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一泊二日の遠征(14)sideクオーツ
しおりを挟むsideクオーツ
絶頂と共に意識を手放したラズの中から名残惜しくも我が身を引き抜けば、こぽっと溢れ出る白濁がラズの太ももをつー…と伝い、湯の中に混じり消えていく。
そんな姿も男共の劣情を煽るに十分だとこの子は露ほどにも思わないのだろう。
―――もちろん、目の前の男も例外では無い。
「……ご苦労、もういいよ」
「っ、……は」
事後特有の気怠さを感じながら湯が滴る前髪をかきあげ浴槽の縁へ腰掛けるとラルドからラズを完全に引き離し、膝の上へ横抱きで抱え上げる。
「そこの者、タオル持ってきて。それとマリンにテントで待機と伝言を」
「――は、はいっ」
見張りとして待機していた幕の外の団員へ声をかけ、すぐさま運ばれてきたタオルを受け取ると肩から羽織りつつラズにもふわりと覆いかける。
漏れ聞こえてくる情事を聞いていた名残りがありありと見える団員をチラッと見ては腕の中の愛おしい存在を愛で、釘を刺す。
「陰日向でどう想おうが自由だけど、私の見えるところでラズをそういう目で見たらお前の目潰すよ?」
「っひ―――!」
一転、青ざめていく団員に興味も消え失せ「下がっていい」と言葉を投げるが、動く気配は一つのみ。チラッと確認すると、その場から一切動かないラルドが何かもの言いたそうに佇んでいた。
「なんだい、ラルド。お前ももう下がっていいよ?それともなにか私に言いたいことでも?」
「……発言をお許しいただけますか」
「今私はとても気分がいい。なんでも聞いてあげる」
ラズ以上に長い付き合いでここまで過ごしてきたラルドの未だかつて見たことないような珍しい表情にふふ、と笑みを浮かべ言葉を待つ。
何度か躊躇う素振りを見せた末にやっと開いた口から放たれる言葉を興味深く受け止めた。
「……私を使って、ラズ様を傷付けないでください」
「というと?」
「このようなことをなさらなくても、私は分をわきまえクオーツ様と交わした契約を違うことはありません。ラズ様を遠くから見守ることが出来ればそれでいいのです。ですから今後このようなことは……ラズ様がお可哀想です」
「……は、ラズがお前で傷付くという考え自体が傲慢だな。それに、そんなことを言う前にその張り詰めた前をどうにかしたらどうだ」
ふん、と流し見た視線の先はしっかり存在を主張する性の象徴。鬼の騎士団長もやはり人の子だな、と肩を竦め覆ったタオルからはみ出るラズの綺麗な脚へ手を伸ばす。
「っ、お見苦しい姿をお見せし申し訳ありません」
「まぁ仕方ない。番っても尚、この子の魅力は隠しきれない。ココに身を埋めたいと狙うやつが沢山いることは把握している」
タオルの下に手を潜らせ、私自ら放ったもので濡れる柔らかい穴へそっと指を這わせる。ラルドの位置から視覚では見えないながらも、くちゅっと響く音がその柔らかさを想像させることだろう。
「……んぅ」
「ふふ、意識は無くても零さないようきゅって締め付けてる…ラズは本当に立派な王妃だ。ここで王の子を孕む自覚がちゃんとある」
「ラズ様も、将来お生まれになるラズ様のお子様も、必ず私が命にかえて守りぬきます」
「……それだとまたラズが泣くんだろうな」
そんな私のつぶやきは風に掻き消されるよう誰の耳にも届かず消えていく。
「クオーツ様?」
「―――なんでもない。今日一日、訓練ご苦労だった。明朝、団員たちには事情を説明し帰路へつくよう準備を」
「承知致しました」
今度こそ踵を返し幕外へ下がろうとするラルドを不意に呼び止める。
「ラルド、お前はラズの事をどう思っている」
「……命にかえてもお守りするお方です」
私に答えながらも真っ直ぐ見据える視線の先は――
「……必ず守れ」
「はっ」
下がっていく背中を完全に見届けると、二人きりになった空間で腕の中へ視線を戻す。愛おしい寝顔に滲む目尻の涙の跡をそっと撫で、ギュッと抱きしめた。
「ごめんね、ラズ……私はずるい男だから、運命を利用してキミを一生縛り付ける、ほかの男のもとへなど逃がしてあげられない」
風で揺れる草木の音だけが響く森の中。
深い眠りにつくラズに向け、ごめん、ごめんね…と一方的な懺悔はしばらく続いた―――。
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