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※一泊二日の遠征(11)
しおりを挟むじんじん疼く下半身の熱を必死に逃がしながら、また次何をしてくるかわからないクオーツを睨み牽制するも、涼しい笑みに反して太ももの無情な動きは再び下半身を刺激する。
「っ―――」
大きく漏れ出そうになる声は口を塞ぐクオーツの手の上から咄嗟に自分の手を重ねギュッと押し殺すがそれでも足りず唇を噛んで声を堪えていると、すぐさまそれに気付いたクオーツに耳元で「噛まないで」と囁かれ、噛み締めていた唇をヤツの指が上下に割り開く。
「んぅぅっ」
いとも簡単に口内への侵入に成功した二本の指は舌や上顎をゆっくりじれったく愛撫していく。
その動きはまるで―――下の口を犯すよう。
そう思ってしまったが最後、一段と大きく腰がはねると背中を弓なりに反らせ跨いだ太ももに自らいいところを擦り寄せ快感を求めていた。
「ぁ、っふ…ぅん―――」
半分理性を手放しぼぉっとする頭はただ、気持ちいい今の状況を受け入れふわふわしていた。
次第に僕の中の何かが言う。
―――これじゃ足りない、と。
今これ以上の快感を僕に与えることができる唯一の存在に視線だけで振り返る。
その時確かに目が合った。
だけど、クオーツがどういう顔をしていたかは覚えていない。
ただ一つ覚えているのは、その時僕は笑っていた。
「ク…オーツ……も…っと」
ザバァッと激しい水音を立て立ち上がったクオーツに体を持ち上げられ、気付けば風呂釜の縁に座らされていた。そんな状況を理解する間もなく重なった口付けの激しさに何とか応え、息をするのに精一杯だった。
もう息がもたないギリギリのところでくちゅっ、と音を立て一旦離れていく唇同士を繋ぐ銀の糸。
はっ、はっ、とどちらのものかわからない吐息が静かな森の中に木霊する。
雲の隙間から漏れる月明かりが二人を照らし、はっきり見えたクオーツの熱を帯びる両の眼差しがまっすぐ僕を見つめていた。
「ラズ……今ここでキミを抱いてもいいかい?」
「っ、」
熱いお湯で火照った身体を夜風がさぁっと撫でていく。
クオーツの真剣な眼差しに良いともダメとも答えられず、僅かに残った理性がチラッと向ける視線の先は幕の外に立つ人の存在。
そんな僕の視線を追うクオーツは何を思ったかまさにその人の名を呼び上げた。
「―――ラルド」
「はっ」
「え…待って、何、する気……」
弱々しいうわ言のような僕の呟きが聞こえているはずなのにまるで聞こえていないかのように、それでも視線は僕を見つめたまま、クオーツは最悪の命令を口にした。
「ラルド、今すぐここに来い」
「っ!?クオーツ!」
一瞬で理性が戻った僕は頭が冷える感覚と共に信じられない思いでクオーツの名を叫ぶが、背後で聞こえたガサッという音にビクッと硬直する。
幕をくぐる人の気配。
ザッザッと近付いてくる足音はすぐ後ろでピタッと止まった。
「……お呼びですか、陛下」
「我が番は誰かのせいで気が散るようだ。ならばいっそ近くで見ていてやれ」
「……」
「何で!?やめてよっや――んんぅっ」
僕だけが風呂釜の縁に座らされた状態。半身を湯に沈めるクオーツは向かい合うようにして僕の股の間を閉じれないよう陣取ると、くちゅっとその指をゆっくり埋めていく。
拒絶したい気持ちとは裏腹に、今日初めて直接触れられたそこは、嬉々としてクオーツの指を呑み込んでいった。
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