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運命の番VSブラコン(2)sideクオーツ
しおりを挟むお察しの通り昔からラズの兄二人には心底嫌われている。というより、この二人にとってラズに邪な目を向ける全ての存在が問答無用で敵として認識されてしまう。
例えばこれだ―――
「クオーツ~遅いぞ、待ちくたびれた」
「あぁラズ、ごめんね、お待たせ」
「んっ、ギュッとしろ」
酒が入っているせいか言動に幼さを感じるラズは、赤く染った頬をぷくっと膨らませ、上目遣いで両手を広げ自らハグを求めてくるという普段だったら絶対と言っていいほど有り得ない甘えた姿で、私に話しかけてくる。
そんなダイレクトに男心くすぐるかわいい要求に内心ぐっと奥歯を噛み締め、求められるがまま近寄ればすぐさま腰に抱きつく番をむぎゅっと受け止めた。
「こらラァズ、私のいない所で飲酒は控えてと言ったよね?一体どれだけ飲んだの」
「んーん、飲んでなぁい」
「……かわいい顔してもダメです」
「へへ」
「……」
はい、私の番、世界一かわいい。
笑えば全て許されると思っているのがかわいい。
……こうして、許す以外の選択肢が消えていく。
それにしてもこれまたすごい衣装を着させられて…すごい透け透け、お尻なんてほぼ丸見え―――
「おい……クオーツ、貴様の脳内丸見えだからな」
一瞬頭をよぎった思考を即時察知した両サイドから向けられる今にも刺し殺されそうな視線が凄まじい。
さすが親族、顔のベースはラズに似てるというのに、放たれる殺気が全然違うのだった。
「……クオーツ様、お気を確かに」
「あぁ……とりあえずラズに水を」
「お運びします」
サッと離れるトールを見送ると、再びラズに視線を戻し頬を撫でれば、えへへ、と上機嫌に笑うラズはやはり世界一かわいい―――が、ここまで酔うなんて本当にどれだけ飲んだのかと心配になってしまう。
そんな心配と同時にふと、いつまでも膝立ち状態のラズの姿勢に気が付くとすぐさまラズを引っ付けたままその場に腰を下ろす。するとすかさず膝の上にゴロンと寝転がってきては余すことなく愛嬌を振りまく姿に全員もれなく息を呑んだ。
「ぐっ……それはずるいぞクオーツ、こちらにもラズを寄越せ」
「申し訳ありませんがたとえお兄様方でもこれは番の特権なので譲れません」
「あぁ~あ、独り占めかつ見せびらかしてくるこの精神……ホント嫌なやつ~こんなやつが国王とか世も末だね、ラズが振り回されてるの目に浮かぶ」
「どうとでも」
渾身の勝ち誇った表情でふっと笑みを送り、さらに抱き寄せ見せつける。
「クオーツ貴様ァァァっ!殺す!!謀反じゃぁぁぁっ!」
「助太刀するよ兄さん」
「いやいやいや、血筋ですねぇ!?キレ方ラズ様そっくり!クオーツ様も一旦ラズ様離して!このままじゃ公爵家がひとつ消えます!」
ほんのりラズの要素を含んだふたつの顔がキィィィッと歪み、聞き覚えのある威嚇と必死に止めるマリンの光景がつい最近見たものと重なった。
控えるメイド達も固まらせるようなそんな奮闘茶番劇をものともせずマイペースを極める側近トールが颯爽と水を持ってくるのを受け取ると、もう一人のマイペース人もといこんな騒がしい中でもゴロゴロ自由に過ごす渦中の存在―――ラズに手渡す。
「ほらラズ、お水飲みなさい」
「んーんっラズ水いらない」
「だーめ、飲んで」
「んーー」
名残惜しくも私の膝の上から身体を起こしたかと思えばぺたりと座り、ぷいっと頑なに断る姿は可愛い以外の何物でもない。
いい歳した大人三人が一緒になってはわわ…と眺めていると、一歩後ろからトールマリン兄弟の冷静かつ冷たい視線が容赦なく降り注いだ。
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