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4-13 闇オークション
しおりを挟むつかささんを金で買った。
一通りの手続きを済ませ、通された応接間で一人待ちながら小刻みに震える手をぎゅっと握りしめる。
今世の俺も、そこそこ名の知れたいい所の育ちで金は腐るほどある。だから、つかささんを手に入れる為に使った金はどうってこと無かった。
この震えは、もし今日俺がここに来ていなかったら、他のやつの手に渡ってしまっていたかもしれない―――そう想像した恐怖から来る震え。
何はともあれ結果俺が保護することができた。
大きく息を吐き出す事で気持ちを切り替え、あと少しでつかささんと対面することに備えることにする。
そして、これから先ずっと一緒の未来を、想像する―――。
ギイィィィ――……
待ち始めてどれだけの時間が経ったのか、ようやく時計の針の音以外何も聞こえなかった静かな空間を重圧な扉がゆっくり開く音がかき消していく。
続いて二人分の足音が段々近付いてくるのを、はやる気持ちを抑え、振り返らず待ち続けた。
視界の端を通り過ぎる二つの影。
本来目にしたかった相手は手前の大きな影にピッタリ重なり、その目に映すことは叶わなかった。
それもすぐ、目の前のソファへたどり着くと動きは止まった。
俯き、薄いベールで顔が隠れたつかささんと対面する。
ステージ上で座った状態の時も思ったが、立ったつかかさんは想像よりもさらに小さく痩せていて頭がやっと俺の胸のあたりにあった。
このオーナーの趣味だろうか、後ろはヒラヒラ長いのに対して前面の布は短く足が太ももまでしっかり出た純白のワンピースはまるで花嫁のような格好で、悔しいがとても可憐で美しかった。
「御門様。この度は誠にありがとうございました」
つかささんにばかり向けていた視線を邪魔するようにオーナーが声をかけてくる。
「いえ、一目見た瞬間どうしても欲しくなりまして」
「さすが御門様。お目が高い。さ、こちらが商品になります」
オーナーの手によってぐっと一歩前に出されるつかささんの顔はいまだベールに隠れしっかり見ることが出来ない。
早く完全な姿を一目見たい気持ちで震えそうになる手を必死に誤魔化しながら、そっとベールの端に手をかけた。
持ち上げるベールにあわせ、上がる顔。
初めて何ものにも遮られることなく交わる視線。
気付いた時には手を伸ばし、その頬に触れていた。
「――つかささん」
大きな瞳がさらに大きく見開かれるのをただただ愛おしい気持ちで見つめる。
「やっと…やっと……取り戻せた」
今世のあなたも俺のことは覚えていないかもしれない。だけど、触れた場所から伝わる高揚感が、必死に運命を訴えていた。
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