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4-5 闇オークション
しおりを挟む役目を終え、ステージを降りていく男性の後ろ姿をぼぅっと眺める。
あの一瞬、名前を呼ばれた気がしたのは気のせいだったのだろうか……正直置かれた状況がそれどころではなく確信が持てなかった。
だけど、最中はステージ下の人達から見えないよう庇ってくれた…
それに、今もなお開いたままの僕の脚の間に卑しい視線を無遠慮に投げかけてくる人々とはどこか違う雰囲気で、言ってしまえば場違いのような清潔感を感じていた。
だけど、その人の手で激しくイかされたのは事実であり――仮面の男性は優しい人なのか、それともここにいる他の人たちと同じように人を買う趣味の悪党なのか……考えても意味の無い事をぐるぐると考え、現実から目を逸らしていた。
『さぁみなさま、いよいよ雛鳥のご主人様を決める時間がやってまいりました。果たして、誰のもとへ巣立っていくのでしょうか――』
もとよりうるさかった会場内の盛り上がりはさらに増していく。
『最後に一つ。伝え忘れていた情報が――』
なんだ、とざわめく会場内と同様に、僕までもなんだろう…と耳を傾けてしまう。
『この雛鳥はΩながらにフェロモンを感知する事ができません。反応し発情するのは番となったご主人様のフェロモンのみ。これからはもちろんこれまでも他人のフェロモンを知らない完全無垢な雛鳥です』
僕の欠陥をそんなふうに大勢のもとで晒される。
俯く顔があげられないのは羞恥からなのか、それとも怒りからなのか、ここまできてそんな感情がまだある事にも驚いていた。
一度鳥籠へ戻しましょう、とMCが言うと素早く現れた黒服数名が椅子ごと後ろへ移動させ鳥籠の中へ戻される。その際素早く身体を拭われ格好も整えられていた。
ガチャガチャという音と共に鍵がかけられる。
目を覆うレース越しの視界は再び鉄格子越しに眩しいスポットライトを浴び、腕を頭上で縛られ両足揃えて地面へ下ろしお行儀よく椅子におさまる姿はまるで観賞用の鳥。
『それでは皆様本日最後のお時間です。ご希望の方は御手元の札をあげ購入希望額をご提示ください。10ルビーからはじめます!』
声高々にはじまった競りはドンドン20ルビー50ルビー100ルビーと上がっていく。
この界隈専用の通貨なのだろうか。聞き慣れない単位にその価値が一体いくらなのか検討もつかず、自分がいくらで売られていくのか他人事のように時が過ぎるのを目を瞑り待っていた。
「わしは10カラット出す」
ざわりと会場内が大きくどよめいた。
突然変わった通貨の単位にハッキリとはわからないが大きな数字なのだろうと想像する。
ぼんやり見える視界でその主をとらえると、前方に座る先程ピアスの会話をしていた初老の男性だとわかった。
『じゅ、10カラットでました!他にご希望のお客様はいらっしゃいますか!?カウントはじめます!』
10―――
9―――
8―――
なかなか後続者は現れず、その男性に決まる……そう諦めの気持ちで再び目をつむりかけた、そんな時――
「100カラット」
全ての者を黙らせる、静かな圧が一瞬で会場内を支配した。
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