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王妃の世話係
しおりを挟むある日の昼下がり―――
「ねぇねぇマリンとトールってさぁ、やっぱり双子の神秘的な力でテレパシーとかできる感じ?」
「あれ、言ってなかったですっけ。できますよ~」
「……マジで!?」
今日も今日とてクオーツからお叱りを受け、外出禁止を言い渡され特にやる事もなく、暇だなぁと思いながら何ともなしに軽く聞いた質問に返ってきた思いがけない答えに、僕のテンションは一気に持ち上がった。
◆◇◆◇◆
「えっ、えっ、そうなの!?えっどういう原理!?今できる!?今!」
「ちょ、ラズ様テンションぶち上がりすぎ……一旦座って、お座りっ」
「はい!」
「わぁ…素直」
暇を持て余した中で見つけた超絶興味深くて面白そうな事にプライドなどへでもなかった。
抱きつく勢いで迫っていたマリンの元から即行元居た場所へ戻ると、ビシッと背筋を伸ばしいい子の姿勢で目の前に立つマリンを見上げ、さぁ教えろ!と期待の眼差しを向ける。
「……はぁ、ほんと、時たま見せるこういうかわいい所にみんなやられるんだよなぁ」
「ん?なんか言った?」
「い~え~、テレパシーの話ですよね。まぁとは言っても厳密に言えば自由にお互いの思考が読めるって感じで、相手の思考を覗くとその瞬間、相手も今覗かれてる事はわかるので、それで一旦気付かせてこっちの思考を読ませて伝えたい事を伝えるって感じの使い方をしてます俺らは」
「へぇ~~っ!え、でもそれって……」
「そうなんですよ、プライバシー度外視過ぎて小さい頃に一度大喧嘩してからはなにか緊急事態の時しか使わないようにしてます」
「ひぇぇ~だよね、そうなるよね……」
もしクオーツに僕の頭の中を覗かれたら……何されるか恐ろしくて考えたくもない。だからといってラルド様の事を考えないというのも無理な話で―――
「便利なようで便利じゃないなぁ…」
「あはは、だからあんま使ってないです。最近だとそうだな――あぁ、ローズ様と出くわした時に使いましたね……」
「え……あ、あの時……」
記憶にまだ新しい、一人の女性に言葉でボコボコにされたなんとも情けない出来事。
思い返せば確かにあの時、パニックで咄嗟にクオーツを呼んでとお願いした時にはもう既に呼んでると言われ、それどころではなくて気にも止めていなかったが、間違いなくマリンはずっとそばにいた。
「そうですよ~あぁ、これはヤバいやつだなって勝手に判断して。お偉い様方が勢揃いの真剣な会議に乱入してラズ様が呼んでるってクオーツ様に伝えて~ってお願いしました」
「そうだったんだ……ありがと」
あの時、クオーツが来ていなかったらきっと情けない姿でラルド様に縋ってしまっていた。
そんな事絶対あってはならないのに……。
「お礼を言うのはこっちなんですよ。この力があるから俺たち双子はラズ様のお世話係とクオーツ様の側近として起用してもらえてるんです。ラズ様に何かあったらすぐにクオーツ様のお耳に入れれるように便利で高速な連絡手段です」
「そうだったんだ……って、ん?まさか、いらん事まで伝えてないよね……?」
「……さぁ?」
「―――!!マリンこの裏切り者ぉぉっ!!」
「きゃぁ~っラズ様に乱暴される~っクオーツ様に報告しなきゃ~っ」
「やれるもんならやってみろ!!」
マリンとトールの不思議で神秘的な力に凄いなと思いながらも、二人がその力を使用しなくてもいいよう色んな意味でこれからの行動に気を付けよう、と思ったそんな日だった―――。
「あっ、マリンっ今何か伝えてるだろ!何伝えたぁぁぁっっ」
「ふふっ、内緒で~す」
王妃の世話係 -END-
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