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※天秤sideクオーツ

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 心と体、どちらを取るかと聞かれたら、当時の私は迷わず体と答えた―――。
 

 
 ◆◇◆◇◆
 
 
 ご夫人方の付き合いで今日は相当疲労を感じたのか、ベッドの中で戯れていた途中、気付けば無防備にもすぴすぴ寝息を立はじめるラズについふっと気が抜けてしまった。
 
 
「この状況で寝ちゃうなんて、さすがだなぁ…」
 
 
 だけども、ラズには悪いが挿入したばかりの生殺し状態ではさすがに終われない。試しに繋がった下半身をゆさっと揺らせば、眠りながらも「んぅ…」と漏れ出る声と表情が艶かしかった。
 
 
「―――っは、ほんと、この子は……」
 
 
 それで煽られる自分も自分だ。
 
 眠った状態ながらにきゅっと締め付けてくるラズの素直な下の口に引き寄せられるまま、浅く抜き差しを繰り返していると次第にオメガの本能が自分を守るための潤滑液を分泌しだし、ぱちゅぱちゅ音が鳴り始める。
 
 
 それがまた――
 
 
「んぅっ、…ん…」
「……は」
 
 
 眠りながらも少しずつ確かな反応を示し出すラズをじっくり見下ろし観察しながら良いところを探っていると、瞼がピクっと動くのを見逃さなかった。それに合わせ動きを早めれば、あとはもう覚醒へと向かうのみ。
 
 
「ふぇ……っあ、……??」
「あ、起きた?おはよう、ラズ」
「え……っあ!あ―――っ!んぅっんっば…かぁ」
 
 
 起きたと同時にばちゅんっと勢いよく納めると、ビクッと大きく腰を浮かし、続けざまに小刻みな痙攣が繋がった下半身ごしに伝わってきた。
 
 
「うん、上手にイけたね。どう?起きた瞬間イった感想は」
「……は、っ、は…クソ、変態…やろー…」
「ふふっ熱烈」
「あっ!待っ、まだ、んぅぅっ」
 
 
 ひぐぅ、と顔面を覆ってしまう両手が邪魔ですぐさま絡め取り枕横に縫いとどめてしまうと何も隠すものなく晒されたラズの苦しそうに快感に歪む表情がものすごく、グッときた。
 
 
「は、…っ、は、寝ててもラズのここはちゃんと私を認識してたよ、いい子だね」
「んんんんっ、安眠、妨害っ!」
 
 
 キッと睨みをきかせ悪態つきながらも「んぁっ」と身をくねらせ上擦る様子がたまらない。本当に、かわいい。
 まだまだ楽しみたい気持ちは山々だが、これ以上は機嫌を損ね明日に響きそうだと判断すると名残惜しいが終わりに向かって高めていく。
 

「ラズきもち?もっと一緒に気持ちよくなろ?」
「や、ゃ、もう、い、」
「ん?」
「いっちゃ、いっちゃう、っっひぁ―――っ!」
「っ―――」
 

 びくびくっと激しく収縮を繰り返すラズの中の感覚をじっとその身に焼きつける。


 
 二人同時に果て一段落すると息も絶え絶えな様子のラズにちゅっ、と軽く口付けを落としその身を引き抜くとガウンを羽織るため一度ベッドを出る。
 水差し片手に戻った時には、すっかり力尽きたのかその格好のままピクリとも動かないラズを優しく揺すりながら声をかけた。
 
 
「ラズ?起きれる?」
「……も、無理…眠い。限界。寝る。でもべとべとヤダ…綺麗にしといて」
「ふふ、はいはいゆっくり寝てて、あとは全部やるから。付き合ってくれてありがとう」
「……ん」
 
 
 相当眠かったのか、出すもの出してスッキリしたのも相まってすぐにとろんと落ちていく瞼は数秒後にはすぅすぅと寝息を立てている。
 
 そんな愛おしい寝顔をしばらく眺め幸福感に浸りながら、ふと数刻前のラズとの会話を反芻する。
 
 
 
『私もね、ラズ』
『ん?』
『私も幸せだよ。今ラズがいるのは私の腕の中なのだから』
 
 
 
 こう言ったのは、本心。
 
 ラズの心を占めるラルドへの想いをどうにかしようと躍起になるのはとうに諦めた。
 その代わり、神様が与えてくれた運命の番という切っても切り離せない関係性でラズを縛り付け手元に置けるのならそれでいい。
 
 そう思い始めたのはいつからだったか……
 
 
 心と体
 実態のあるものと無いもの
 
 心が別の方向を向いていても、ラズさえいてくれれば満たされる。
 
 
 隣に立つのは私。ラズの番は私なのだと周りに知らしめ植え付けた。その結果、今ではすっかり国民全員から国王の王妃そして国王の番ラズとして知らない者はいないくらいその存在は認知されていた。
 
 
 それでいい。
 
 
 たとえ関係だけに縛られたまがい物だとしても、たまに笑いかけてくれるだけで私の心は満たされる。――そう自分に暗示をかけているのかもしれない。
 

 だから、一線だけは越えてはいけない。
 想うだけは自由だがそれ以上は、見過ごせない。
 
 絶妙なバランスで成り立っている三者の契約、関係を全て把握しているのは私だけ。
 均衡が保たれた今の関係性を高見の上から見守っている。
 
 
 
 
 
 天秤-END-
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