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運命の番VSブラコン(3)sideクオーツ

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 飲んで、飲まない、の攻防の末、なんとかラズに水を手渡すことに成功した。
 コップを両手で持ち、コクコク飲む姿を三人一緒になってほわぁと見届けていると、不意に、ん?と我に返った。
 

 ―――つい愛玩動物並のラズのかわいさにほのぼの見入ってしまった……。
 この方達はいつまで居座るつもりだ……?
 早々にお引き取り願いたいのだが。

 
 そう目論む腹の内を抱えながら、チラッとラズから視線をズラせば、水のおかわりはいるかい?と自ら水差しを持ち、点数稼ぎに勤しむ上の兄弟二人はなかなか帰りそうに無い。
 はぁ…と漏れ出そうになるため息を堪え、背後のトール、マリンにそっと目配せを送る。
 さすが最側近二人は言葉無くとも私の伝えたいことをしっかり捉え、軽く頷くとそれぞれ散っていった。
 
 
「ところで御二方、お忙しいにも関わらず我が番に会いに来てくださってありがとうございました。明日もお早いでしょう?そろそろ……」
「うむ……確かに我々も忙しい身だが、気遣い無用だ。いくら公務に追われようと家族水入らず過ごすのも大切な時間の使い方だと、かねてより母から教えられて育ってきた」
「それに、ラズと久しぶりに一晩ずっと一緒にいられるよう仕事は片付けてきたからね」
「……そうですか、一晩……。あぁ、そうだ、こちらの衣装はどうされたのです?」
 
 
 暗に早いところお引き取り願いたい旨を込めた言葉は残念ながら二人には全く通じなかった。
 ラズの家族でなければ即つまみ出していたのに、と頭を抱えたいのを懸命にこらえ、一旦話を変えようと気になっていたラズが身につけている衣装について尋ねてみる事にした。

 先程からラズが動く度、金と細かい宝石の装飾品がシャラシャラと耳障りのいい音を奏で、プリっと出ているお尻に手を伸ばしたくなる。
 
 
「これは先日赴いた先で触れた文化に感銘を受けてな、ラズにも似合うだろうと持ってきたのだ」
「どう?かわいいでしょ?キュートなお顔にこの妖艶さがたまらなくそそるよね」
「……確かによく似合ってますね、ありがとうございますそれではお引き取りください」
「どうしてそうなる!!!」
「こんなにも素敵な格好をした番を目の前にして手を出さないアルファはいません。同じアルファのお兄様方ならわかりますよね…?」
「ぐっ……堂々と破廉恥な事をぬかしおって――」
「番なので」
 
 
 わざと何度も強調して言う“つがい”というラズと私の関係性に心底悔しそうに睨まれるが痛くも痒くもない。
 
 
「ラズ、お兄様達がお帰りだよ、挨拶なさい」
「んぇ?兄様たちもう帰る…?ん、ばいばい……」
「「ラズ~~~」」
 
 
 いまだ酔いが覚めないラズの容赦ないお見送りと、トールの強制連行、そしてマリンがぺこりとお辞儀しながら扉を閉めたことで台風一過、二人きりとなった室内はしーんと静寂が訪れた。
 
 
 
 
 
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