【BL】欠陥Ωのオフィスラブストーリー

カニ蒲鉾

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2【動き出す思惑】

2-2それぞれの朝(2)

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 頭痛も幾分かマシになった頃合いを見計らいベッドから起き上がると、パジャマのまま軽くカーディガンを羽織りリビングに顔を出す。続くダイニングキッチンで手際よく朝食の準備をしてくれているお目当ての姿をすぐに見つけることができた。
 楓真くんの方も、丁度とき終わった卵をフライパンに流し入れ熱し始めたところで僕に気が付き、器用に声をかけてくる。
 
 
「起き上がって大丈夫そうですか?もうすぐ出来ますから、座って待っててください」
 

 何か手伝うべきかと思ってやって来たが、ありがたくその言葉に甘えダイニングテーブルに腰掛けると、そこから見えるキッチンの景色を頬杖をついてぼぉっと眺める。ジューっと卵の焼ける音が心地よかった。
 
 
 
 
 
 ―――待つこと数分。
 
 
「はぁい、お待たせしました~」
「ありがとう楓真くん」
 
 
 目の前に置かれたのは、トーストとサラダとスクランブルエッグがバランスよく盛られたワンプレート。マグカップには湯気がたつコーヒーが注がれる。
 美味しそうな香りに少しは食欲もわき楓真くんを見上げると、彼は一つ微笑みを落としそのまま座らずキッチンへと戻っていく。軽くキッチンの片付けまで済ませる楓真くんを大人しく待っていると、やがて、僕がいまだ食事には手を付けず自分を待っていることに気が付いたのか、慌ててエプロンを外しながら準備が整ったテーブルまでやって来る。

 
「えぇ俺を待ってないで先食べててくださいよ~ごめんなさいお待たせしました」
「ううん、ご苦労さま」
 
 
 目の前の椅子を引く楓真くんは寝起きのスウェット姿にも関わらず爽やかさとカッコ良さは番の贔屓目から見ても誰にも負けないな…なんて思う。そんな楓真くんをぼぉっと眺めてしまっていると、つかささん?と心配そうに覗き込まれ声をかけられた。
 
 
「まだ頭痛や吐き気辛いです?無理して全部食べなくていいからね、でも何かしら口にはして欲しいのでサラダだけでも…残った分は俺が食べます」
「大丈夫だよ、美味しそう。いただきます」
「どうぞ召し上がれ」
 
 
 心配そうに見つめられる視線を感じながらフォークを手に取り一口分のサラダを静かに咀嚼し嚥下するまでを満足いくまで見届けた楓真くんもいただきます、と食事をはじめた。
 
 
 テレビもつけず、カチャカチャとお皿とフォークがあたる僅かな音のみが響く食事風景。
 初めは一定の間隔でフォークを口へ運んでいたが、結局みるみるうちに食事に手を伸ばす速度が減速していった僕を見逃さない楓真くんは「無理しないで」とスマートな流れで自分の全てたいらげたお皿とまだ半分は残っている僕のお皿をトレードしていく。
 やっぱり楓真くんは誤魔化せない。彼は僕の様子の変化を誰よりもよく見て察知するエキスパートだった。
 
 一人前を既に食べ終えているにも関わらず、変わらないスピードで気持ちのいい食べっぷりを披露する楓真くん。こうして、僕に罪悪感を与えないよう配慮してくれる心優しい番にそれでもやはり申し訳なく思いながらご馳走様でしたと手を合わせると、お皿はそのまま置いておくよう言われる。
 
 
「後の片付けも俺やっとくのでつかささんは先に出勤の準備しちゃってください」
「でも、何から何まで…」
「いーの、俺は5分もあれば整います」
 
 
 だから無理せずゆっくり準備してきてください、と背中を押された勢いのままリビングを出てきてしまった。
 閉めた扉にとんっと背をもたれさせ、ふぅ…と小さく息をつく。とことん僕を甘やかす楓真くん。このままじゃ僕は楓真くんがいないとダメダメ人間になってしまうよ…なんて、届かない心の声を残し寝室へ準備に向かった。
 
 

 
 
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