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2【動き出す思惑】
2-4それぞれの朝(4)
しおりを挟む楓真くんに支えられたままそういえば、と改めて楓珠さんの姿を見やると既にスーツにコートを着込みいつでも出勤可能な状態で、それにしては運転手の木村さんが普段迎えに来る時間には早すぎる。
そんな楓珠さんの様子を察知したのは僕だけじゃなかった。
「じぃじいっちょ、いく?」
「つぅくんね、ふぅくんとママとパパとじぃじでおでかけ、したい…だめ?」
楓珠さんも一緒に行こうと、あざとい子供たちのうるうるお願い攻撃が始まったのだった。両足にぴっとり張り付かれ見上げてくる双子にもはや楓珠さんはデレデレ顔が隠せていない。
「おやおや?じぃじも一緒に園までお見送り行ってもいいのかな?」
「きてーー!」
「いっちょいこーー!」
「こら、ふぅくんつぅくん。じぃじが出発するにはまだ時間が早いからここでバイバイだよ」
子供たちのわがままに楓珠さんを付き合わせる訳にはいかない、慌てて言い聞かせようとする僕を「つかさくん」と止めるのは楓珠さんの声だった。
「よければ私も孫のお見送りに同行させてもらいたいと思うんだけどどうだろう」
「ですが……」
「実はね、元々楓真くんの車に乗るつもりで朝の木村さんのお迎えは断ってるんだ。だから足のない私をどうか乗せてやって?」
「うわ、確信犯…」
「楓真くん、なにかな?」
「いーえ、何でもありません。つかささん、父さんがこういってるし、一緒に行きましょ」
これ以上僕が口を出すこともなく、本当に大丈夫かと様子を伺いながらもじゃあ…と子供たちの希望を叶えてあげる。
「……すみません楓珠さん、よろしくお願いします」
「もちろんだよ。かわいい孫たち~じぃじも一緒に行くよ~」
「やったーーじぃじもいっちょ~!」
「いっちょ~!」
わーいわーいと喜び、一目散に靴を履こうとする双子を僕と楓真くんでサポートする。手のひらサイズの小さな靴を履かせているこの瞬間があと何回あるのだろうか―――なんて、いつも噛み締めながら行っていた。
運転席は楓真くん、助手席には楓珠さん。後部座席の二台のチャイルドシートにそれぞれ楓莉とつくしを乗せ、その間に僕が座る。静かに発進した車内の中で双子が興奮して暴れないよう常に落ち着かせながら楓珠さんを助手席に座らせてしまい忍びない気持ちでいっぱいだった。
「それじゃあふぅくん、つぅくん、今日もいい子で、お友達と仲良く過ごしてね」
「あーい!ママ、パパ、じぃじばっばーい」
「ばっばーい」
元気よく手を振る双子に、楓珠さん、僕、楓真くんもふりふり振り返す。
至って普通のことをしているはずなのに、ただ一つ朝のこの場から浮いていると言える要素としてはおそらく、ビジネススーツをしっかり着こなした男3人組だということ。
そんな僕らを遠目に、お母様方からの視線とコソコソ話はまさに針のむしろ状態。
それもそのはず、すでにママさん方のアイドルと化している楓真くんに加え、その楓真くんを大人の色気たっぷりにダンディ化させたような楓珠さんまで参上した今朝のお見送り。
今まで以上に大盛り上がりだった。
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