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5【SS集】
えっちなクリスマスプレゼント(1)side楓真
しおりを挟む12月25日───
早い所だと、ひと月程前から既にクリスマスムードに溢れていた街並みもいよいよ本番当日。
愛する番を喜ばせたい一心で事前に様々な計画を練り準備してきた俺のひと月は、とある社員のたったひとつの書類ミスにより、呆気なく崩れ落ちていた。
12月25日───
社会で働く世の人々にとっては、年末直前、通常運転のド平日です。
◆◇◆◇◆
「ただいま帰りましたぁ…」
時刻は23時を少し過ぎた頃。
一緒に暮らすパートナーが既に寝ていたら起こしてしまうのは忍びないと、最小限音を鳴らさないよう気を配り閉めた玄関扉。それでも挨拶だけは絶対のポリシーから小さく呟き革靴を脱いでいると、奥の方からパタパタ聞こえてくる足音に疲れていた心が一気に安らいでいくのを感じた。
ガチャッと開いたリビングへ続く扉。
明るい光を背中に背負いふわりと微笑む愛おしい番の顔を見た瞬間、情けなくも目尻に涙が滲みかけた。
「おかえり、楓真くん」
「……っ、つかささぁん」
よろよろと手を伸ばす俺に駆け寄ってきてくれるつかささんをすっぽり腕の中に閉じ込め、ぎゅうぅぅと抱き締める。
本来だったらこんな日付が変わるギリギリまで仕事をしているはずではなかった。
イベント事にはあまり触れてこなかったとつかささんが話しているのを聞いてから、今年のクリスマスはうんと喜ばせてあげたいと張り切って色々準備していた。
普段から予約を取るのが難しい有名ホテルのディナーコースをクリスマス当日に見事勝ち取り予約したし、肝心のプレゼントだって仕事の合間を縫って市場調査を徹底的に行いビビッときた品を発注、なんとか当日受け取りに間に合うよう滑り込みに成功した。
そう、準備までは完璧だった……
その予定が狂いだしたのは昼を過ぎた頃───
開発部の重大なミスが発覚し、その埋め合わせにてんわやんわ、急遽県外にある取引先へと直接出向きその会社を出た時にはとっくに定時を過ぎていた。
当然、ホテルディナーの予約はキャンセル、用意していたプレゼントは当日店舗受取時間にすら間に合わなかった。
つかささんを喜ばせるどころか、謝罪の連絡を逐一入れる度に僕は大丈夫だから、と気を遣わせ、こんな時間までひとりで過ごさせてしまった。
何もかも上手くいかない事に珍しく落ち込んでいる自分がいた。
「本当に遅くなってしまってすみませんでした…」
「ううん、むしろ遅くまでお疲れ様、大変だったね。よしよし、よく頑張りました。楓珠さんもよくやったって褒めてたよ」
「~~っ」
すぐに連絡を入れることができたとはいえ、ホテルのロビーでひとり待ちぼうけにしてしまった俺に文句一つ言わず、こうして労い甘やかしてくれるつかささんの感触、つかささんの体温、ふわりと香るつかささんのフェロモン、つかささんから生み出される全てのものが疲れた体にしみわたる。
尊いの極みだった。
肩口にぐりぐり頭を押し付けながら、いまだ玄関先だということもすっかり忘れいつまでもハグをかます俺を黙って受け止めてくれる優しいつかささん。
ポンポンと叩かれた二の腕を合図に顔を上げるまでつかささん補給はしばらく続いた。
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