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1【職場復帰】

1-28お迎えside楓真(8)

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「――うん、うん、ごめんいつもありがと父さん。じゃあ明日の朝子供たち迎えに行くから…うん、おやすみ」
 
 
 とんっと画面をタップし通話を切る。
 
 コインパーキングまではなんとか歩いてたどり着いたつかささんの様子から勝手に判断し、車に乗り込んですぐに父さんに電話を一本入れ終えるとスマホをしまいながらシートベルトを締め「お待たせしました」と助手席に座るつかささんをチラッと見やる。
 すると、やけに静かだなと思っていたつかささんは全身の力を抜いたように深く座席に沈み込み手の甲で顔を覆っていた。そんな様子にギョッと驚き、気分がまた悪くなったのかとあらかじめ買っておいた水を片手に、締めたばかりのベルトを外すとつかささん側に体を乗り出し顔を覗き込んだ。
 
 
「つかささん?気持ち悪いです?」
「―――んーん、大丈夫…。
 いろんな人に迷惑をかけて自分の不甲斐なさに猛反省中…。帰ったら子供たちにいっぱいよしよししてあげたかったのに、こんな状態じゃ逆に心配かけちゃうし…親失格だよ…うぅ…」
「もー…びっくりした、そんな事ないですから。とりあえず水飲んでください、寝てていいですからね家着いたら起こします」
「何から何までごめんね…ありがとう」
 
 
 しゅんとしながら水を受け取り口をつける姿をハンドルにもたれ掛かりながら見届ける。数口飲み、口を離すと両手でペットボトルを握りしめ、はぁとため息をもらしていた。
 
 
「――…なんか、僕こんなにもお酒弱かったかな…」
「久しぶりだったからですかね?」
「うーん…」
「気持ち悪くなったらすぐ言ってくださいね、出発しますよ」
「うん。……フェロモン、ありがと…落ち着く」
「はい」

 
 どこか腑に落ちないように首を傾げながらもシートベルトを締めたつかささんを確認し、ゆっくり車を発進させる。つかささんが安心できるよう狭い車内に自分のフェロモンを流し続けながら夜でも明るい都会の道を走り続けた。
 
  
 
 
 十数分後。
 
 
 道中特に渋滞することも無くスムーズに自宅マンションの駐車場へ到着した頃には助手席からすーすーと僅かに吐息が聞こえ、チラッと確認すれば安らかな寝顔につい笑みがこぼれた。
 いつまでも眺めていたい気持ちをぐっと呑み込むと最小限の音で運転席を出ては素早く車をまわり助手席側へと移動する。
 ドアを開け、眠るつかささんの顔を眺めながらそっとシートベルトを外すとまったく起きる気配のない熟睡な様子にさらに笑みをこぼすと、体の隙間に手を差し入れる。
 
 
 こんなにも穏やかに眠っているつかささんを起こす選択肢は無かった。
 
 
 普段どちらかというと自分が年上だからと、率先してしっかりしようとするつかささん。
 そんな彼がこんなにも無防備にされるがまま、世話をやかせてもらえるのが楽しくて仕方ない。
 自分のオメガをとことんデロデロに甘やかしたいという思いはアルファなら抱いて当然の欲望。そんな欲をここぞとばかりに発揮しながら、起こしてしまわないよう慎重に横抱きで抱き上げ大切な存在の重みを腕の中でしっかり確かめると、そのまま自宅へと連れ帰るのだった。
 
 
 
 
 
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