課へ向けて進んでいると、あと残すは直線のみというところで丁度、どこかへ出ていたのか資料片手に少し離れた向こう側から知弦さんが曲がってやってきた事に先にこちらが気がついた。すぐに向こうも俺の存在に気付くと軽く手を上げお互いを認識し合いながら距離を詰めていく。
「楓真、おつかれ。花から聞いたぞお姫様襲来事件。相変わらず強烈だったらしいな」
人の苦労も知らないでニヤニヤ笑いながら他人事のように言う姿に最早文句も出ず、ため息ひとつついて秘書課の扉の前で落ち合う。
「知弦さんには父さんとまとめて後から文句聞いてもらいますから」
「お、なんだ、楓珠から聞いたのか」
「聞いたのか、じゃないですよ!知ってたんなら教えてくれたっていいじゃないですか!昨日もそんなやつも一緒に飲みに行ってたなんて考えたら…恐ろし過ぎる……とにかく、つかささんに伝えるのでちょっと時間ください」
「午前中も散々うちの秘書の時間独占してたらしいが?」
「……職権乱用行使します」
「はいはい、好きにしてください社長殿」
わざとらしく丁寧なお辞儀をしながら秘書課の入口を開け、どうぞ、と先を譲る知弦さんを数秒じとーっと見つめた後、そんな事より、とここへ来た目的を思い出す。
開けてくれている扉から一歩室内へ足を踏み入れざっと見回すと、自分のデスクで仕事をしていた花ちゃんと目が合い軽く手を振りながら意識はつかささんを探していた。
「楓真くん?どうかした?」
「花ちゃんさっきはごめんね、お詫びはまた後でゆっくりさせて、それよりごめんつかささんに話があるんだけど……つかささんは?」
キョロキョロくまなく室内を探すがつかささんは見当たらない。奥まった所に居るのだろか、とそちらに足を向けようとしたその時、花ちゃんの言葉でぴたりと足が止まってしまった。
「先輩ならさっき、後輩っちと一緒に資料を探しに出ていったよ~僕が教えるべきだったんだけど、丁度手が離せなくてまた先輩が行ってくれちゃった」
「……は?」
後輩、と聞いて慌ててもう一度室内をざっと見渡す。
そして次の瞬間、サッと顔面から血の気が引いていくのを感じていた。
「……やられた」
いまこの部屋にいない人物。
一人はつかささん。
そしてもう一人、一か月前から何食わぬ顔して秘書課へと入り込み、昨日今日で自然とつかささんのそばにいた美樹の息がかかった人物。
その二人だけがこの部屋にいなかった―――。
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