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報告(1)

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 自分もまだいまいち実感のわかないこの報告を聞いたら、みんなは一体どんな反応をしてくれるのか…

 楽しみであると同時に、怖くもあった───
 
 
 
 ◆◇◆◇◆
 
 
 
 目が覚めてから一度クオーツ立会いの下、老先生に診てもらうと「今は安定しておりますね」と主治医のお墨付きを貰ったものの、心の整理とどう告げるかを打ち合わせするため、しばらくはクオーツと二人きりで過ごした。
 それもその日の内に落ち着くと、日が暮れる前、ようやく他者の入室許可を出した途端、勢い良く駆け込んでくるのは目いっぱいに涙を溜めた世話係だった。
 
 
「ラズ様ぁぁ~っ!」
 
 
 いまだベッドの上の住人のまま、クオーツの手に支えられながら上体を起こしその姿を出迎えた。
 
 
「よ、よかった…よかったぁ!」
「マリン……」
「もっ、も~俺、ほんっっっと~~~に、びっくりして心臓止まるかと思ったじゃないすかぁぁぁっ」
「心配かけてごめん…ごめんね」
 
 
 主従の関係ながら、普段一緒にふざけ合う気心知れた歳上の気さくなお兄さん、そんなマリンが心底心配してくれていたのが見て取れる。
 涙に濡れる頬に手を伸ばし拭いながらこちらまで目が潤みかけていると、逆にその手をガシッと掴まれた。
 
 
「……へ?」
「ラズ様……今日の不調は不摂生が原因ですか!?そうであるのならラズ様のお世話係として一生の不覚…!これからはもっとシェフとメニューを話し合い三食の栄養バランスの見直しと、睡眠時間を管理しますからお任せあれ!」
 
 
 ずずいっと上半身をベッドに乗り上げ、熱量高く語るマリンの勢いにポカン…と一瞬呆気にとられる。
 すぐさまハッと我に返ると変な方向にやる気を見せているマリンの鎮火にいそしんだ。
 
 
「や、マリンマリン、大丈夫、そういうのいいから…クオーツも笑ってないでマリンを止めろよ!」
「ふふ、頼もしいね」
「お任せ下さいクオーツ様!」
「お~い~!クオーツお前適当に返事しないでよ!マリンはいったん落ち着い───」
「ラルド様も!これまで以上にラズ様の健康管理よろしくお願いしゃす!」
 
 
 遅れてベッド付近まで到着したところに突然話題を振られたラルド様。呆れたため息とともに冷静なツッコミをマリンに返していた。
 
 
「……マリン、うるさいぞ静かに。ラズ様の話を遮るな話を聞け」
「え?ごめんラズ様何か言いました~?」
「はぁ…」
 
 
 再び深いため息を吐かれるラルド様へ「気にしてないです」の視線を向ければ瞬時に目が合い、姿勢を正したラルド様から丁寧な礼を送られる。
 慌ててペコっと頭を下げると、一歩前へ出てきた彼はベッドに張り付くマリンを引き剥がしながら声をかけてくれた。
 
 
「ラズ様、お目覚めになり安心しました。お加減いかがですか」
「なんとか今は落ち着いてます、お騒がせして本当にすみませんでした」

 
 再びペコっと頭を下げれば近年稀に見る優しい笑みで頷かれ、その眩しさゆえ直視できない推し様に対し、えへ、えへへっと不自然に視線をさ迷わせてしまう。
 
 まるで挙動不審。
 
 そんな僕を呆れた表情でじとーっと非難してくるクオーツは「ラズ…」と短く呼ぶと例の件を視線で促してくる。
 報告するなら間違いなく今この瞬間だ。
 こくこく頷き、ふーっと息を吐き出していると、そっと握られる手に視線を上げる。
 
 心配そうな眼差しのクオーツが僕を案じていた。
 
 
「大丈夫?私から言おうか?」
「…んーん、僕が言う」
 
 
 大切な人達への報告は、僕の口から直接したい。
 もう一度、ふぅ…と気持ちを整え覚悟を決めると、ゆっくりと口を開いた。
 
 
 
「あのね、二人に聞いてもらいたい事がある───」
 
 
 
 こうして切り出した僕の話を二人は真剣に聞いてくれた。


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